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3年前のある冬の日、
おばあさんが一人、駅のホームで困った顔をしていた。
そわそわして、周りをキョロキョロ見回している。

なんだか気になって
「どうかされましたか」と聞いてみた。

おばあさん「乗る電車がよくわからなくて」
とポツリポツリと話し始めた。

実はこのホームには二つの方面の電車が停まる。

A行きと、B行きだ。

おばあさんが乗りたいのはA行き
ところが B 行きに乗ってしまった。
 
途中で車内の乗客に聞いて間違いに気づき
再び出発点のこの駅に戻ってきたのだと言う。
往復で1時間近くかかったそうで、疲れた顔をしていた

ーーー

A行きだと、あと28分後ですね」
その電車に乗せてあげたかったのだが 
私は約束があって、12分後に来る B行きに乗らなくてはいけない。

すると、そばにいた 四十歳ぐらいのショートヘアの女性が
「用事があるのはどこの駅ですか」とおばあさんに聞いた。
おばあさんが降りたいのはC駅
息子さんの家があるという。

 C駅はここから50分ほど乗ったところだ。

ショートの女性「A行きの電車に乗るので、一緒に乗りましょう。
だけど私、ひと駅で降りてしまうんです」

ちゃんとC駅で降りられるだろうか。
おばあさん、ボケているというわけではないのだが
少しだけ認知機能が衰えているようだ。

ーーーー

C駅まで50分ぐらいかかりますが、降りられますか?」
と聞いたところ
おばあさんは不安そうな顔。

疲れもあって
心配な気持ちになってしまっているのだろう。
私とショートの女性は顔を見合わせた。

すると5 M 先ぐらいにいた
20代ぐらいのロングヘアの女性が
ハイヒールの音をカツカツとさせながら近寄ってきた。

C駅の先まで乗ります、だから一緒に行きましょう」

ーーー

あつこ「本当ですか。 よろしくお願いします」
ショートの女性「よかったですね」 (おばあさんに話しかける)
ロングヘアの女性「C駅が近づいたらちゃんとお知らせしますね」 

おばあさんは、やっとほっとした顔になった。

ほんわかした雰囲気が漂う。
私の乗る電車がやってきた。
軽く会釈をして別れる。

ーーーーー

初めて出会った3人の女性の
なんと見事な連携プレー。
知らないふりして、通り過ぎることだってできた。

まだ、この世の中も捨てたもんじゃない。
ふふふ。
こっそり笑みがこぼれてしまう。

胸のあたりがふんわりあたたかい。
息子さんの家に無事に着けそうですね。

・・・・・・

リレー企画
#心に残るあのエピソードをあなたへ に参加しました。

冬の寒ーいホームだったんですけど
この日のことは心に残っています。
鮮やかだったんです。


バトンをくださったのはMiiさん。
2人のお嬢さまに作るお弁当に愛がいっぱいです。

さて、このバトンは企画を始められたチェーンナーさんにお返しします。
よろしくお願いします。

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