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Study78.「アスパラガス」をおいしいポタージュにするための最適な茹で時間は?

今日は、夏のアスパラガスポタージュの完成に向けて実験を行いました。「昨年までのレシピに滅菌時間(安全な商品を作るために微生物を除去する加熱条件)を加えると、風味に変化はあるのか?」を確かめる実験です。

※この実験は、冷凍ポタージュスープ「朝のひとくちめ」の開発に向けて行っています。

この記事は、地元の農家さんのことをみなさんに身近に感じてもらうことを目指して活動する学生団体「Kitchen Worcar(キッチンワーカー)」の山本と岩﨑が、野菜Laboと共に実験から執筆まで行っています。同じ東広島で「食・農業」というキーワードで地域を盛り上げているパートナーです。Kitchen Worcarの活動について知りたい方はこちらのリンクから

実験内容は、「アスパラガスの茹で時間は何分がいいのか?」「ポタージュの滅菌時間・温度はどうすればいいのか?」の2点です。 

アスパラガスは、加熱しすぎると色が退色し風味も悪くなるので、何分の茹で時間+滅菌時間に耐えることができるのか?を探っていきます。

これらの実験のために用意した条件はこちらです。
A. 茹で1分/滅菌75℃ 5分
B. 茹で1分/滅菌80℃ 3分
C. 茹で2分/滅菌75℃ 5分
D. 茹で2分/滅菌80℃ 3分

アスパラガスは、細いものから太いものまで様々なサイズのものを使用します。アスパラガスは根本部分を折り、先・根本の順に沸騰した塩水でそれぞれ1分と2分茹でて水にさらします。

アスパラガスの折り方のポイントはこちらの記事から「Study35.アスパラの部位ごとの甘さと食感の違い」

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(左:茹で1分、右:茹で2分)

茹で1分の方は、青みがあり、アスパラガス本来の鮮やかな緑色を保っていました。表面もハリがあります。一方、茹で2分の方は、青みが薄れて黄色っぽい色に変化していました。また、表面にはしわができていました。この時点では、茹で1分の方が見栄えが良く見えますが、ポタージュ完成時には色はどう変化していくのでしょうか?

次に、他の材料も準備していきます。今回は、ポタージュにとろみを出す役割であるジャガイモ、ポタージュに甘みを出す役割であるタマネギを入れていきます。

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(左上:塩、右上:米油、左下:ジャガイモ、右下:タマネギ)

ジャガイモとタマネギは、薄くスライスします。ジャガイモはスライスした後、5分程水にさらしておきます。これは、ジャガイモの余分なでんぷん質を取り除き、ネバネバを抑えて舌触りの滑らかなポタージュにするためです。 

ジャガイモのネバネバを抑えて美味しくする方法はこちらの記事から「Study34.ジャガイモをおいしいポタージュにするちょっとしたあれこれ。2」

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ジャガイモは最初に油とよく絡め、ジャガイモの表面に焼き色がつくまで弱火でじっくり火を通します。

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その後、タマネギを入れ、塩で味付けをします。タマネギが透き通るまで炒めます。

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タマネギが透き通っていることを確認したら、具材がヒタヒタになるくらいお湯を入れて煮立たせます。(煮立ってきたらローリエを揉んで入れるはずが、うっかり忘れていました…。)
ジャガイモが柔らかくなったら水気を飛ばし、ボールに移して粗熱をとります。

次に、攪拌作業です。この工程では、以下の調味料を用意しました。

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(上:豆乳、左下:レモン汁、右下:ねり胡麻 ※2セット用意)

アスパラガスは、ミキサーにかけやすいよう3~4cmにカットしておきます。

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ミキサーにアスパラガスの先の部分・ジャガイモ&タマネギ・ねり胡麻・豆乳(100mlほど残しておきます)を入れ、滑らかになるまで2分半攪拌しました。

