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【音楽レビュー】ghost like girlfriendを知っているかー『weaknessーEP』について


おはようございます。
今回は、岡林健勝さんのソロプロジェクトであるghost like girlfriend(以下glg)の最初の作品である『weaknessーEP』を紹介しつつレビューしたいと思います。


僕とglgの出会い

僕が最初に出会ったglgの楽曲は『fallin'』でした。2017とか18とかあたり、僕が中1の時にバズっていて、そこでビビッと来て繰り返し聴くように。


そこからyoutubeチャンネルを辿って聴いた『煙と唾』、これもまたすごく刺さりました。


この2曲はどちらも今日紹介するEPに収録されていますが、僕が一番好きなのは『under the umbrella』。これは1stアルバム収録です。

彼の楽曲の中でも際立って繊細で情景的なものに感じています。ポップさと切なさの塩梅も絶妙です。ぜひ一聴を。

加えて、先日glgの2ndが出たのですが、やっぱりDTM的なアイデアの幅の広がりを感じます。
疾走感のある楽曲とメロウで染み入るような楽曲のメリハリも健在で、そのバランスの使い分けもスッキリしてきた印象がありますね。

こちらはまだ聴き込めていないのであまり語れないのですが、あんまり音楽に詳しくない人でもすっと入っていけるキャッチーさ、体験して欲しいです。
まじで彼が高校生、大学生におけるvaundyの位置にいても全然おかしくない。少なくともヒネた高校生男子、確実に刺さります。
僕は2ndの楽曲では『光線』『laundry』『birthday』が特に好きです。


『weaknessーEP』について

このEP全体に言えることとしては、岡林さんの生活から溢れるナイーブな存在感を感じる、という点ですね。
日常感、頼りない肉体性がしっかり残りつつ非日常でドラマチックな世界観が、ギリギリで矛盾せず共存しているような危うさ。

サウンド面ではエレクトロポップ的なサウンドに強いギターサウンドが絡み、バンド好きでもエレクトロ好きでも楽しめるいいとこ取りサウンドになっています。
更に、2016年ぐらいからのネオシティポップムーブメントとも共鳴するメロウネス、シルキーで青年性溢れる歌声。好きです。



作品レビュー

EPの幕開けを告げるディレイのかかったギター。今や彼の代表曲となった『fallin'』です。

上京した主人公の苦悩に「こんな世界を愛せるかい」と歌う。ここだけ見るとかなりネガティヴですよね。
視点を変えればもっと素敵に見える世界を高らかに歌うラスサビ、抱えていた葛藤が解放されるようで少し力強く感じられます。

何にもないと嘆くか
こんなにもと喜ぶか
幸せの数え方が
自分次第なこの世界さ

Fallin' love



続いての2曲目『ghost』は、上京した主人公がより現実的かつ主観的に描かれています。

「夢」と「見返したい人」、「続かないバイト」、「あまりいない友達」。
夢、勝ちといった表現と対比するように「闇」という言葉が何度か表れ、その度にどきりとします。
自分の弱さを真っ直ぐ見つめ、変わりたいと願う姿に自分自身を重ねてしまう、訴求力のあるナンバーです。



来ました、3曲目『雨降る夜にさよならを』。
glgの繊細なワードチョイスが光るバラード。
1stの『あれから動けない』に繋がる1曲であるように感じてます。
このアルバムにおけるハイライトのひとつですね。

描写的にはかなり写実的で淡白な感覚もありますが、やはりフレーズひとつひとつの強度がすごいです。

だれにも気づかれないように
家を出た真夜中に 寝静まった街を見たとき
大人になれた気がした
何一つと君の願いを
叶えられなかったのに ありがとうね
となんども君は僕に言う

最高です。




続いて、glg流の丸サ進行の曲が炸裂する鋭い1曲、『煙と唾』。
岡林さんの昔の話を絡めつつ、歯に衣着せぬ物言いが心地好いリズムに乗ってするっと入ってきます。
シンセのリフも癖になること間違いなしです。

譲れないもの 勝ち取りたいトロフィーに
そうでもない奴ばっか
近づいてることに腹が立って
タバコ吸って 煙と唾を吐いて
君を想っているよって歌った
あの人は今頃同じことを
ソープ嬢に言い 抱いてるけど
そこらへんはどうでしょう


glgのキャッチーさと毒味の共存という点でとてつもない完成度を誇るナンバーですね。



そしてラスト、『othello』。ギターが凄くかっこいい反面、女々しくて複雑な感情を鮮やかに描いています。
glgは楽曲が『ただの失恋』や『ただの恋』で終わらないのがひっかかりになっていて、印象に残るものが多いのも強みだと思います。

私じゃない誰かの方が
良いよだなんて
優しさによく似せた
わがままだけ残して

最初のセクションで全体像をぼんやりと提示しながら、「優しさによく似せたわがまま」という表現でしっかり聴き手を掴んでいます。

僕が誰かに話せば
僕の気持ち移って
僕みたいに傷ついては
僕以上に怒りだして

こういうことありますよね。
あるあるの昇華がこんなに綺麗にまとまっているのも巧いなと思わされます。

君がくれた言葉やものや時が
心を、部屋を、街を
埋めつくして苦しくなる
あぁ、今までの幸せが毒に変わる

シンプルで真っ直ぐな表現がしっかりサビに落とし込まれています。
言葉の流れのしなやかさ、意味の密度の塩梅が最高です。


まとめ


glgとしての岡林さんの「人生」と「恋」を淡く描いた本作は21分とかなり聴きやすい上に、一貫した世界観と人物像がしつこすぎない聴きごたえを残しています。

四つ打ち的エレクトロポップとギターサウンドが押し出されたバンド感の快楽性も相まって1冊の私小説のような味わいのある作品です。
またglgは弾き語りライブも多く行っていて、また違った魅力を楽しめます。

これを機にglgの他作品やMV(岡林健勝名義でnoteもやられてます)にもぜひ触れてみてください!


帰り道も 電車の中も
時の流れも変わってしまった
なのに君への僕の気持ちが
それだけが変わらない
『othello』

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