小出恵介のブロードウェイ観劇日記 第十二回【CABARET at the KIT KAT CLUB】
オスカー俳優にとっての舞台
言わずと知れたボブフォッシー作ミュージカルCABARETー今回のリバイバルはロンドンを皮切りに今流行りのイマーシブ(没入型)演出として、既にロンドンの開幕から2年以上経っており、今最もホットなミュージカルで、この初夏より満を持しオスカー俳優エディレッドメインを主役に据え置きNYへ上陸してきたブロードウェイでも今最大の話題作である。
先日発表されたトニー賞でも10部門ほどノミネートと凄い煽りがあった。結果は同じセレブリティ作品の、ダニエルラドクリフ主演”Merrily We Roll Around”が独占となったものの、エディが舞台に立つ9月までは凄まじいチケット価格を巻き起こしている。
今回のリバイバルとなるキャバレー、昨今流行りの没入型という形式をとり、とにかく趣向を凝らしている。劇場に入るなり、扮装したスタッフだか俳優だか最早分からない艶美なる扮装をした人間に突然携帯を奪われ裏側のカメラ部分にシールを貼られ、そして何やら怪しげなショットドリンクを渡されいきおいであおると何と本物のハードリカーカクテルで喉を焼かれる。ガチすぎる演出に面食らいつつ暗い通路を歩いてゆくとやはり劇場内の通路やロビーでは既に様々なパフォーマンスが始まっており、何とか席へ辿り着くとステージ上も案の定プリアクトが行われている。円形のやや小さめな舞台上で扮装し過ぎの道化が現れたところから本編はスタート、予想に違わぬ怪しげなMCの口上から劇は始まる。
なんと言っても最大の注目は主演のMC役を務めるオスカー俳優エディレッドメイン。ミュージカル映画レミゼラブルのマリウスを筆頭に映画ではオスカーをそして、演劇でもイギリスの賞などをガシガシ取りまくっている質実剛健な大スター俳優である。本来キャバレーでは女性の役が主軸に描かれているのだが、今回はキャバレーの進行MC役を主役とし構成している模様ー道化メイクと奇怪極まる動きとウソのような露出、セリフ以外の場面ではライトも浴びずに舞台から離れて客席付近をひたすらウロウロなどとにかくファンキーな演出であった。
あの爽やか至極のエディ様が何やらティザービジュアルからして怪しげな道家のような扮装をしており、これはまさに自身のイメージや俳優としての殻を破る大きな挑戦の機と見ているに違いないと、勝手に同業よろしく睨みをきかせその自己への挑戦をする年代を近くにする大スター俳優のその脱皮の様を拝みに行った。
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