コロナで自宅研究@ハンガリー

ハンガリーのコロナウィルス対策

私の住んでるハンガリーでは本日三月十四日時点で二十五人の感染者が発見されて、三日前の水曜日に政府から非常事態宣言があり、人々の行動が制限されている。宣言が出た時点では、確か十三人の感染者が見つかっていた程度だと思う。

具体的な宣言の内容は以下の通り(ハンガリーの日本大使館からのメールより転載)。

1. イタリア,中国,韓国及びイランからのハンガリー国籍を保有しない者の入国を禁止する(鉄道,バス,航空機のいずれについても)。

2. イタリア,中国,韓国及びイランから入国する,ハンガリー国籍保有者は,入国時に検査を受け,新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合には,指定の隔離施設に収容される。検査において,感染が疑われなかった場合は,自宅もしくは検疫当局が指定した場所で経過観察する。

3. ハンガリーとスロベニア及びオーストリア国境における検問を再開する。

4. 参加者が100人を超える屋内イベント,及び同じく500人を超える屋外イベントの開催を禁止する。

5. 高等教育機関(大学等)への学生の来校を禁止する。

6. 学校の国外への旅行を禁止する。既に計画済みのものでも中止とする。

7. ハンガリー国民の保護と健康,国防,治安維持,及び行政機関の機能確保のため,医療従事者,ハンガリー兵士,警察官,及び政府職員等は所掌大臣の許可無しでは,国外渡航できない。各省庁職員の国外派遣に関しては,大臣及び首相の許可が必要となる。

8. ハンガリー国籍を有しない者が,検疫・隔離措置に違反する場合は,国外退去・追放とする。

私は大学院生なので、上記で言うと高等教育機関に通っているため、宣言の翌日の木曜日から大学のオフィス及び実験室全てに入れない状態である。私の大学に限って言うと四月十五日までこの状態が続くことが決まっているので、自宅で研究するように言われている。

まだ感染者数だけみるとヨーロッパの中でも少ない方だが、おそらくハンガリーはイタリアのような状態になってしまうと感染者を受け入れて治療することができないので、早めの対策を打っているように思う。

イラン人がコロナを持ってきたというような報道をされているので(最初の感染者が最近テヘランから帰国したイラン人留学生だったため)、これ見よがしに移民の規制も始めたようである(これはハンガリーだけでなくギリシャも同じ)。

生活のこと

私は今三人のカザフスタン女子と四人で住んでいるが、基本的に別々の生活をしているので、食事をはじめとした身の回りの物は自分で用意しないといけないと状況。とりあえず水はコツコツ前から買い溜めているのと、トイレットペーパー、ティッシュ、ハンドソープは一ヶ月以上は十分持ち堪えるぐらい買い込んである。日本ではすぐにトイレットペーパーがなくなったそうだが、ハンガリーはまだ街から消え失せたと言うレベルではない(とはいえ普段よりは品薄である)。

食事も保存食になりうるようなもの(米、豆、缶詰など)をある程度買っておいて、肉や野菜はその都度スーパーか市場に買いに行くようにしている。街は普通に機能しているので、当面食べ物に困ることはなさそうだが、万一いきなり全てが閉まるという最悪の際にも何か食べれる物を一応ストックしておく。

政府からのお達しで大学に来るなと言うだけでなく、同僚からの情報共有でいかに人々との接触がウイルスを撒き散らすかと言うことがたくさん回ってくるので、簡単には知り合いに会えない状態である。今までずっと一人で住んでいるので大して変わりないが、それでも大学で毎日誰かとお喋りしていた時間がなくなるのは鬱々とする。

研究のこと

私の研究状況で言うと、今は実験もしていないし、論文を書いている&プログラミングをしている状態だったので、一ヶ月ぐらいは大学に行けなくてもやることがあるので幸い大丈夫そうである。と言うか少し行き詰まっていたので、むしろこの状況をうまく生かして再び自分の研究方針と生活リズムを見直すきっかけにしても良いかもしれない。

