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多様性は地域の中にもある(千葉県在住、村上誠さん・康子さん)

これまで海外の国のお話を伺ってきました。
海外の情報に日本からアクセスすると、教育も、子育ても、働き方も、いい面がたくさん取り上げられていて、「これからのグローバル人材を育てるためには海外で子育てする方が良い・・・」なんて思ってしまいます。
けど、お話を伺うと、いいところもあれば、やっぱり大変なこともあって、逆に日本の方が優れているところもたくさんある事がわかってきます。

土屋明日香さん(UK在住)がおっしゃってくださっていたように、理想的な国はどこにもないわけですね。
教育や子育て、働き方は、それぞれの環境の中で、何を身につけ、どう実践するのか、という自分自身のあり方が問われているように感じました。

つまり、グローバル人材を育てる教育や子育てというのは、海外ならできるというわけではないってことですね。
環境ではないのだとしたらもしかしたら日本でもできるんじゃないのか。

ということで、2021年第1回目となる今回は、千葉県にお住まいで、地域のつながりを大事にしながら国際バカロレア(IB)認定校にお子さんが入学されているご夫婦、村上誠さん、康子さんにお話を伺いました。
今回もどうぞお付き合いください。

村上誠さん、康子さんのご紹介

第7回目(1月16日(日))ゲストは、村上誠さん、康子さんご夫婦。
村上家は、長男(中2)、次男(小2)、祖父の3世代家族。
2020年夫婦で里親登録し、現在3歳男児の里子を養育中。
長男は、中学受験で国際バカロレア認定校に通学中。
これまでホームスティのホストファミリーとして10人の外国人留学生を受入れています。

村上誠さん:
東京理科大学理工学部建築学科卒。
都市計画コンサルタント勤務を経て、フリーランスのグラフィックデザイナー。
実母の介護と妻の職場復帰を機に兼業主夫となる。
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、NPO法人孫育て・ニッポン理事、NPO法人いちかわ子育てネットワーク理事、「秘密結社主夫の友」総統を務める。

村上康子さん:
外交官の父を持ち、幼少期よりインドネシア、アメリカ、クウェイト、フランスに在住、青山学院大学在学中にアメリカへ留学し、コロンビア大学にてAmerican Language Programを受講。
外資系企業での外国人付き秘書やIT企業の役員秘書を経て、小学校の外国語活動指導員に。
自宅で幼児~中学生向けの英語教室「Bridge to English」を主宰。

国際バカロレア(IB)認定校とは

皆さんはお聞きになったことありますか?
僕も海外に興味を持つ人間として、名前くらいは聞いたことあるくらいでした。
なんか認定のあるインターナショナルスクールかぁ・・・くらいの感じ。
実際にお話を聞いてみると面白いですね!

とにかく授業が面白い!
日本で、文科省認定を受けている学校に通ってこんな授業を受けられるんだなぁと。

村上さんも説明してくれたので、少しだけここでおさらいします。
IBとは簡単にいうと、国際機関の多国籍の子女に世界共通の教育を受けさせられるようにということを目的に設立された学校です。
日本では48校とまだまだ少ないんですが、世界では5000以上の学校があるそうです。
日本で少ない理由としては、文科省が定める学習指導要領の各科目と国際バカロレア機構の定める教育課程の両方を満たすカリキュラムが必要で、それゆえに他国より学校自身の教育自由度が少ない日本では設立のハードルが高いということがあるようです。
また、世界では6年、3年、3年という学年システムはマイナーで、一般的には5年、5年、2年なんだそうです。
しかも、世界は9月始まりのところが多いので、日本の場合は2年で学ぶことを1年半で学んで、世界共通のバカロレアのテストを受ける事になるので、実はハードルが高いらしい・・・。

学び方を学ぶ

IBの大きな特徴の一つは、学ぶ方を学ぶということだそうです。
国際的な視野を持つ人になるためにどんな学び方をするべきか。
以下にまとめた10の視野を通じてそれを身につけられるようになっているということなんですね。

探究する人 (Inquirers)
知識のある人 (Knowledgeable)
考える人 (Thinkers)
コミュニケーションができる人 (Communicators)
信念をもつ人 (Principled)
心を開く人 (Open-minded)
思いやりのある人 (Caring)
挑戦する人 (Risk-Takers)
バランスのとれた人 (Balanced)
振り返りができる人 (Reflective)

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授業の内容はすべてがというわけではないですが、英語の授業はもちろんのこと、芸術やデザインも、ある程度の学年からは社会も英語で学ぶのだそうです。
ホームルームや先生と会話するときも英語なのだそうで、まさに英語漬けの学校生活。
これだけ英語ベースとなると、ある程度の基礎英語力は必要だと思いますが、世界で通用する英語力というのはどんどん身についていくのだろうなぁ。

