数学のマエストロはどう読むか。山内恵介さん

山内先生は今、日本で一番多忙な先生の一人だ。彼が数学の講師として教壇に立つスタディサプリに、全国から休校中の生徒たちがアクセスしているからだ。僕が山内先生に出会ったのは5年くらい前だ。仕事がノリに乗らない僕は、山内先生に京橋の焼き鳥屋でご馳走になった。

「あなたはきっと今よりも高く飛び立つ。今はそのための深い溜めです。」

そんなようなことをまっすぐに言ってくれたのを覚えている。それからしばらくの月日がたった。僕はずっと山内先生の静かな、しかし情熱に満ちた眼差しにずっと見守られてきた。潮に流されて自分の位置が判らなくなった時、僕は何度も山内先生の存在とその知性に助けられた。山内先生、これからもどうぞご指導ご鞭撻よろしくお願いします!

そんな山内先生が、出版ゲラを二度も読んでくれた感想です。

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ついつい,二度,読んでしまった。

5つの事例は,学校に関わるすべての「人」が,自分が今いる場所で,未来の日本のために,教育を通じて,いま,何をすべきか,何ができるかを考えることができる,すばらしい「参考事例」。
その中には,これをやればよい,というものは一つもない。もし生徒を目の前にしたとき,その一人ひとり,すべての生徒の成長を,どのように実現するのか。何が面で,何が個か。オンラインでできること,対面でしかできないこと。今までの常識を捨て,これからの当たり前を,いまできるすべてのものを使って実現するために,自分は何をすべきか。読み手に,常に問いかけられる,そんな本であると感じた。万人向けというものは,この世に存在しない。いま,自分の目の前の生徒の未来のために,いま,やるか,やらないか。一歩を踏み出し,やってみた上で,どこに何が残り,それをどのように拾っていくのか。やらないと見えてこないこと,と書くと,問題点ばかりが浮き彫りになる印象があるが,,やったからこそ見えてくる「生徒の姿」がある。この本を読むことで,やった人にしか見えない,生徒の可能性の芽があること,そして,自分の生徒の可能性の芽を見てみたい,と思わせる。

同じ場に同じ人が集まっても,そこで起こることに二度と同じことはない。だからこそ,リアルで人と人とが会い,対話し,学びを深める,その場と時間こそが学びを行う生徒,それを導く先生にとってこれ以上ない「最高の場」であることは間違いない。としたときに,それが本当に最高の場となるために,それ以外の時間や,オンラインを含めた場で,何を自分ですべきで,何を任せるべきなのか。それを「任される」立場として,何をすべきか。ここ数年,ずっとそれを考えてきたが,方向性は間違っていないことを改めて確信した。
「先生と連携し,先生にネクストアクションを問い続けるプロダクト」
生徒の成長とともに,先生の成長をどのように支援できるか。道半ば,どころか,まだ始まったばかりだ。

この本は,単なる紹介ではない。最後に,税所くんの「想い」を抜粋したい。そして,早くこの本に,教育に携わる,教育に興味のあるすべての人が出会うことができますように。

『僕は「子ども一人ひとりの好奇心の方向性を理解,コーディネートし,子どものやる気の発火点,きっかけをつくること」が,学校にしかできないことだと考えている。
2030年の学校は,子どもも大人も皆が一緒に学び合い,新しい世界をつくり続けている,そんな未来をつくるために,僕も自分の住む町の学びの循環に貢献しながら,今後ともさまざまなやり方で,皆さんに熱と学びを手渡しし続けていきます』

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山内 恵介

学習塾・予備校の数学講師および企画・運営を経て2012年よりリクルート「スタディサプリ」の立ち上げに参画。全国の生徒および学校の先生を動画授業・先生用システム「for Teachers」を通じて支援。高校での生徒・先生向けの講演も行う。KADOKAWA 「カゲロウデイズで中学数学が面白いほどわかる本」シリーズ,「ゼッタイわかる数学」シリーズ監修。


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