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かけっこ練習ノート - スポーツマンシップを子どもと考える

6月24日(木)

みなさん、スポーツマンシップとは何でしょうか?
今日はそんな問いから始めました。
「ルールを守る」
「正々堂々」
「助け合う」
「スポーツをするときに守ること」
などなど、いろいろな意見。
具体的な思い出話を交えて説明してくれた子もいました。

日本では教えられないスポーツマンシップ

日本では、スポーツマンシップについてきちんと学ぶ機会が欧米と比べて少ないそうです。
欧米では学校の授業できちんと教えるのに、日本ではスポーツをする中で機会があれば間接的に教える程度。

日本スポーツ協会では、そんな状況を憂いて地域のスポーツ指導者が子ども達にスポーツマンシップを教えることを推奨しています。
そこで今日はスポーツマンシップについて理解を深めるために、みんなと議論をしました。

まずは心理的安全性の確保

最初に、こんなメッセージを伝えました。
「これから僕が色々話すけど、質問や意見があれば、いつでも言ってください。
大人はよく間違えます。僕もよく間違えます。
だから、変だと思ったらみんなの意見を聞いて、議論してみましょう。」

スポーツマンシップは勝つことに優先されるか

そして意見の対立はさっそくありました。

「スポーツマンシップは、勝ち負けよりも、強くなることよりも、大切である」
という僕の意見に対して、
「勝つことの方が大事だよ」
「僕のチームでは、勝つことが一番大事だって言ってるよ」
という意見。
最初から核心の論点です。

僕は、スポーツマンシップはスポーツだけでなく、人が社会で生きる上でとても大切な考えだと思っています。
もっと言えば、子どもがスポーツをする一番の理由はスポーツマンシップを通して心が成長することだと思っています。
でも、これは僕の意見であり、みんなへ押し付けるべきものではありません。

今日のスポーツマンシップの話を聞いた後、ぜひ周りの大人や友達と話してみてください。
そして、できれば自分がどう思うのかも伝えてみてください。
勝つことと、スポーツマンシップのどちらが優先されるのか。
とても価値のある議論だと思います。

場面に応じたスポーツマンシップ

次にいろいろな場面を想像して、その時々にどのような態度がスポーツマンシップとして適切なのか、みんなに意見を聞いてみました。
想定したのは以下の6つの場面です。
1) ゲーム終盤に負けている
2) ゲームに負けてしまった
3) ゲームに勝った
4) ゲーム中、仲間が失敗した
5) ゲーム中、自分が失敗した
6) 審判の判定に納得がいかない

ここで言う「ゲーム」は試合や運動遊びでもいいですし、ボードゲームやテレビゲームでもいいと思います。

さて、この議論を始めてみると予想以上に異論反論がたくさん出ました。
こういう話し合いの時に反対意見を言ってくれる子は本当に大切だと思います。
みんなが同じ意見では、理解は深まりません。
自分とは異なる意見と出会って初めて、自分の意見をより深く考えるきっかけにもなります。
ここでは、意見が対立した4つの態度を紹介します。

ゲームに負けてしまった場面で犯人さがしをする


これをOKとする意見は、
「犯罪がおきたら犯人をさがすから」というものでした。
犯罪が起きたら犯人を捜して罪を償わせる、確かにそうです。
でも、犯罪とスポーツでの負けは明確に違います。
犯罪は人権を侵害しますので許されません。
でも、スポーツでの負けは決して罪ではありません。
罪と同じような言葉で「責任」があります。
負けたり失敗したときに責任を感じることはあると思いますが、特定の人に責任を負わせるのは間違っていると思います。
過去の責任を考えていてもマイナスにしかなりません。
負けた原因を分析して、それぞれが今後どうすべきなのかを前向きに考える、それが一番大切です。
それを考えると果たして「犯人さがし」はすべきでしょうか。

ゲームに負けてしまった場面でいいわけをする


この態度に対して、場合によっては必要では?という意見がありました。
「いいわけが良くないのはわかる。でも例えば本当に足が痛くて負けたのなら、それは正直に言うべきじゃない?」

確かにその通りだと思います。
親やコーチ、ドクターには、我慢せずに体の症状は報告すべきです。
ポイントは、その言葉の目的は何かという事かと思います。
「足が痛かった」という言葉の目的が「だから負けた」と伝えたいとすれば、それは言い訳になると思います。

もう一つ、自分の体調管理やケガ、練習の状態も含めて、自分やチームの実力だということを自覚することも大切です。
「今日は足が痛かったから実力が出せなかった。万全だったら勝てたのに。」という言葉よりも、「次からはしっかりコンディションを整えて、足を痛めないようにするね」といった前向きな言葉や態度がいいかと思います。

ゲーム中に仲間が失敗した場面で失敗した人にアドバイスする


実は、一番意見の分かれた態度がこれでした。
反対派の意見は、
「自分だったら、失敗したときにアドバイスされたら嫌な気になるから」
確かに気持ちはわかります。

でも、その後に「ゲーム中に自分が失敗した」場面で「アドバイスを素直にきく」という態度について話をすると、すんなりとみんな「これはスポーツマンシップだ」と。
それなら、失敗した人にアドバイスすることもいいことなんじゃない?と納得しました。
このことで、失敗した側とその仲間、どちらか一方ではなく両方がスポーツマンシップをもっていることが大切なのだとわかりました。

ゲーム中に仲間が失敗した場面で、なんで~~しなかったんだ!と叱る


これは、よくない!ということではみんな意見が一致していました。
この𠮟り方は、変えられない過去に対して優位な立場の人間が、相手のためではなく自己満足のために発する言葉です。
「なんで~~しなかった?」と理由を聞かれても、本人は失敗したことは自覚しているので、それに答えること自体が自分を貶めていてとても辛いのです。
そうではなく、「次はどうすればいいか一緒に考えようか」とか、「次はこうしてみようか」と前向きな声がけがいいと思います。

でも、みんなが口々に言うのは、そうは言っても学校の先生はそうやって叱るよ。
チームの大人はそうやって叱る。
というものでした。
正直、僕もその言葉をつい発してしまい反省することがよくあります。
スポーツマンシップとは違う論点かもしれませんが、変えられない過去の失敗をいくら責めても、相手の不満を招き、やる気を削ぎ、委縮させる結果にしかならないと思うので気を付けたいと思います。


審判の判定に納得がいかない場面で審判の悪口をいう


これも意見が分かれました。
その理由は、「だって大人が悪口をいってるから」
これには面喰らいました。
子どもは大人を見て育つ。
ルールに則って審判と議論するのはいいですが、悪口は絶対にだめです。

Be a Good Loser

最後に、「Good Loser (よき敗者)」という言葉について話をしました。
スポーツに関わることは、負けを味わうことです。
今日話し合った場面も、6つのうち4つが負けたときや失敗した場面でした。
負けをどう捉えるかが本当に大切であり、負けたときの態度こそが人間の心の成長をあらわします。
川淵三郎も全てのアスリートにBe a Good Loser (よき敗者になれ)と言っています。
Good Loserは、周りの人に貢献し、自分自身も成長し、次のいい結果につながると思います。

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