10年ぶりの『ポケットにファンタジー』を聞いて感じたこと
2019年11月15日、ついに世界待望の最新作、『ポケットモンスター ソード・シールド』が発売された。
ぼくとポケットモンスター、ちぢめてポケモンとの付き合いは長い。
初めての出会いは、ちょうどぼくが幼稚園の年長だったころ、近所の駄菓子屋に置いてあったカードダスである。
そのときのポケモンのイメージは、かっこよくて、かわいくて、どこか怖くて、不気味で、でも惹きつけられる。そんな印象を持っていた。
そして小学一年生になったころ、テレビ東京でアニメ『ポケットモンスター』の放送が始まり、当時のぼくは毎週夢中になって観ていた。「バイバイバタフリー」は今でも色あせない神回だし、ポリゴンショックが起きたときも、気絶はしなかったけど大騒ぎになったことをよく覚えている。
そんななかでも、ぼくにとってとても印象的な歌がある。それは当時アニメのエンディング曲に使われていた『ポケットにファンタジー』という曲だ。
歌を歌うのは歌手である小林幸子さんと、当時子役であった井端珠里さん。
歌の内容は、端的にいえば、大人役である小林幸子さんが、子供の井端さんに夢を尋ね、そのあと自分の夢を尋ねるというものだ。
つい先日、小林幸子さんがニコニコ動画に21年ぶりに当時の曲を初音ミクといっしょに歌ったものがアップされたので、ここに紹介したい。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm35947728
ぼくがこの曲を聞いたときは7歳だった。だから、当時は井端さんが歌う歌詞に共感しながら聞いていた。大人ってよくわからなかったし、なんで小林幸子さんがそんな風に歌うのか分からなかった。
でも、この曲を11年後の18歳のときに聞く機会があった。ちょうど再放送で当時のアニメのエンディングが流れたときだと思う。
その時のぼくは、とても懐かしいという感じで曲を聴いていたのと同時に、ある衝撃が自分のなかに走ったことを今でも強く覚えている。
そう、自分が感情移入する対象が変化していたのだ。
昔は井端さんの歌う歌詞に共感していたのに、いつのまにか自分が小林幸子さんの歌う歌詞に共感しているのである。
当時、憂鬱な高校生活を送っていた自分にとって、これはとてもショックなことだった。そうか、ぼくは子どもじゃなくなってしまったんだ。そう思うととても寂しい気持ちに襲われ、ものすごい喪失感に陥ってしまった。こんな大人になりたくなかった。こんな風に感じる成長をしたくなかった。それ以降この曲は、ぼくにとって良くも悪くも印象的な曲になった。
たぶん、どこかで避けていたところもあっただろう。
以来その曲を聞くことはなかったし、ポケモンからもだんだん距離が遠のいていった。
そんななか、ひさしぶりにこの曲を聞いたのである。最初は、何の曲だか思い出せなかった。小林幸子さんがポケモンで歌った歌なんて、『風といっしょに』以外、なにかあっただろうか?という感じになっていた。
それが、本編を聞いて思い出した。はっきりと、鮮明に。7歳の時に聞いていた感覚と、18歳の時に聞いた感覚とともに。そして、今度は28歳になった自分がその歌詞を、メロディーを聞いた。
共感する部分は18歳のときと変わらない。小林幸子さんのほうである。ただ、感覚は18歳のときと違っていた。当時感じたような寂しさや喪失感はなかった。ただ懐かしくていとおしい気持ちだけが、ぼくの中にあった。
その感覚は、ぼくにとってちょっと意外だった。28歳になった自分は相変わらず大したことができていないし、色んな人にお世話になってばかりである。境遇もそんなに恵まれたものではないだろうに、不思議と後悔はないことに気づいたのだ。自分の今の状況に納得しているし、ある種満足している部分もあるということなのだろう。そういう発見ができたことに、この曲をいまこのタイミングで改めて聞けて感謝している。改めて自分を知れた気がした。
いま、ぼくはポケットモンスター・ソードをプレイしている。前作をプレイしていないので、3年ぶりになるだろうか。まだ始めたばかりで、ジムバッジもひとつも持っていない。でも、プレイしていてとても楽しい。やっぱりぼくはポケモンが好きだ。たぶんそれはこれからも変わらないだろう。その気持ちを、当時の思い出とともに思い出させてくれたこの曲も、ぼくはやっぱり好きである。これからもときどき、思い出したときにまた聞きたいと思う。
ちなみに、ぼくがもう一度子どもに戻れたら、当時一緒に遊んでた友だちとまた遊びたい。みんなとドッジボールして、かくれんぼして、家に帰ったらスマブラをやっていた、あの頃に戻ってみたいなあ。