楽天、『第4のキャリア』の勝算への道のり

 情報の行き交う通信網はインターネット、情報をやり取りするデバイスはスマートフォン、そして、最も身近な情報の媒体が動画となる『スマホ文化』が、若者を中心に急激に広がってきている事を、この記事【若者2秒でつかめ 通信大手が動画スタートアップ囲い込み】は改めて思い起こさせてくれます。そして、このネット・スマホ・動画によって作られる『スマホ文化』は、5G(第5世代移動通信システム)の登場によって、さらに広く深く浸透する勢いです。5Gによってもたらされる大容量化・超高速化・低遅延化といった性能によって、『スマホ文化』の技術的な基盤がより強固なものになるからです。そのようにパワーアップした『スマホ文化』が、圧倒的に魅力的なコンテンツ、サービスを生み出すことで、5Gの普及に拍車がかかるとすれば、まさに『スマホ文化』と5GはWin-Winの関係にある、と言えそうです。

それ故に、『動画サービス』は5Gのキラーコンテンツと称される訳ですが、そのように考えれば、記事にあるように、通信大手がスマホ文化に精通した動画スタートアップの囲い込みによってイノベーションを成し遂げようとしているのも、戦略として一つの道だなと思えます。全く逆の戦略で、既に幅広いサービスを事業展開している楽天が第4のキャリアとして参入してくるとなれば、5Gの時代に魅力的なサービスを持たないことは、キャリアとして致命的なこと、顧客の流出を招きかねないのです……ユーザーが5Gを選択する時、どのキャリアを選ぶか……

 ここまで思いを巡らしてきて、私は、遅まきながら、「これが楽天の勝算だったか!」と合点がいったのです。深慮遠謀なビジネスの世界の話ですから、断定はできませんし、これだけが理由でもないでしょうが、国内9千万人の顧客基盤を抱える『スマホ文化』の雄、楽天が、5Gとの親和性を読み切って、携帯事業を手に入れコンテンツ事業との最大のシナジー効果を出せる経済圏を築き上げることを狙っている、と。

少し前、3月初めに、日経電子版の記事【「5Gは後発優位」携帯参入、楽天・三木谷社長の強気】(本稿末尾に添付)を読んだ時には、私は、「普通にやっては立ち行かないことなんて、三木谷社長には、言われなくても分かっているはず。……という事は、社長には、普通ではない考え、あっと驚くアイデア、秘策があるのではなかろうか?」と、考えていました(その投稿を末尾に添付)。つまり、何かは分からないが、三木谷社長がやるからには、秘策があるはずという、逆発想です。

気付いてみれば、秘策というよりは、ばりばりの王道を行く正攻法でした。そして、驚いたことに、その時の記事を読み返してみると、ちゃんとヒントがあったのです――

・・・・・・世界中の通信業界関係者が集う前で語り始めた三木谷社長。携帯電話事業への参入について「我々の戦略を支持しない投資家もいたが、私は間違っていないと思う。米ベライゾン・コミュニケーションズが米ヤフーを、米AT&Tが米タイムワーナーを獲得した。キャリアとコンテンツ提供者、Eコマース(電子商取引)は一つになるのが常識になりつつある」と語る。

 最初読んだ時には、普通過ぎて見落としてしまったのです。ここに出てくる『キャリアとコンテンツの融合』という事が、実は、『5Gとの親和性でキャリアとコンテンツの融合が進行する』という事だと、今日の記事から気付くことが出来ました。このことは、逆に言うと、楽天の勝算のためには、一つ条件が付くということです。記事にある、三木谷社長の次の言葉にかかっているのです。

「5G」についても「(新規参入者として)選ばれてからしっかりとやっていく。当然、5Gを見越して準備する。逆に我々の優位となるかもしれない。通信事業は今までファーストムーブアドバンテージ(先行有利)といわれていたが、これからはレイトムーブアドバンテージになる。技術の世代が変わるので、過去のものを持っていないほうが強い」と自信を見せた。

 

 『コンテンツとキャリアの融合』、それは、『ネットとリアルの融合』する現象が繰り広げる、もう一つの戦いの場でした。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31841300V10C18A6X11000/

https://comemo.io/entries/5738

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27494420Y8A220C1000000/

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