見出し画像

オペラ『椿姫』 @新国立劇場 2019.12.5

 だいぶ時間が経ってしまったが、とりあえず、聞きに行ったのだという事実だけはメモしておきたい。

 ヴァンサン・ブサールの演出、物語を大きく変えることはせずに、舞台をより抽象的な空間に仕立てた。舞台が鏡ばり、背景のオペラ座はプロジェクションの一二幕。三幕のヴィオレッタ死にゆく部屋は、天井からベッドまで薄い幕=膜に覆われている。このオペラの一、二幕には合唱として、印象的な「大衆」が登場するので、役の個性を中和するような舞台美術は相性が良い。

 (一度パリで見たときは、これも抽象的でモノの少ない舞台に、マネのオリンピアが掛かっていた。その象徴するところは分かり易すぎて、逆に「だから?」となってしまったのを思い出した。)
 今回の三幕の演出では、ヴィオレッタが死への決意を持った歩み出しを、客席の方を向いて歌い切る。その力強さと、生の世界に残される3人が張られた膜、あるいは降りてくる幕の向こうに隔離されているという「触れられなさ」が印象的かつ説得的。

 タイトルロールのミルト・パパタナシュ、ネトレプコの録音に慣れてしまった耳には、一幕でヴィオレッタの享楽的な面を表すテクニックが物足りない。ただ地声を効果的に使った後半の歌唱は、演技力で圧倒。
 ジェルモン役の須藤慎吾が出色。


お金も欲しいですがコメントも欲しいです。