基本的にはパソコンしか使うことがないのと、最低限の本はなんとか取りに行くことができたので、これがあればまぁ一ヶ月なんてすぐだなぁという気がする。ただ一ヶ月後に全て元通りに戻る保証が一向にないのが難点だが。

先生とのミーティングは基本的にいつも通りスカイプで行うことにする。先生は普段ウィーンに住んでいるので、ミーティングの半分はいつもスカイプだ(残り半分はブダペストにくるので対面)。次のミーティングは木曜日なので、それまでに話すことを少し考えておく。

1. 4/15までの計画
- 引き続き論文執筆
- チャプター執筆(一年間の成果をまとめた5000wordsほどのレポート(論文と同じ体裁)を年度末に提出しなければならない)
- 次の実験の刺激作成
- 次の実験のプログラム作成

2. オーストリアビザの情報を共有、ビザ申請の時期について相談(私の大学は来年からウィーンにお引っ越しする)。

3. 雑談(生活について)

1の計画を立てるところはいつも問題ないのだが、それぞれをさらに分解して実行することに難があり、いつまでも手がつかないのだがこれを家にいる間にどうにか向き合って解決したい。もしかしたら今までオフィスに行くことで何か仕事をした気になっていたのかもしれない。

2は来年度から無事にオーストリアに移動するための話だが、コロナのこともあってますますどうなるのか不明になってきたが、一応自分の知ってることと先生の知ってることをすり合わせしておく。

3はいつも大体自然発生的に起こるのだが、こういうときに自分の生活のこととか考えてることとかを話しておくと、気持ちが楽になる。

これからの一ヶ月の暮らし

兎にも角にも人と接触するのがよくないようなので、人と会うことはできるだけ避け、喋る必要がある人とはスカイプかテキストメッセージのやりとりになる模様。授業も全てオンライン上である。

私自身はインフルにもかかったことがないぐらい(多分)健康体なので、コロナにかかった時の病状を心配していると言うよりかは、保菌者として撒き散らす可能性万が一発症して隔離病棟に入れられた時の外国人への仕打ちを考えると、恐ろしいのでできるだけ疑わしい行動(つまり人にいるところに行くこと)は控えようと思っている。

これによって出来なくなったのが毎日通っていたジムで、別にジム側から来るなとは言われていないが行かない方がいいだろう。一ヶ月無制限パスの最後一週間が無駄になるが止むを得ない。万が一発症した場合、『感染者は大学閉鎖にもかかわらずジムに通っていたCEU(私の大学)のアジア人留学生』なんてことがニュースになったら、普通のハンガリー人が発症する数百倍の悪い印象を与えるのが目に見える。

食品の買い出しはしょうがないとして、あと人がいるとこに行くとすればカフェ通いなのだが、これをやめろと言われるのは結構辛い気がする。先ほども書いた保菌者として撒き散らす可能性を考えると行かない方がいいのだが、朝一の空いてるカフェならいいのかなぁという甘えた気持ちが正直あるのは否めない。自分の部屋にはフィルターコーヒーを淹れれるようにしているので、コーヒーはいつでも飲めるのだが。要検討と言うところだろうか。

あとは本当に一歩も家から出ないのは病気になると思うので、朝起きたら広い公園でランニングしている。これは許して欲しい(誰にも二メートル以内に近づかないし)。室内ではヨガと筋トレ。

一日のほとんどを家に過ごすことになってなかなかストレスが溜まるので、最近アロマキャンドルを買った。これが思った以上に効果的で、この匂いのおかげでかなり心が落ち着くようになった。最近買ったのはhonestというブランドの物で、これから長丁場になりそうなのでもし機会があれば買い足しに行きたいと思う。

アジア人差別?

