ドコモ『my daiz』の決定的な点~音声AIデバイスの決定版になるか!?~
この記事『iモードの夢よもう一度、ドコモの新会話型AI』は、私にとってとても衝撃的な内容でした。つい最近、やはり日経電子版で『「OK,Google!」って言えない……』という記事を読んで、AIスピーカーなどの音声入力デバイスに対する日本人の苦手意識について考えたばかりだったのです(その投稿を末尾に添付しておきます)。プラットフォーマーが着々と自身の音声AIをコアとしたエコシステム、音声AIの経済圏を拡大していくなか、COMEMOの場を借りてその時私の出した結論は、次のようなものでした――
日本人が音声UIを敬遠しないで使いこなすようになるには、音声UIのUX(ユーザーエクスペリエンス)をユーザーがイメージできるようなプロモーション、そして、デリケートなユーザーの心情に細やかに寄り添う開発が不可欠となりそうです。
音声AIの重要性や課題についてあれこれ考えていたので、この記事『iモードの夢よもう一度』を読んで直ちに、私は、ドコモの『my daiz(マイデイズ)』に圧倒的な優位性があることに気付きました。
【1】携帯キャリアにとってのサービスプラットフォームの重要性
ドコモ『my daiz』の決定的な点に触れる前に、そもそも、携帯キャリア、ドコモにとってのサービスプラットフォームがどういうものなのか、簡単に整理します。
(第1期)スマホ以前・・・iモード・・・ドコモは、iモードというサービスプラットフォームを通して、パートナー企業の提供するコンテンツとユーザーの接点として機能していた。(第2期)スマホ登場・・・アプリブーム・・・サービスの基盤がアプリそのものに移り、キャリアは接点を失い、プラットフォーマーの影響力が増す。(第3期)スマホ浸透・・・ブーム沈静化・・・ユーザーは本当に必要なアプリに絞り込むようになり、企業がスマホでユーザーと接点を持ちたくてアプリを配布しても、なかなかダウンロードしてもらえない。(第4期)現在・・・AIエージェントサービス『my daiz』・・・『my daiz』はAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)としてオープンになっており、パートナー企業は自身に特化したソフトウェア、サービスを『my daiz』と連携させる事ができる(または、対応機器を開発できる)。
このように、『my daiz』というプラットフォームの登場は、スマホユーザーとの接点を求める企業にとって待ちに待ったかけがえのないものであり、『my daiz』は、外部企業とユーザーとの接点として、音声AIのエコシステムを構築していくことになります。そのような経済圏の存在が、携帯キャリアの事業を強化・拡大していくことは言うまでもありません。
【2】『my daiz』の音声AIデバイスとしての優位性
音声AIのエコシステムの計り知れない重要性も、それを担う音声AIデバイス、つまり音声AIスマホに、競合するAIスピーカーとの違い、優位性がなければ、絵に描いた餅となります。音声AIスマホがAIスピーカーと差別化できる点、決定的な点とは何なのでしょうか?
①スマホにはスクリーン(画面)があるという決定的な点●音声AIスマホは、音声UIとGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)のハイブリッドなインターフェースです。●音声では説明しきれない、音声ではかえって煩雑になる内容、例えばレシピなどは、画面で表示できます。●静かにしなければいけない時、例えば電車の中などでは、画面で操作できます。②スマホは元来『話しかけるもの』であるという決定的な点●機械と話すことに抵抗がある、音声入力に抵抗のある人でも、スマホが相手なら、スマホというのは元来それに向かって話しかけるものですから、音声UIへの敷居は低くなります。③スマホは持ち運べる、外出先でも使えるという決定的な点●使う場所が限定されず、AIスピーカーよりはるかに汎用性があります。どこにいてもサービスを受けられ、サポートしてくれます。●家ではスマホをスタンドに立てて置いておけば良く、敢えてAIスピーカーを導入する必要がありません。④スマホはIoTデバイスとしてユーザーに常に寄り添っているという決定的な点●例えばヘルスケア系のサービスは、AIスピーカーとは親和性がありません。●スマホは常にユーザーに寄り添っているので、AIスピーカーのAPIとは比べものにならない多様なサービスが、音声AIスマホのAPIによって開発されていくでしょう。⑤『my daiz』のAIエージェントサービスはドコモのケータイ回線を持ってないユーザーでも利用できるという決定的な点●言葉通りです。『my daiz』のエコシステムには、無限に拡大していくポテンシャルがあるのです。⑥外部企業にとって携帯キャリア大手のエコシステムにサービスを提供するメリット、という決定的な点●使途の限定されるAIスピーカーより、音声AIスマホ向けのサービスの方がはるかに市場は大きい。●皮肉なことですが、『my daiz』はAPIなので、『my daiz』対応のAIスピーカーを開発することは、論理的に可能。⑦スマホはサービスをパーソナライズ化するのに最適なデバイスである、という決定的な点●スマホはプロフィール、スケジュール、位置情報をはじめとした個人情報のストック場です。データ保護を前提に、パーソナライズ化されたサービスの提供には最適の環境なのです。⑧『my daiz』には先読みエンジンが搭載されているという決定的な点●例えば寝ている間にダイヤが乱れた時、先読みして、必要な時間だけ目覚ましの時間を早めてくれたら?そんな感動的な体験がユーザーと『my daiz』の関係をさらに親密なものにしていきます。
細かくはまだまだありそうですが、この辺にしておきます。私には、音声AIスマホの優位性は明白なものに思えます。
このように『my daiz』の特徴を考えてきて改めて思うのは、『my daiz』のサイトで謳われる「ゆとり・発見・安心」、「いつでも どこでも あなたのそばに」等のキャッチフレーズといい、サービス紹介の動画『“my daiz”がある暮らし』といい、デリケートなユーザーの心情、UXに寄り添うような開発姿勢が読み取れることです。
私は、今回の考察を通して、新たな結論に到達しました。それは――
音声AIと最も親和性のあるデバイスはスマートフォンではなかろうか。故に、音声AIのエコシステムは、最終的には音声AIスマホを主導する携帯キャリアによって構築される可能性がある。携帯キャリアには、一躍、第4次産業革命の時代のプラットフォーマーに躍り出るポテンシャルがある。これを機に、音声AIスマホを軸とした新たなAIのサービスが花開くことが期待される。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30619820X10C18A5000000/
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