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大公開! これが、ゲーム条例施行後の香川県の教職関係者が持つ所見だ!

[ 2023年9月24日更新 … 最新の時事を反映させました]

本文書は、そのアンケートの「教職関係者版」となる
本文書投稿時点で同様の調査結果が公表されていないことから、おそらく、本アンケートは香川県内初の実施となる。
ただし、標本数が非常に少ない点は何卒ご容赦いただきたい。それでも、「傾向」だけは把握できると思う。

標本数が非常に少ない理由
本アンケートの対象は「業務中の個人」となる。
私が契約している業務の規約の関係で、「業務中の個人」が顧客の場合は、本アンケートのような本体業務以外の作業ができないからだ。


本アンケートの概要

本アンケートの概要は、下表のとおりとなる。

また、本文書における以下の言葉が意味する内容は、次のとおりだ。

  • 子ども…17歳以下(未成年)の香川県在住者

  • 香川県…香川県教育委員会/香川県議会

  • ゲーム行動症…ゲーム依存症/ゲーム障害

  • ゲーム条例…香川県ネット・ゲーム依存症対策条例

  • 資料…ゲーム条例の内容に基づいて編集・頒布された紙媒体や公開されたデジタルコンテンツ

本アンケートでの質問と回答結果

それでは、個人的な感想を添えつつ、本アンケートでの質問と回答結果を以下に示したい。

質問1.どの地域で勤務していますか?

人口比と比べると観音寺市がやや多いが、これは、本アンケートに協力いただいた方のうち、観音寺市内で勤務している方が多かったことによる。

質問2.勤務している学校の種類は何ですか?

本アンケートに協力いただいた方においては、中学校で勤務している方が多い。一方、高等学校については、調査当時は資料が配布されていないこともあって、数が少ない点は否めない。

質問3.どのような職務で勤務していますか?

本アンケートの調査対象者の属性の関係か、教諭が圧倒的に多い。ただ、心理専門職であり、ゲーム行動症になった人の背景で多いと推測される「不登校」の問題解決を担うスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーに本アンケートは届かなかった。
この点は、私や協力者の力不足の至りといえよう。

質問4.香川県が配布した資料の運用の有無について

資料の配布から時間が経過していて、かつ、仕事柄多忙であることから、本アンケートに協力いただいた半分近くの方は、資料の存在を忘れているか忘れかかっていると推察される。一方で、半分近くの方は、資料を授業等で運用した記憶がある、とのことだ。

質問5.資料をどのように運用しましたか?近いものを選んでください

ほとんどの場合「家庭におけるICT機器の使用時間を少なくする、もしくは、使わない日を設ける」ために、授業などで資料を運用したようだ。これは、ゲーム条例に従ったというよりは、ゲーム行動症やインターネット依存症の予防対策として一般的に広く知られている事柄、つまり、すでにある(主として久里浜医療センター発の医学的根拠に乏しい、デマ同然の)方針に準じて運用したものと推察される。特に、高松市では、ゲーム行動症やインターネット依存症対策と称して、ICT機器を含む“情報を伝えるための道具”を一切使わない日を可能な限り長く設けることを勧める施策(ノーメディア運動)を行っている。

高松市の場合、施策の名称こそ「スマート」を冠しているが、チェックシートの内容を見れば「ノーメディア運動」であることはすぐにわかる。

この背景があることから、高松市内の小中高校で勤務しているなら、これに従った資料の運用をするのは当然の流れといえる。
しかし、上述した施策や方針は、実はすべて間違いだ。これらは、ゲーム行動症やインターネット依存症の対策にもならないうえに、ICT機器の利活用に関する、本来とるべき方針から逸脱している。

・ノーメディア運動には意味がないとする“まじめな”研究結果

・精神医学の研究者による「エセ科学準拠のゲーム行動症対策」に関する懸念

・ICT教育の研究者・専門家による指摘

質問6.資料について個人的にどのように思いましたか?近いものを選んでください

質問5と同じ傾向だ。つまり、多忙であることから、本アンケートに協力いただいたほとんどの方は、資料について検証を行う時間が十分に割けないことがわかる。
この質問では「意味が分からないから内容を検証しない」と答える方もいた。そこからは、ゲーム行動症に関する正確な知識や、ICTの適切な利活用に関する教育に必要なICTリテラシーや情報セキュリティー分野の基礎知識を仕入れる時間も十分に割けないことが推察できる。
一方で、授業での運用に反映させているかどうかを除外すれば、資料の内容に間違いがあることに気付いている方も「いる」こともわかる。

質問7.資料について、香川県に改善要求を出しましたか(出す予定ですか)?

