十月四日・十月五日@ウィーン

十月四日

特に予定もないが、家にいるとダラダラしてしまうので大学に行く。昨日美容院に行って調整程度に髪の毛を切ってもらい、気分が良い。美容師さんが使っていた豚毛の硬いブラシがマッサージによく、とても欲しかったのでおいくらするのか聞いたら、120ユーロというので流石に考えることにした。日本円にして17000円ほどである。しかし一度買えば一生使えますよとも言われ、今悩み中(博士号が取れたら買いたい)。

お昼前に大学に着く。緊急に仕事探しをしているわけでもないしすべきことが他にあるのだが、気になる求人があると見てしまう(やはり学振落ちた不安が行動にでているのだろう)。その中でポスドク以外の科学関連の仕事を見てみると科学雑誌の編集者が出てきて、そういえば考えたことなかったけど、もしかしたら一番今までしてきた経験が活かせる仕事かも?と思い始めてきた。

科学雑誌の編集者というと、査読のやりとりのサポートをしたり雑誌の様式に合うように原稿をチェックしたりする人ぐらいとしか思ってなかったのだが、当たり前だが投稿されてくる論文がふさわしいかどうかを判断するだけでなく、特集号を組んだりなど最新の動向を掴んで科学者に伝える仕事でもあるわけだから、昔やっていたような研究者のサポートができると思う(しかももっと科学に関わった形で)。

色々日記に愚痴愚痴書いてはいるものの、研究職を嫌だと思ったことはなく、故にPhDの後にポスドクをするのかなぁという半分ぐらいの気持ちでいて今もそうなのだが、よくよくポスドクやその先のキャリアを考えると、大学や研究所以外にも科学を支える仕事ってたくさんあるよなぁと思い始める。結局自分がしたいのは研究というよりは科学に関わる仕事なのかなと思う。

昔イギリスの修士に留学する時にお世話になった先輩から、「大学のキャリアを進めていくってことは将来教授になるってことやけど想像できる?」って言われたのを思い出した。その当時はまだ修士すら行ってなくて、微塵も想像できなかったが、今博士を終わろうとしているキャリアの重要な分岐点において、改めてこの質問を考える。昔よりもっと具体的に大学とか研究のことを知って、今私が持っている答えは、もう少し研究をしてみたいなぁという気持ちと、助教以上のポジションは絶対につかないということである。大学の先生の仕事は素晴らしいと思うが、自分は授業や学生の指導にあまり興味がないところが一番の理由かなと思う。

そもそもこんな偉そうな考えを言ったって、希望通りに仕事がどうにかなるかどうかはわからないのだが、少なくともどこに応募するかは選ぶことができる。というわけで半分ポスドク、半分それ以外の科学関連の仕事かなぁ、と考えているともう一日が終わっているのである。

十月五日

昨日シナモンロールを買ったので、朝ごはんに食べる。シナモンロールはドイツ語では「シナモンかたつむり(Zimt Schnecke / Fahéjas csiga)」という名前で可愛い。ブダペストにお気に入りのシナモンロールの店があって、めちゃくちゃ食べに行きたい。さすがに何もやらなかったので、今日はちょっと働く気になる。

今日は朝一でラボミーティング。先輩のグラント申請のアイデアを聞く。自分が発表した時もそうだけど、アイデア出しのときってとても楽しいなぁと思う。お昼は昨日何もしなかったからさすがに何かしようと思うが、一つ応募したい求人を見つけたので、非アカデミア用のCVを途中まで作る。その後、今度参加するセルビアの学会のポスターのビジュアル部分だけ作り、明日文字を埋めることにする。

仕事のことばっかり考えていたが、この博士課程の間に色々やりたいことが増えた。元々私はおそらくキャリア志向(?)の女性というか、職歴は全然ないのだが、基本的に進路を選ぶ基準は自分が面白いと思うかどうか、成長できそうかどうかというそれだけであり、給料とか場所とかは二の次だった。飽き性だから定住することも苦手だったし、それ故にこの修士から博士の間に国を跨いで生活してきたのも、すごく刺激的で良かったと思う。

年のせいもあるのか、今はもっと定住してやってみたいことが増えた。恋人と住んだり、猫飼ったり、大きい植物を育てたり、あわよくばカフェとか雑貨屋さんとかをいつかは開いてみたいと夢見るのである。商売上手じゃないと思うので、あまりそこらへんでお金が稼げるとは思わないのだが、いつかどこかに定住して安定した仕事が持てたら、そういうチャレンジもしてみたいなぁと夢想して、SNSに書いてみたりした。