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アスパラガスの根元部分は、別で残しておいた豆乳と一緒に攪拌し、ザルで濾して先程ミキサーにかけたペーストと合わせます。
実は、普段取り除いてしまうアスパラガスの根本部分は甘くておいしいんです。そのため、これは根元の固く筋っぽい部分を取り除き、アスパラガスの甘みを加えるための大切な工程となります。

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最後に、ジップロックに100gずつ取り分け、それぞれ「75℃で5分」と「80℃で3分」で滅菌し、流水で粗熱を取ります。

「いざ、実食!」

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(左:茹で1分/滅菌なし、右上:茹で2分/滅菌なし)

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(左:A:茹で1分/滅菌75℃ 5分、右:C:茹で2分/滅菌75℃ 5分)

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(左:B:茹で1分/滅菌80℃ 3分、右:D:茹で2分/滅菌80℃ 3分)

一番鮮やかなのは「茹で1分/滅菌75℃ 5分」

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色を比較すると、最も鮮やかでアスパラガス本来の色に近いのは「茹で1分/滅菌75℃ 5分」でした。滅菌なしで比較しても、茹で時間1分の方が青みが強いことから、茹で時間が短いほど色が鮮やかになると言えます。

ただ、AとBを比較するとAの方が青みが強かったのですが、CとDを比較するとDの方が青みが強いと感じたことから、滅菌温度や滅菌時間による見た目の関係性は謎が残ったままでした。

香りはどれも変わらず

香りを比較してみましたが、どれも特に違いを感じませんでした。加熱時間や滅菌温度の少しの差では、香りに関してはあまり違いが大きく出ないのかもしれません。

一番トロみが出るのは「茹で1分/滅菌80℃ 3分」、サラッとするのは「茹で1分/滅菌75℃5分」

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とろみを比較すると、もったり順にA>D>C>Bでした。ただ、CとDの差は僅かで、ほとんど差は感じられませんでした。滅菌なしで比較すると、茹で1分の方が茹で2分よりもったりしていました。茹で時間が短い方がとろみがつくことは見えてきましたが、滅菌温度や滅菌時間によるとろみの関係性はさらに比較していく必要がありそうです。

一番おいしいのは「茹で時間1分/滅菌80℃で3分」

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「甘み」の観点で比較すると、アスパラガスの甘みをしっかり感じることができたのは、滅菌を80℃で3分行ったBとDでした。一方で滅菌を75℃で5分行ったAとCは、甘みよりもアスパラガス特有の青臭さが強く出てしまったように感じました。このことから、滅菌は高い温度で短時間行う方が甘く感じることが分かりました。

次に「濃さ」の観点で比較すると、茹で1分のアスパラガスの方が旨味が濃縮しているように感じました。これは、アスパラガスに含まれる水溶性の栄養素の茹で時間による流出が関係していると考えられます。このことから、茹で時間は短い方がアスパラガスの旨味を多く感じることが分かりました。

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最後に、少量のレモン汁を加えてさっぱりした口あたりになるか検証してみましたが、どれも差をほとんど感じることができませんでした。

これらの結果から、

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となり、「茹で1分/滅菌80℃ 3分」が最もおいしいポタージュの条件であるという結論が出ました。

というわけで、夏のポタージュセットには、この条件を採用していこうと思います! 

ゴールが見えてきましたが、滅菌温度や滅菌時間による「見た目」「トロみ」の関係性により焦点を当て比較していく必要性がありそうです。

<アスパラガスに関する過去の記事>
Study35.アスパラの部位ごとの甘さと食感の違い
Study36.アスパラは太いのと細いの、どっちが美味しいのか
Study37.アスパラは太いのと細いの、どっちが美味しいのか(2)
Study38.アスパラの下の部分はポタージュに入れるべき。
Study40.アスパラポタージュをレトルトにすると腐った辛子になる(加工食品失敗中)
Study53.アスパラポタージュのおいしい解凍方法と食べるときの温度
Study55.アスパラガスのポタージュ工場仕込みでもう一段階美味しくするための実験。

この実験を行いました!アスパラガスチーム


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