ほとんどの方は、個人もしくは法人(学校)として、資料の内容の改善要求を出す予定はない、もしくは、出していないようだ。ここで注目したい点は、そのような中でも、資料の内容の改善要求を出した個人もしくは法人(学校)が存在する事実だ。
そこからは、教職関係者全員、もしくは、法人としての小中高校すべてが、ゲーム条例の学校向け関連施策について、盲目的に香川県に従って業務を遂行しているわけではないことがうかがえる。

質問8.ゲーム条例は、学校が行うICT教育やゲーム行動症対策の内容に悪影響を与えると思いますか?

質問5と6の回答からは、資料について検証する時間が十分確保できないこと、もしくは“おとなの事情”から「何とも言えない」と判断する方が多いと推測できる。この質問の結果は、それを反映していると考える。
この質問で注目したい点は「悪影響などもたらさない」と回答した方が1人もいないことだ。このことから、教職関係者は、資料について検証する時間が十分確保できなかったり、ICTリテラシー、情報セキュリティー、ゲーム行動症に関して詳しい知識は備えていなかったりしている場合もあるが、ゲーム条例の内容が、学校で行う、望ましいICT教育やゲーム行動症対策にとって悪影響を与える存在であることだけは、直感的に(肌感覚レベルで)理解ができる、と推察できる。

この質問から、教職関係者に「よくわからんがこいつは危険だ!それだけはわかる!」と判定させるほど内容が怪しいゲーム条例は、教職関係者が望むべき仕事の遂行に恩恵を与える存在ではない、と私は推測する。

所感

『教師のバトン』プロジェクト」でも露呈されたように、文字通り生命が削られるほど多忙を極める教職関係者は、資料について検証する時間などの資源を割り当てることが困難な状況にある。
ただ、忙殺されることとは、思考停止状態に陥りやすい状況を作っていることと同義だ。

その状況で、彼ら彼女らの業務に役立てられる内容で資料を編成するなら、正確な技術標準と医学的、科学的見地に基づき、かつ、資料の読後すぐに業務に投入できるようにすべきだろう。
その重要性が、本アンケートからわかる、少ないが確実に言えることの1つだろう。

資料の内容をそのまま授業や学年集会で展開すればよいように文面を編成することが理想だろう。教師に関連知識のストックが乏しい状態であっても、正確な知識の提供や、ICTの利活用に関するKYT(危険予知訓練)など、授業での実践的な展開ができるよう、資料がガイド役を担うことができれば、誤った知識を拡散する懸念は少なくなると予想できるからだ。
それを成すには、資料は、以下の公開文書や信頼できる科学的根拠に基づいて編成されなければならない。そして、編成される資料の内容においては、ICT教育の分野と、ゲーム行動症という精神医学の分野を絶対に混在させてはならない*1。

  • ICTリテラシー及び情報セキュリティー教育の分野なら
    IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公開している技術標準に則った 資料

  • ICT機器の使用にかかる健康被害対策なら
    厚生労働省が公開しているVDT症候群対策に関する 資料

  • ゲーム行動症やインターネット依存症対策なら
    現段階で判明している、世界的に信頼性が高く、かつ、確証が取れた研究結果や資料(2023年9月時点では存在しない)

WHOが、根拠薄弱な状態でICD-11にゲーム行動症を採用したことについては、海外の研究者からも厳しく指摘されている。その研究者の1人、Andrew Przybylskisi氏は、X(Twitter)上でこのことを言及している。

