見出し画像

「vol.5 職人さん100人数珠つなぎ」畠 春斎(Shunsai Hata)さん/美の釜師/高岡銅器(富山県高岡市において作られる金属工芸品)

 高岡鋳物発祥の地、金屋町でお釜を作る釜師、畠春斎さん。
 畠さんのお茶釜はニューヨークにあるメトロポリタン美術館に所蔵されるそうです!  
 私は畠さんのお釜を拝見している間、「美しい!」という言葉が止まりませんでした。       

 畠さんがつくり出す品格ある美しいお釜は、研ぎ澄まされた感性を持ち、美を追求している、畠さん自身を象徴しています。
 畠さんは現在3代目としてお祖父様の代から続く茶道具用のお釜をはじめ、商品のデザインプロデュースも手がけるなど活躍の場を広げられています。お祖父様、お父様と受け継いできた特徴的なところを伺うと、お釜の表面の肌合い(テクスチャー)が布肌みたいに柔らかいことだそうです。それは、まるで人当たりが柔らかく穏やかな畠さんそのものだと思いました。

fb掲載 hatasan&me ironkettle

 1:大切にしていること//使って気持ちの良いもの、そして直してでも使いたいと思うものを作る//

作っているものは美術品というよりは使うためのものなので、持った時に軽い、日常空間においていて浮かない、心地良さがあるものを作るということを大切にしています。」と丁寧にお話くださる畠さん。
 「用の美」を体現した畠さんのお釜は持ってみると思ったよりも軽いと感じました。お湯を沸かす日常の道具として、使う人ができるだけ負担のないようにという畠さんの優しい心遣いが技として反映されています。
  加えて、「100年、200年、長く使うものとしてお渡しているから、お売りした以上は長く大切に使って頂きたいし、きちんとお直しする技術を持っています。そして、お客様が直してでも使い続けたいと思うものを作っています。」まさに、サステナブルなお釜です。
伝統工芸が何百年も、何千年も受け継いでこられたのは、畠さんのように逸品を作りながら、修理の技術も持ち合わせた職人と、名品を大切に修理しながら長く使い続けるオーナーという存在が日本に文化として根付いているからなのだと感じました。

fb掲載 iron kettle

2:今後やってみたいこと //自分の作りたい世界を表現した空間づくり//

 「お客様に自分のものづくりに対する想いや世界観を伝えるためには、自分が作った茶釜と表現したい世界を構成する理想の茶道具でしつらえて、生活空間に根付いた形で道具を見せられると良いと思っています。」 今作りたい空間についてお伺いすると、「現代のしつらえでありながら、空間に入った瞬間に緊張感のある佇まいを感じる演出をしたいですね。なぜなら、日常生活において、道具が変わればこんなに空間を変えられるのだということを知ってもらいたいからです。」と。
 畠さんのおっしゃる通り、普段使う器を思い入れのある器にすると、気分が良く、また大切に扱おうという気持ちになります。
 「日々使う道具だからこそ、使って心地の良いものを使って欲しい。そのために心が洗われるものづくりを追求しています。」そう話す畠さんがプロデュースする空間はどんな世界なのだろう!見てみたい気持ちでいっぱいになりました。


//畠 春斎さんのホームページ//

いただいたサポートは「職人数珠つなぎ」の取材旅費に使わせていただきます。