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スマホを持たずに、電車に乗って旅をした

休日の昼間。スマホも持たずに出かけようと思った。ふいに思いついた。

最近は無計画であることが心地よく、休日は何も予定を入れない。ぼーっとしながら、今やりたいと思うことが浮き上がってくるのを待つ。趣味の登山か、音楽を作るか、読書をするか、ゲームをするか。この日はスマホも持たずに出かけるという案が浮き上がってきた。

愛用しているサコッシュに小さい財布と読みたい本、メモ帳とペンを入れて、駅に向かった。遠出するつもりはなかったが、降りたことのない駅に降りて散歩しようと思った。

いつもノイズキャンセリングのイヤホンをして電車に乗るので、今日は周囲の音がガヤガヤとうるさい。歳を重ねるごとに繊細になっている気がして、視覚と聴覚に強い刺激が入る人混みは、かなり苦手になってしまったなと感じる。

3駅ほど進んだところで降りてみた。建物と自然が調和している街のようだ。

公園がある方向に行きたかったが地図がない。全然現れてくれない。あっという間に住宅街に迷い込んでしまった。

こっちの方角な気がするんだよなぁと想像しながら、路地の曲がり角を次々と選んで進む。

迷っていると電車が走る線路を見つけた。ガタンガタンとホームから出発する音が聞こえてきたので、立ち止まって見ていると、神戸方面行きの電車だった。つまり電車が進んだ方角は西。迷子になっていたが、電車の進行方向で方角がわかるとはおもしろい。

また山のある方向でも東西南北はわかる。近くの山は大体登ったことがあるので、地元がどういう地形になっているか理解している。視界が開ける所に出て、山を見る。山の形、山同士の連なりから方角がわかる。あっちは北だ。

そうやって、Google mapを見ずに公園にたどり着いた。

桜の名所として知られる公園だったが、もう緑になっていた。休日に自然を求めて、たくさんの人が散歩していた。公園内には川が流れていて、橋の上でその風景をデッサンしている3人組がいる。最近はアートへの関心が高いので、すごく話しかけたくなったが、やめておいた。

良い雰囲気を写真におさめようとしても、スマホもカメラも持っていなかった。まあいいか、と思って歩き進める。

芝で傾斜がついた場所があったので、そこでゆっくりすることにした。一冊だけ図書館で借りた本を持ってきていたので、読み進める。

意識と無意識に関する本。人は1日で半分以上ぼんやりしているが、そのぼんやりは決して無駄ではないんだよという本。急ぎ足で頭をフル回転させるようとする現代人にピッタリの本だ。

警戒心の少ない鳩が半径2mに近づいてきて、こちらがじっと座っていると接近してくるものだなと感じた。鳩はのらりくらりと歩いている。

そんなこんなで時間が経ち、そろそろ帰ろうかという気分になった。スマホがないので何時かはわからない。13時に出発してだいたい15時半ぐらいだろう。

土地勘をつけたので、帰りは迷わず駅に戻れた。良い1日だった。


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