香川県も、教職関係者の勤務環境の惨状は把握しているはずだ。しかし、香川県は、そこに付け込むように、トロイの木馬よろしく、その仕事の質を悪化させるガイド役を平然と「派遣」している。依存症(行動嗜癖)を専門領域とする医師や研究者で構成される学会も厳しく批判*2 するその内容の杜撰さをあなた自身で確かめていただければ幸いだ。

香川県がしていることは、結果として、子どもやその親御さんに誤った知識を伝えること、そして、家庭や学校で実施するICT教育の質を悪化させるだけだ
それが、本アンケートから垣間見えた現実だった。
このような状況が続けば、香川県の小中高校におけるICT教育の未来はない。あったとしても、他地域から「そんなデタラメ知識をどこで仕入れた?え…学校で?ウソだろ…?」と絶句される、暗黒の未来だ。
そして、ゲーム行動症対策が誤っているから、ゲーム行動症に苛まれる子どもも救えない

ゲーム条例は、ゲーム行動症(香川県に言うネット・ゲーム依存症)に苦しむ子どもを1人でも救済するために作られた法令のはずだが、これでは法令としての体を成さない。

さて、ゲーム条例は、ゲーム行動症対策以前に、ゲーム行動症そのものに関してデタラメな内容の啓発を香川県民に刷り込んでいることが、まじめな専門家や研究者の検証からも明らかになっている。

そのデタラメな啓発を正当化させるためだけに、香川県は、ICTリテラシー教育および情報セキュリティー教育の内容まで捻じ曲げた。それは、ICTの適切な利活用に関する学校教育の方針を歪め、ICTそのものに対する恐怖心を香川県民全員に植え付けている行為といえる。
しかし、世界はそれと真逆の方向に動いている。世のICT教育は、メディア情報リテラシー教育と統合され、未来の社会から望まれる世界市民を育てることを目的とした教育「デジタルシティズンシップ教育」に舵を切っている。日本国も、当然それに則ったICT教育を国策として展開するだろう…というよりは、遅れに遅れている日本国の小中高校のICT教育の現状を鑑みると、展開は不可避なのではあるが…

国内での実践例

だが、ゲーム条例がある限り、香川県だけが「国策」に造反している形になる。
そのゲーム条例には、「附則」として、制定から2年経過した今年に見直しを行う規定がある。しかし、香川県議会の動向を追う関係者からの話によると、香川県にその意思は一切ないようだ。

再度書くが、「ゲーム条例やそれに関する施策が、学校で行うICT教育やゲーム行動症対策に悪影響をもたらすことはない」と回答した教職関係者は「1人も」いなかった。これは無視できない。
学校教育現場は、ゲーム条例の「主要なターゲット市場」の1つだ。そこを司る教職関係者が眉を顰める法令に、存在価値は微塵もないと私は考える。

結論

以下の事項が、本アンケートから導き出せる結果だ。

  • 香川県内で勤務する教職関係者にとって、ゲーム条例とそれに基づく学校現場向けの各種資料は、彼ら彼女らの仕事内容に悪影響を与えうる存在と判断できる。

  • 学校教育現場でゲーム行動症対策を真摯に行うなら、信頼性が高い医学的、科学的な知見に基づいて行うべきだ。デマ同然の誤った対策を正当であると吹聴して「施策」として行うなど「論外」と断言できる。

これらを一言でまとめると、
早急に、ゲーム条例の抜本的な改廃を望む
に行き着くのだ。

なお、このような現場関係者向けの調査は、本来は香川県の仕事だ。香川県にはまともな仕事が期待できそうにないと推測したことから、個人が先んじて行ったのだった。その「まともな仕事ができそうにない」推測は、香川県教委の長による、2023年9月期の県議会における発言により、確信へアップグレードされた

最後に、多忙の中本アンケートに回答いただいた教職関係者の皆様、そして、本アンケートの頒布に協力いただき、内容の編集に関する助言をくださいました香川県議会議員に、この場をお借りして感謝の意を申し上げます。

参考資料

*1 井出 草平「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例を考える 講演資料 (2020年2月9日版)」
*2 日本行動嗜癖学会「香川県ネット・ゲーム依存予防対策学習シートに関する公開質問状」(https://jssba.org/?p=1651)


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