また、授業以外に、課外活動も重要視されていて、取り組む課題も非常にユニーク。
まるで大学でするようなカリキュラムを中学高校で経験するんですね。

例えば・・・
社会:人口減少率が最も高い秋田県の人口を増やすために何をすべきか?を考える
英語:インバウンド向けの観光案内パンフレットを作る
デザイン:朝食を食べない子が多いことを解決するために栄養価が高くて腹持ちするクッキーを作る
アート:学校のマスコットキャラクターを考える
数学:座標平面図に関数で絵を描く
国語:すでにある小説の続きを書く
理科:もっと広まった方がいいと思う最新医療を調べてポスターにする
音楽:学校の校歌第3番を考える

こうした授業を通じて学び方を学ぶ学校・・・本当に面白そうですよね!
こういう授業ができる学校が増えてくれたらいいのになぁ。

なんでIBを選んだのか?

これは気になりますよね。
僕は、学校のことは知っていたけど、そこに向けて頑張るという選択肢がなかったので、実はとても気になっているんです。

誠さん)
もともと中学受験の勉強をしている中でたまたま知って、理念とか全人教育の方針に共感したので受験して、あと、立地的なこともあっていくことになりました。

ATSUSHI)
中学受験をする中で知って、こっちもあるやん!ってなって受けることになったわけですよね。
お子さんはすんなり納得されてました?

誠さん)
そうですね、カリキュラムも面白そうだなぁと思って息子に話をして、納得していってくれることになりました。

ATSUSHI)
まぁそうでしょうねぇ、お聞きした課題を見てたら我々もワクワクしますし、それを学校の課題としてできることがいいですよね。

Linda)
サッカーも結構やってたじゃないですか。
そうするとどうしてもグラウンドの広い学校をって思っちゃうんだけど、それを差し引いてもIBを目指そうってすんなり変わりました?

康子さん)
グラウンドを取るかどうかっていうところは、最後の最後まで悩んだところですね。

Linda)
そうですよね。
子どもたちの宿題を見ていたら、こっちの方がワクワクしますよね。

康子さん)
実際に社会に出たときにやらないといけないことを勉強としてやれる、社会に出る準備をさせてもらえてるという感じがしますね。

Linda)
日本だと、大学に入るといきなりプロジェクトとかさせられることになるけど、公立の学校とかだとシフトするのが難しいですよね。

聞いてるだけでワクワクしますよね。
もちろん通用するためにはそれ相応の大変さもありますが、それでもこんな学校行けたらいいなって思います。

村上家のグローバル教育

突然ですが、皆さんに質問です。
インターナショナルのグローバルの違いってなんだろう。
改めて問われると明確に回答するのって難しいですね。

村上さんからは答えはとても明快!

インターナショナル:
国際的で、自国を中心として考えたときの他国との関係性
グローバル:
地球規模的で、地球を一つとして考え、俯瞰したイメージ

あー、なるほどですね。
個人的には主語が違うという風に認識しましたが、皆さんはいかがですか?

村上家では、国や地球をさらに細分化した地域や個人というところまでのつながりを意識して、「Think Globally、 Act Locally.(地球規模で考え、足元から行動せよ)」ということを実践されているんですね。

村上家のAct Locally.はとてもわかりやすい!
地域の皆さんを集めて、29日に肉フェスとか、餅つきとか、イースターエッグ作りとか、とにかくホームパーティーを主催されることが多いんです。
ご本人たちの子どもの頃の原体験がものすごく大きいので簡単には真似できませんが、こういう行動一つが子どもの原体験につながることを考えると、大人も頑張らないといけないところですね。

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村上家を海外にする?

地域の活動以外にも様々なことをされています。
外国人留学生の受け入れホームステイ先に登録して、これまでに10人の留学生を受け入れられたりされたそうです。

Linda)
そうして留学生が来られたときって、子どもたちも話をすると思うんだけど、英語教育って康子さんがされてたんですか?

康子さん)
長男と、長男の友達から英語を教えて欲しいと頼まれたので、一緒にやるようになってましたね。
受験でそういう機会は少なくなってしまいましたが、今でも英語耳だけは維持するようにしています。

Linda)
ちなみに、中学受験前はどれくらい英語力があったんですか?

