十月中旬@ダラム

イギリスに来てからもう二週間が経とうとしている。何もやっていないような、それなりにやっているような、変な気分だがあと残り八週間ぐらいしかない。少し焦り始めている気がする。バタバタしているのとなんだかんだ生活リズムが掴めていなくて全然ブログを書こうということすら思いつかないのでまた時間が空いてしまった。

授業:民族音楽学の実践と理論

滞在研究に来ているだけなので授業は取らなくてもいいのだが、ホスト先の先生がやっている修士の授業に参加してみる?と言われたので、せっかくなのでお邪魔させてもらうことにした。Ethnomusicology in Practice and Theoryというクラスである。学部生の時の教養の授業を除いたらほとんど心理学に関わる講義(統計、プログラミング含む)しか出たことがないので、久しぶりに全く方法論の違う分野を学ぶことできて純粋に面白い。毎回楽しみである(適当にしか本を読んでいないのだが、その適当がうまくできてるのかもしれない)。

研究:インタビュー相手の募集、インタビューの内容など

音楽の先生と生徒に対する音楽(特に表現技法)の学習についてのインタビューが研究課題なので、インタビューとできれば実際のレッスンの録画の二種類のデータをとって帰るのがこの滞在研究の最低条件だと思う。過去の授業で質問紙調査やインタビューなど質的研究の方法論を学んだことはあるが、自分で実際にやったことはないのでびっくりするほど知らないことが多い。

色々ホストの先生に聞いたり、なんとなく空気を読もうとしているのだが、インタビューやフィールドワークの性質上、「なるようにしかならない」みたいな雰囲気を感じ、実験みたいにできる限り準備して最善を尽くすということができない(やりにくい)。興味を示してくれた音楽の先生方に送る返信一つとっても、「これは言わないとダメ」「これは言い過ぎ」など思ってもないところで注意されることがあり、面白いといえば面白いが、なんだか自分がすごくコミュ障な気がしてくる(実際そうなんだろうけど)。

実験というのは誰がやっても同じ結果が出るのが理想なので、心理学の実験であっても実験参加者に対してはなるべく同じ実験の説明をするように心がけると思うのだが、インタビューやフィールドワークの場合はそうもいかない。人間と人間とのやりとりなので、当たり前だが通常のコミュニケーションのように相手の発話によってこちらがいうことも変わるのが自然なのであって、誰に対しても同じように無機質に返答するわけにはいかない。

また科学者コミュニティーにいるからかアカデミアにいるからか個人の性質かわからないが、なるべく要点をつめてコミュニケーションの無駄を省こうとしているのも、はっきりとは言われていないが高圧的に見られるようで、なるべく情報は小出しにするように言われる。うっかり失礼なことでも言ってしまわないかどうか、いつも以上に気になり心配になる。

大学一般

三ヶ月程度の滞在研究なので正規の学生ではないのだが、ダラム大学で研究を行うには正式な入学手続きが必要であり、なんだかんだ事務仕事が多くて一週間ぐらい潰れる。ただの滞在研究なのにフルタイムの学生と同じ手続きを取らねばならず面倒くさいと思っていたが、一度終えるとちゃんと正式な学生証を発行してくれ(しかも二年ぐらい有効)、それによって図書館をはじめとした勉強場所へのアクセスはもちろん、街のバスの格安学割まで使えて、逆に短い期間でも正式な学生として認めてもらえてありがたいなと思う。

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後はウィーンでやっている実験が順調にテストが終わり、少しほっとしている。新しいラボマネージャーが来てすぐの実験で、自分の準備不足で実験を始める頃に一緒にいれないのが申し訳なく心配でもあったのだが、かなり優秀な学生さんで教えたことはすぐに理解するし、テストも難なく終えてくれてかなり助かっている。私の博士はラボにいるマネージャーたちの力がなければ不可能だったので、もし博士号が取れることになったらどうにかして盛大にお礼をしたい(が何をすればいいのか今のところ思いつかない)。