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マメコガネの婚活パーティー

 野外で生き物を観察していると、一つの種が一カ所にたくさん集まっている場面によく遭遇する。最近私が目撃した例では、森の明るく開けた場所、上空10メートルほどの所をアゲハチョウ(ナミアゲハ)が7、8頭で絡み合うように群れ飛んでいた。あっという間の出来事で、また、何もない大空に向けて焦点を合わせる暇もなく、撮影はかなわなかった。マメコガネには申し訳ないが、撮影できていれば文句なしで本稿トップを飾っていたことだろう。参考までにもう一枚だけ、ガクアジサイの花の上に集まるヨツスジハナカミキリの写真をあげておく。

ヨツスジハナカミキリ


 冒頭の写真を見ても分かる通り、生き物が特定の一カ所に集まる大きな理由の一つは、種の存続のためのパートナー探し、番い(つがい)となることにある。少し前だが話題になった例に、北海道知床の海に集まるシャチの大群がある。そこでは、普段一緒に暮らしていない二つの群れが入り乱れ、シャチたちは、横一直線に並ぶ。そうして、ぶつかりそうなほど近付いたり、腹部をこすり合わせたりしては、いったん列を崩して列の中の並び順を変え、また横一直線に並び直して別の相手と同じことを繰り返す。なぜ横一直線かと言えば、シャチの目は頭の横についているからだ。あくまで推測の域を出ないが、婚活パーティーで相手の品定めをしているように見えないだろうか。

 さて、この事を、いつものように人間界の事どもに置き換えて考えてみると、今、人間界では婚姻数の減少、成婚率(未婚者数に対する婚姻数の比率)の減少、そして少子化が進行している。もちろん様々な要因が絡み合い、そもそもの非婚希望者もあろう。だが、結婚願望はあってもなかなか出会いの機会がないというケースも少なからずあるはずだ。
 広く生物界で婚活パーティーのようなものが見られるのは、何と言っても効率が良いからに違いなく、そこに婚活パーティーの意義がある。婚活はセンシティブな課題であり、その枠組み、スキーム、主催母体、方法論には議論が必要だが一解決策には違いない。
 元来、日本における所謂婚活パーティーの起源は古く、記紀万葉の時代の『歌垣』にまでさかのぼる。『歌垣』という装置、そしてその変遷は参考になり、研究に値するのではないか。


 昆虫の世界を見ていると、人間の社会が見えてくる。まさに、昆虫すごいぜ……おっと、これは某人気テレビ番組のパクリだ……「昆虫アッパレ!」とでも言っておこうか。
【以上、『随想自然』第9話】

(インスタグラムhttps://www.instagram.com/angelwingsessay2015/で、主に東京都心で見れる自然の写真を紹介しています。)

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