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これは 罠だ

心の中で誰かがささやく

ねぇ…ところで
本当はもっとあるでしょう
書きたいことが
書かなければと思うことが

私は答えない

本当はあのことを書きたいはず
書けばいいのに
なぜ書かないの

私は答えない

ほら、あの人もあの人も
みんな書いているじゃない

私は答えない

あの時のあの経験を書けばいい
ああ、あの教師の話なんてどう?
「あなたは賢い子だと思っていたのに…」
だったっけ?

私は答えない

他の人みたいに過去をさらけ出してしまえばいいのに

私は答えない

そっか
ふふふ
書けないのか

私は答えない

そういえばスケッチブックの1ページを
カケアミ線だけで真っ黒に埋めた話はどうなったの?

私は答えない

なぜ隠すの?
なぜ隠すの?
なぜ?
なぜ?
なぜ?

私は答えない

ああそうだね
隠した方が安全だ
隠しておかなければ
自分の力は隠すべきだ
自分の気持ちも隠すべきだ
何もかも知られてはいけない
隠しておくのは賢明だ
自分の心を守るためだ

私は答えない

変わっているね
それが褒め言葉じゃないのだと
ようやく気づいた時の話は
今書いたらきっと共感されると思うけど

私は答えない

あの日どうして
無視されたのか
いないことにされたのか
書いてみればいいのに

私は答えない

そうだ
出る杭は出る前に打たれた
なんてタイトルはどうだろう
あはは

私は答えない

また先を越されてしまった
また同じような経験談だ
隠しているうちにこうなるんだ
だから早く出してしまえばよかったのに

私は答えない


私の声を聞いてほしい
私のことを見てほしい
悲しい
苦しい
助けて
いつも日記に書いてたのを知ってるよ

私は答えない


そうだよね
聞かれたくない
見られたくない
こんな矛盾だらけの自分なんて
表に出すべきじゃない
ふふふ
わかるよ

私は答えない



なんだ
所詮は他の人と同じなんだ
人と違うと思っているのは自分だけだね
結局みんなと同じか
ふふ
あなたなんて全然特別なんかじゃない
期待して損した
大したことないな

私は答えない



答えてはいけない

全部罠だ


答えてはいけない


罠にかかるな

答えるものか



そういえば昔
罠にかかったね
泣きながらあはは教えてくれた
絵に描いたような優等生の
初めての挫折ふふふ



私は 答えない 


罠なんてかかるものかと
あはは思っていただろうのに
簡単に引っかかった
ざまみろ愉快だ



私は 答え ない


悲しくて悔しかったって
あははは書けばいいものを
この世で初めて本気の裏切りに遭遇した時のことを
人生史上最大の悪口を
その胸の中に
隠している罵詈雑言をふふふふ
みんなが書いているみたいに
大事な人に裏切られたと
声高々に叫ぶ勇気すらないあはははは
自分の傷口さえまともに見られない
事なかれ主義の弱虫の卑怯者
なんてかわいそうなんだろう
はは はは あーおかしい




私は 答え ない 



人が壊れていくところを
見ていることしか
できなかった話を
ふふ
見ることすらしなかった話を
被害者目線で書かないなんて
ふふふ
やっと見つけた
ご立派な被害者様だ
あんたバカだね
ふふふふ
諦めなさい
普通ならははははは
被害者ヅラして御涙頂戴と書いてもいいくらいだ




私 は  答え ない



もっと泣け
声を出すな
あはははあははは
ああ楽しい
生意気な子だ
黙っていれば済むと思っているのはお見通しだ
反抗期がないいい子を演じきったなら
さあどっちか選べ
他人は放っておけ
こんなものはこうしてやる
口答えは許さない



 私 は   答えな い 




こっちを見るな
早く大人になりなさい
あははははははは
あっちも見るな
誰にもいうな
まるでわかっていないくせに
痛い痛い痛いそんなわけない
言わぬが花なんて虫がよすぎる
助けなんていらない
ほらあそこにもここにも
いつも敵はこっちを見ている


  私  は答 えな い    


ふふふふふふ
これだから子供は嫌いだ
そっちに行くな
なんで黙っているんだ何か言え
お前も敵か
誰も何も信じない
あはははははふふふふ
偉そうに

立入禁止問答無用取扱注意
危険危険危険危険危険
数音文字狂声写真メモ病悪魔虚曲名日付哀色監視薬明暗恨人涙盗鬼妄想憎脅怒



私     は    答   え  な い




目を閉じて
深呼吸をする

罠にかかるな

あれはまやかしだ

真実を知るものは
一人しかいないのだから


あの手この手で

過去の傷をつつくのは

いつだって他の誰かじゃない

普段封じ込めている自分だ
自分自身だ

あれは
自分で封じ込めた


お前だ



ねえ…ところで
この下書きはいつまで一番下にあるの?
なぜ消さずに残してあるの?


その時がきたら私は書く
だから消さ





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