康子さん)
小学生の頃から英検を受けさせたりはしていませんでした。
なので、レベルはわからないんですが、中学になってから英検3級を受けて、次は2級を受ける予定で、素地はできていたかなぁと思います。
なので、コミュニケーションは取れるくらいではあって、グローバル教育というものは家の中でできていたかなと。

ATSUSHI)
すごいですよね。
外国の人が当たり前に家にいる環境を作れるってとてもいいですよね。

Linda)
地域の活動と、留学生の受け入れと、IBが全部つながっている感じがしますね。

誠さん)
外国人であることだけが多様性っていうわけではなくて、地域の中にも多様性ってたくさんあるので、言葉が通じないところに行くってジャンプするんじゃなくて、地域からもできるのかなぁと思います。

Linda)
普通の人だったら康子さんのように27か国行くとかっていうのはなかなかできないけど、日本にいながらこれだけ受け入れられるっていうのが新しいですよね。

康子さん)
自分のお家を海外にしてしまうっていう感じですね。

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英語は手段!大事なのはノンバーバルなコミュニケーション

誠さん)
大事なのはどうコミュニケーションを取れるかっていうことだと思うんです。
僕もこうやって受け入れてるけど英語全然ダメなんですよ。

康子さん)
でも相槌だけでなんとかなるんですよね。
今までの留学生、みんな誠さんと仲良くなって帰っていくんですよね。
だから本当にノンバーバルコミュニケーションが大事で、あとは胃袋を掴むことですね。
久しぶりに連絡がきたら「誠さんの料理が食べたい」ってみんな言いますから。

誠さん)
あと、大事なのはとにかく人を受け入れるということなのかなと思います。
自分の懐を広くして、多様なものを受け入れるということの経験があった方がいいんだろうなと思います。

康子さん)
小さい頃からいろんな人がいるなぁっていう状態を作って、身近なところにいるなぁって思っていたら、海外の人だろうが誰だろうが、目の前にしても当たり前にいられる感覚って身につけられると思うんですよね。
同じ考えの人同士でいると、排他的になってしまってもったいないなって思うので、小さいうちから養って行きたいですよね。

ATSUSHI)
なるほどなぁ。そういうことを養うのに留学生の受け入れってうってつけだと思うんですけど、まだまだハードル高いじゃないですか。
どうやって受け入れてるんですか?

誠さん)
ホームステイを斡旋するエージェントに登録していて、そこでこんな人くるんですけど受け入れられますか?っていうオーダーが来てって感じですね。

康子さん)
彼らは日本に勉強しに来ているので、逆に英語ができなくても大丈夫なんです。

ATSUSHI)
そっか、僕らが海外に行って受け入れてもらっていることの逆をしてるってことなんですね。
そうすると、ローカルにいながらグローバルな感覚を身につけられるっていいうことですもんね。

Linda)
その前段階があるんだろうなって思うんですよね。

誠さん)
うちの親もオープンマインドだったんですよね。
母親は美容室をやっていたんですけど、家に働いている従業員を住まわせて世話をしてたんですよね。
従業員がいなくなると親戚を田舎から呼んで住まわせていたりして、僕は結婚するまでずっと他人と一緒に生活していて。
親がそういう人だったので、誰かを受け入れるというのが当たり前の背中を見てきたというのはありますね。

Linda)
もうお二人ともに子どもの頃からそういう感覚が染み付いているんですよね。

ATSUSHI)
親から受け継いだ感覚を、子育てにそのまま根付いてるっていうのを本当に実感しました。
僕らも孫の代まで考えてマインドって作っていかなあきませんね。

Linda)
あと、親は子どもに求めるだけじゃなくて、親が地域の子ども達とか、地域に目を向けるっていうのが大事ですね。
村上家のように毎月29日(肉の日)にパーティーはできないけど・・・笑

村上家の子育てのなるほど!

誠さん)
親のせなかを見せるってことが大事だなと思っていて、せなかというのは、せ:世界
な:仲間
か:可能性
をどれだけ見せるかっていうことだと思うんです。
世界はグローバルっていうだけじゃなくていろんな世界を見せてあげて、一緒にやれる仲間と、いろんなことにチャレンジするということを見せてあげたいなと。

康子さん)
英語教育とかどうしたらいいのっていうのは子育てにつきものだと思うんですけど、そういう方々のための架け橋になりたいなということがあって、「Bridge to English」をやっているんですけど、Bridgeは世界と日本だけじゃなくて、いろんな人同士をつなげる場所でありたいし、そういう人であり、なりたいと思っていて、いろんな人を巻き込めるような人であり、家族でありたいなと思っています。

ATSUSHI)
いや、村上家はもうなってるから!って本当に思います。
この先も、ぜひ皆さんと繋がって、いろんな人の架け橋になって行って欲しいと思います。

いかがでしたか?

今回もおつき合いいただきありがとうございました!
なるほど!子育てザ・ワールド、のワールドにはもちろん日本も含まれているんですけど、今回、日本でのお話を伺えて本当に勉強になりました。
グローバルと対極にあるようなローカルに、実は求めているものがあるんだということ、受け入れるという自分のマインドがとても大事だということ、こうした当たり前なことを改めて思い出させてくれましたね。

グローバル教育は、自分の家庭のあり方から。

一人では難しいことも、みんなでだったらできることもあるはずなので、これからもどうぞよろしくお願いします!


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