アジア人と言っても広いのだが、東アジア人として今のところ個人的には差別は受けていない。が、そもそもコロナの情報がで始めた時に中国人の団体の旅行者とかは嫌な目で見られていたような気はする。

事が深刻化してきたのはイタリアの感染拡大後で、ハンガリーではイラン人が最初に発症したので、中東アジア人の人は特に嫌がられたりするのではないかと推測する。コロナ保菌者かもしれないという恐怖もあるのだろうが、ハンガリーでは元々アジア人(特に中東、インド)に対する印象がよくないのが顕著に出始めたと言う部分もあると思う。

幸い私は大家さんも協力的で、大学の人をはじめとして、おなじみの店(市場とかカフェ)では普通に扱ってもらえるので何不自由はないが、非常宣言が出てから公共交通機関に乗っているとあからさまに嫌な顔をする人に会ったこともあるので、あまり乗らない方がいいんだろうと思って今は使っていない(というか使う必要がない)。

世間が不安定に包まれると、差別側も被差別側も色々意見があってますます平和な暮らしは遠いなと思ってしまうが、双方の意見もわかるので難しいなと感じる。コロナだけで言うとアジア人よりイタリアを含む周辺国の人々の方がよっぽど危ないと思うのだが、アジア人と比べると一見の見分けがつき辛いのと、「アジア人」というラベリング付けが容易な事があって、どうしてもアジア人の方がメディアの報道などでは悪く書かれている事が多いように思う。私はどんだけ周りがフレンドリーでも、自分は外国人であるという意識を持って行動するように気をつけている。

日本には帰れるのか

非常宣言があってハンガリー国内のヨーロッパ市民はパニックになり、続々と自分の国に帰っている模様。私の大学からはできるだけハンガリーにいて外に出るなと言われているが(一回出るとすぐ戻れるか保証がないので)、安全の方が大切なので帰った人は多いと見ている。非ヨーロッパ市民でも、私の知り合い(アメリカ人など)はハンガリー医療への不安からウィーンに移ろうか考えている人もいた。

今のところハンガリーから日本、日本からハンガリーへの入国に制限はないと思うが、そのうちアメリカみたいに日本もヨーロッパからの渡航者禁止になってもおかしくないなとは思う。となると帰るのは今のうちなのだが、今日本に帰るのが得策なのかはよくわからない。医療だけで見れば日本の方が圧倒的に良いが(質はもちろん言語もわかるし)、感染者の数だけ見ると日本の方が三十倍以上居て、先ほどの記事から憶測するにつまり、実際にはその数倍〜数百倍の人々が実は感染しているかと考えると、日本に帰ったら感染する確率が上がるような気がする(空港で乗り継ぐのもよくないだろう)。

今のところ日本に帰ると言う選択肢はないが、状況が長引けばどうなるのかはわからないと言うところである。戦争ではないんだけど、でもなんだかみんな国外に逃げて行ったりするとなんとなくそういうようにも見えて、私ももしかしたら強制送還(のち数週間隔離)されたりするのかと想像した。

日本はよりによってオリンピックの年になんてことだという感じだろうが、私自身の状況としてもよりによって大学がウィーンに移転する最も大切な時期になんてこったという気分である。博士の間に自分の大学が国外追放されるのもなかなかないが、こう言うパンデミックで学業が規制されるのもなかなかないだろう。必要な情報は取り入れつつ、あまり不安を煽らないように穏やかに暮らしていきたいと思う。とりあえずこう言った事が起こる前から予約していた心理カウンセリングのセッションが水曜日にあるので、研究や生活にまつわる不安については相談したいと思う。

追記:2020.3.14

上の非常宣言の内容の他、初等・中等教育も閉鎖が決定し、さらに入国禁止の国としてイスラエルが追加になった。

追記:2020.3.16

ついに国境封鎖(ハンガリー人であれば入国可能)。イベント類は全て中止で、自主休業しているお店も多い。レストラン・カフェなどは午後三時までの営業。スーパーや薬局は空いている。本日付で感染者数は三十九名になった。