六月十日@ウィーン

よく眠れる。久しぶりにスッキリした朝で嬉しくなる。たまたま同居人二人も同じ時間に起きてきたのでキッチンでちょっと談話。コロナのワクチンの話など(一人はもう二回接種が終わって、私ともう一人はまだ打ってない)。

大学に行ったら後輩がオフィスにいる。私の部屋は私以外に三人いるはずだけど誰も来ないのでこの子が新しく入るようになったらしい。とは言え八月か九月には学部が丸ごと五階に移るのでその時には部屋も別になるような気がするが、久しぶりに対面で喋って楽しくなる。一年生の最初からコロナでとても大変だなぁと、自分も大変だけどしみじみ可哀想になる。貴重な時期にいろんな先輩と触れ合う時間がなくなってしまったんだなぁ(ズームとかで少しは補完できてたらいいけど…)。

キャリアの面談を予定していたので、十一時からズームをする。特に何も調べていかなかったのでどうなるかちょっと心配だったが、とても有益な情報をもらえたり、一緒に喋って考えることがあってよかった。二週間後にまた面談を設定したので、それまでやること(宿題的な)をもらう。なんかもやもやしていた未来のことが少し楽しみになる。私はやっぱりもうちょっとヨーロッパにいて、新しい経験を積みたいと思う。私は失敗も多いけど、人と会ったり仕事をすることが嫌いなのではないと思う。

午後は論文の直しをしようと思ったけど結局ぼーっとして特に何もしない。なんか回復中って感じである。事務の人とのやりとりはまだ続いていていて、それはまだ疲れるがだんだん収束に向かっている感じはある。

私が何故パニックになっていたかというと、まぁ大まかにまとめると想定外というやつである。イギリスでの滞在研究は、先生にも言われたように、コロナが全部ないということを想定して研究計画も組んだし予算の計算もした。コロナを踏まえた予定まで書き始めたら収まりがつかないので、それはとてもわかる。想定外は、契約書に署名する段階で「コロナに付随する全ての責任は自分で負うこと」という項目に合意しなければならなかったことだ。大学が何でもかんでも払ってくれるとはそもそも思っていないが、これにサインすることによって、そもそも何かあっても要求する権利すらないことになる。まぁコロナ以前から予定外の出費があってもおそらく払ってなかったのだろうと想定するが、予め書かれているのに同意するのはそれはそれで勇気がいる。

それに付随してイギリスでの滞在研究後に使う博論執筆のためのお金一年分なのだが、おそらくこれがもらえるのは間違い無いが、これを滞在許可証の更新の収入証明に使うのはほぼ不可能という現実が見えてきた。ので、自分の持ってる貯金から一括で向こう一年分の生活費があることを証明しなければならない。恥ずかしながら貯金が全然無いので、次の滞在許可証更新時に見せれるのはどれだけ頑張っても十ヶ月分ぐらいにしかならないと思う。まぁ最悪六ヶ月でも延長してもらえて、その後コロナが収まっていたら旅行者ビザでオーストリアに六ヶ月まで滞在できるので、それで何とかなることを願いたい。これも想定外の一つである。

そんな感じでずるずるとまた滞在許可証関係のルールで、滞在許可証の更新中に他国に行くにはまた別の申請(Notvignetteというそうだ)がいるのを知り、それは90日までしか許されていないのでイギリスでの滞在研究を少し短くしなければならないことに気づく。35ユーロぐらいでやってくれるらしい、何でも金がかかる。ちなみに新しい許可証が無い状態でこの手続きをやってなかったら、今のコロナの状態が続いていればオーストリアに再入国はできない(第三国の旅行者の入国は禁止)。ということは私はその場合日本の強制送還されるのか?別に死ぬわけでも無いが、いくらかかるのか検討もつかないしもう考えないことにする。しかしこれは十分あり得ることだと思う(私の滞在研究が終わるのは十二月末だ、誰が予測できるだろう)。

こんな感じでお分かりのとおり頭がぐちゃぐちゃであるが、一応前よりはましなのである(もっと訳が分からなくてパニックになっていた)。指導教員はとても親身な先生なので、解決できそうなところは全力で解決してくれようとしてくれるから頭が上がらない。私が情緒不安定な時にメールを送って困らせてしまった気がして申し訳なくなる。そして大学の人もルールに基づいて判断しているだけで私を苦しめようと思っているわけでは無い。できないことはできないと言っているだけである。

いつも思うのはこういうことが起こった時に、結局自分しかいないということである。別にこれは日本にいようが海外にいようが同じだろうなのだが、外国人というのは特別な存在であり、それぞれの状況が固有であるために同じような人もいないし、自分が戦うしか無い。今学生だからそうなのだろうが、しかしポスドクになっても同じような感じで、教授ぐらいまで確立した地位を得ない限りはいつまでも戦い続けるのだろう。

とはいえ私は恵まれている。私は日本のパスポートでどれだけの面倒ごとに巻き込まれずに済んだのか分からない。日本人だからというよく分からない理由で適当に済まされている部分が多大にあると思う。だからあまり文句ばっかり言ってないで感謝したいとは思うけど、しかしむかつくときはむかつくのだ。