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簡単な語彙でどれだけつなげられるか

一昨年のこの時期に、「花粉症って英語で何て言う? クリックして答えを見る」というような英会話スクールの広告を見ました。
花粉症、ウィキペディアで調べるとまず花粉がpollenなので口語的にはpollen allergy、pollen disease あるいはhay feverで、医学用語としてはpollinosis/pollenosisというそうです。

。。。

そんなこと知っても、英会話の能力は伸びなくない??
それがその広告を見た時の私の感想でした。

花粉症という言葉を使う場面を考えてみましょう。
例えばあなたが花粉症でくしゃみを繰り返していて、一緒にいる外国から来た誰かさんに“Are you okay? Do you have a cold?“と聞かれたとします。そういったときに先ほどの英会話スクールは“No, I’m not sick, but I have a hay fever“とサラリと言えるようにと指導しているのでしょうか。

しかしそれでいいのしょうか?
もしその誰かさんが北欧などの花粉症がない国の人で“Hay fever? What is it?“と聞いてきたらどうしましょうか。

こういった場面で困ってしまう人は「英語で○○を何というか」ということを気にしていて、そうした問いの答えをたくさん知ることが「英語力」を身につけることだと思っているのでしょう(私自身がそうだった)。

おそらく英語を勉強する中で「単語テスト」のような語彙力を試される場面を何度も経て「重要な事柄を全て英語に言い換えられるようにならないと英語は話せない」と考えるようになったのではないでしょうか。そのように感じて萎縮することが英語でのコミュニケーションに苦労してしまう大きな原因であり、率直に申し上げて先ほどの広告のごとく英語を教える側が「○○を英語で言えますか?」と聞くのは基本的に学習者を威圧し意地悪するようなものだと思っています。

もちろんたくさんの単語を覚えて豊富な語彙を身につけることは重要ですが、実際に世界で話されている英語の会話に登場する語彙の量は並大抵のものではなく現実的な勉強時間でそれらを網羅することは不可能です。それに知っているつもりの単語でも教科書通りの意味で使われていない場合もあります。辞書を引き直してよくよく目を凝らせばそんな用例もあった、みたいなケースです。

そのような訳で多くの語句を覚えるだけでなく、限られた語彙でいかに難しい概念を伝えるかというところに力を注ぐことを提案したいと思います。その方が効果的に「使える英語」が身につけられるでしょう。例えば花粉症の例ではこのような具合になります。

In spring time, some people get a trouble with their nose and eyes. They are not really infected, but they sneeze often and their eyes are red. It is caused by the powder from certain kinds of trees in the mountain. Do you know this disease?

「春になると、鼻や目にトラブルを抱える人が出てくるの。何かに感染しているわけじゃないんだけど、頻繁にくしゃみして目が赤くなるの。山に植っている特定の種類の木から出る粉が原因なんだけど、この病気知らない?」

このようなことが言えればpollenという単語を知らなくても一応会話ができてしまいます。その他の語彙・文法も平易だし、もっと洗練された言い方も本当はあるでしょう。これで通じない相手ならそもそもpollen allergyと言っても何だか分かりません。何だか分からないけれど、とにかく日本にはそういう症状を持つ人がいるんだという事柄が伝わるだけこの方がコミュニケーションとして効果的であるはずです。

重要なのは「英語で○○を何というか知っているか」ではなく「英語で何というか知らない○○をいかに分かりやすい言葉で説明できるか」であるという発想です。

そのような英語は洗練されていない感じがしてカッコ悪く聞こえるかもしれません。映画やドラマでイメージする流暢な英語、TEDなどで聞く知的な英語とはまるで異なる、ブロークンで片言でお世辞にもスマートには聞こえない英語のような何かになるかもしれません。

しかしそれで全くもって十分なのです。実際に話してみればそれでコミュニケーションが成り立つのだから問題ないと分かります。
ただし学業やビジネスのためにしっかりした語学力を身につけたいのならば、簡単な語彙でその場をしのいだ後で調べて正しくは何と言うべきか確認すればいいと思います。そうやって学んだことは忘れにくいものでうs。

私が聞いた限りだと、英語ネイティブでないが英語をペラペラ話せる人は難しい単語を使うことを回避して話しています。少なくとも東南アジア人や、そこに住む華僑たちはそうしています。そして数カ国語を操れるのが当たり前だという大陸ヨーロッパ人も五十歩百歩です。彼らも英語で話すときにはあまり難しい単語を使わなくて文法や語彙も厳密には正しくないこともあるのだけれど、単に我々より英語を話すことに慣れているから流暢に聞こえてしまうに過ぎません。極端な例だと重量が軽いという意味でeasyと言いながらスラスラと英語で会話するドイツ人がいました。ドイツ語の形容詞leichtにlightとeasyの両方の意味があることを知っていたので、ドイツ語の感覚ではこれらが一緒になってしまうのだなと納得した記憶があります。

それはともかく、いちいち英語で何と言うか、正しい単語は何かと迷うのではなく自分の知っている限りの言葉で伝えることに頭を使ってみてはどうでしょうか。それはそれで難しくて上手く伝わらなくて困ることもあるでしょうが、言いたいことが伝わった瞬間は実に嬉しいものです。そのような小さな成功体験を重ねることで徐々に英語を自由に操れる状態になっていきます。


以上は外国語学習について前々から思っていたのですが、せっかくnoteを始めたので詳しく書いてみました。


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