ミックスってどうやったらいいの⑥

今回はスネアに絞ってTIPSを書いていきます。
この楽器、私はミックスにおいて最難関だと思っています。
様々な処理が必要なので、如何せん長い道のりになりますが……
今回も張り切ってまいりましょう。

※大前提として、スネアは音源(ジャンル)ごとに
 音に含まれる主要成分がてんでバラバラです。
 ゆえにこの記事では“汎用処理”についての
 見解を述べますので、あらかじめご了承ください。

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最初にやるべきはバスドラムと同じで、エンベロープの見直しです。
ADSR(アタック/ディケイ/サステイン/リリース)を音源側、ないし
④で挙げたトランジェント系のプラグイン内で調整していきましょう。

基本的にアタックはEDMなど、一部のジャンルにおいて
変わったことをやりたい!というとき以外は最速でOKです。
ただ、すでにインサートされている一つ目のコンプの影響により
現段階でモタついている印象がある場合は、
トランジェントをブーストして適切なアタック感にしておきましょう。

ディケイ~サステイン部分につきましては、まずピアノロール上に
8分音符を四つ打ちで並べ、加えて連打・フィルのフレーズも用意します。
それらをループ再生し、間延びしていないかチェックしていきます。
なお、このときリリースも一緒に確認するのがベターで
目安としましては四つ打ちの先頭が鳴ったあと
2つ目が鳴る際にディケイ~リリース部分が被リ過ぎていたら
それぞれを短くなるように調整したほうが良いでしょう。

上記設定をした上で連打・フィルのフレーズを聴き、
不自然な響きになっていれば手順を遡って修正しますが
問題なければ次のステップ――2回目のイコライジングです。

まずはバスドラム・ベース・メロディと同時に鳴らしてみて、
先ほど調整したアタック(3kHz~の高音域)が耳に痛ければ少し削り、
1kHz~2kHzは、抜けが良くなるようなら1~2dbブーストします。

で、“太さ”を決める中音域(300Hz~1kHz)に関しては原則ノータッチ。
なぜなら、ここを下手にいじると聴覚上の音圧変化に惑わされて
ミックスの方向性を見失い、泥沼にハマる危険性があるからです。
“太さ”はイコライジングではなく2つ目のコンプレッサー、
またはダイナミクスコントロール系プラグインで調節しましょう。
「あまり加工感はないのに、ふくよかな響きになってる!」が
目指すべきゴール地点になりますので、ご参考ください。

低音域は楽曲に合わせて100Hz以下のハイパスフィルターを吟味します。
200Hz前後はバスドラムやベースとマスキングするため
削りたいところではあるんですが、これについても迂闊にいじると
音かスカスカなる可能性があるので慎重に。

さて、ここまで来ましたら次はゲインの見直しです。
バスドラムとスネアをソロ状態にして
「ドンッタンッドンッタンッ」と鳴らしてみます。
ドンッのキック部分が-5dbになっているなら
タンッのスネア部分は-6db~-7dbくらいにするのが目安です。

さらにメロディ楽器も同時に鳴らしてみて、
「主旋律 : スネア」の音量比率が感覚的に
「1.0 : 0.8」程度になっていればいい感じ。
ただし、メロディを喰っている場合は
その成分だけをイコライジングで少し削ります。
※例によってサイドチェインコンプは部分的に意図しない挙動
(必要以上に引っ込むなど)をするので、個人的に非推奨です。

最後は「存在感があるのに目立ち過ぎない」を成立させるべく
サチュレーターとリバーブをそれぞれ薄ーくかけてやりましょう。
前者は“馴染ませ”と“抜け”を補強する効果が期待できます。
後者は冒頭で制御したリリースを良い意味で補填してくれます。

――さて、ここまでの作業を経て
もし理想の音が完成しなかったというかたは、
費用が嵩みますが以下の工程も検討してみてください。

・Techivationの『M-Clarity』でレゾナンス処理
・Zynaptiq の『UNMIX DRUMS』で音色に変化を加えてみる
・MeldaProductionの『MAutoAlign』でメロディに対して位相を修正

それでもダメな場合は、ADSRの見直し直後に戻って
IZotope『Neutron』のアシスタント機能を活用し、
機械的な“解”も参考にしながらもう一度
各種工程に取り組んでみると良いかもしれません。

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