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【発刊記念】福島創太の語る「未来の学校のつくりかた」

本日6/1発売になりました!!!

そして、僕たちの世代を代表する教育界の論客・福島創太が『未来の学校のつくりかた』を読み、語ってくれましたので紹介します。

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税所:本読んだいただきありがとうございました。どうでしたか?

福島:個人的には特に第2章の井出さん(杉並区前教育長)の話がすごく面白かったです。「学校は時間軸上の公共空間」というところ、そして「地域のつながりの復活をめざす」というのが、刺さりました。井出さんは、ご自身の役割として最大限やれること、そしてやるべき当たり前をすごく丁寧に実践されている方という印象を持ち、尊敬します。それが実は一番難しいと思います。井出さんの「地域があって学校がある、そこに循環を作る」という発想は、取り組まなければいけないけど、まだ多くの学校でできていないこと。こういったやるべきことを一個一個やっていくことが未来の学校づくりに向けて重要だと考えます。

税所:福島さんが感じた第2章の魅力をもっと教えてください。

福島:「挑戦」というキーワードで言えば、杉並の挑戦は5つの現場の中で最も地味にうつるかもしれません。「学校に関わる多くの人が、豊かになれる」を実現するというのは、「学校教育における価値」としてはわかりづらい価値だからです。でも、僕はそれが一番重要だと感じます。第2章「杉並の地域づくり、学校づくり」がこの本にさらなる深みを出しているのではないでしょうか。他の章でも魅力的なリーダーたちが登場します。みなさん「スペシャルな才能」を持っていて、どの挑戦も本当に素晴らしいと思います。一方で、ある種の特異なリソースが集まった中で実現された価値にも思え、そのリソースがなくなった際にまた異なるエンジンをかけなおさなければいけないようにも感じます。その点で、「杉並の地域づくり、学校づくり」の章は、「現在の仕組みが持つ可能性を最大化することで、普遍的な仕組みを再構築する挑戦」という印象を持ちます。

ベストプラクティスが様々なところで生み出されていくとともに、「いまの仕組みの中で、その仕組みのよさを最大化する」という取り組みを同時に行うことが未来の学校をつくる上で重要だと考えています。この二つが揃うことで仕組み自体を更新できる。そのエッセンスが杉並の挑戦にはあると思いました。井出さんのやられてきた仕事のリストを書いてもらえれば、僕たちにとってはとても具体的な参考にできるリストになるかもしれません。もちろん、やすやすと真似できるものではないと思いますが。

税所:なるほど
徳留:「スペシャルな実践」と「普遍的な実践」があると、どうしてもスペシャルなことの方が注目されます。しかし「スペシャルな実践」から学び、それを自らの現場に落とし込もうとすると、どうしても「いや、これはうちでは無理」「あの人だからできたことなんだ」っていう風に考えてしまうケースが多いと思います。そうではなく、学校や地域を含めた目の前の現状で「仕組みのなかで最大限よさをいかす」ということが、今の現状を見直す上で、大切です。この視点は井出さんのような教育長だけではなく、学校にかかわるすべての人が持っておかないといけないと思います。
   
福島:井出さんは「関わる人がみんな豊かだったら、学校や地域が豊かになる」っていう前提を持っているように感じます。豊かさは関わる人や時代が変われば、当然変わるものではありますが、「みんなが豊かになるにはどうしたらよいか」を考え続けようっていう姿勢がとても魅力的で、それこそが今における未来だけじゃなく、未来における未来にも豊かな学校を実現し続ける鍵だと思います。

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これからの学びと、未来の学校のつくりかた

福島:いま直面しているコロナ危機の状態は、僕たちにいろんなことを教えてくれています。僕が特に重要だと感じているのは、「短期」「中期」「長期」といった物事を考える際の時間軸に、新たに「無期」というものが加わったこと。「いつまでこの状況が続くかわからない」「2週間後かもしれないし、なんなら3年後かもしれない」、短期や長期では捉えられない、「無期」という時間軸でも物事を考えなければいけなくなったということだと感じています。教育においては多くの場面で「子どものため」という言葉が掲げられますが、実はその中には「子どもたちの今の幸せのため」と「子どもたちの未来の幸せのため」という二つの観点があり、そしてよく見てみるとそれが相矛盾している場面も少なくなかった。「子どものため」という言葉がその矛盾を見えなくさせ、本質的には合意が得られていない中で政策や取り組みが進められてきたことは少なくありません。しかし「無期」、つまりいつかわからないけど、「子どもがいつでも幸せであるためには?」ということを考えることで、そうした矛盾を浮き彫りにさせ、議論の俎上にあげてくれているように僕は思います。

たとえば、小学生期間では「子どもたちの今の幸せ」を短期的な視点におく。小学生の時は楽しく面白くあればいい。でも中学校以降は突如長期的なスパンに立って将来に向けて訓練させようという考えが何となく存在する場面があった。しかし、今直面している危機の中では、少し極端ですが「もしかしたら3年後、想定するような未来はないかもしれない」ということが当然あり得る。そうしたなかで僕たちは、子どもたちに学びを起こすのは「常に明日であり、常に10年後でもある」という本質的な命題に向き合わなければいけなくなった。

そうなると、たどりつくのは「学び続けるしかない」ということになります。それは学びの本質ともつながっている。僕は学びの本質は「面白い」っていうことだと思っていて、学ぶこと自体が「面白い」、だから学ぶ、というのがひとつの理想だと思うのですね。でも、今は役に立つことや将来の就職を目的に学びが語られる場面が多い。「学びって面白い、だから学び続ける。」が実現できないと、この「無期」に対応しなければいけない今の時代においては、成り立たないかなって最近思っています。だから僕は、「未来の学校」は「学びって面白い、だから学び続ける。」が実現できる場であればと思っているのです。

税所:なるほど!

福島:こうした緊急事態の中ではあるのですが、僕はいまだからこそ中高生と取り組んでみたいなと思っていることがあります。それは「何で学び続けるのか」「どうやって学び続けるのか」というwhyとhowの問いを生徒たちと考えてみる、ということです。「学び続けること」が絶対的に正しいという前提で話すというよりは、「なんで学び続けるんだっけ」「どうやったらそれができるんだっけ」というのを対話する中で、生徒たち自らが何かを発見したり、気づくことがあるのではないかなと思うのです。そして僕にもきっと、様々な気づきがあると思うのです。

僕は、「人は体験によってしか学べない」と思っています。たとえば、中学生に「あなたが最も学んだ瞬間はどんなときですか?」、「そのときあなたの中に何が起こりましたか?」と問うてみる。「学んだ瞬間」、まさにそのときに「自分に何が起こったのだろうか」、「学ぶ瞬間って何か」とかを一緒に掘り下げて考えてみたい。「学び続けるとは、そのことが続くってことなんだ」「それって面白いかも」と自分で感じれば、実は日々は学びに満ちていて、世界を見ることが楽しくなる。そして、「学び続けるとはそういうことね」と自分で体感できると思う。その気づきは十人十色でいいと思います。全ての子どもたちがそんな感覚をもって日々過ごす未来をつくっていきたいと思います。

税所:ありがとうございました!





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