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壊れても、直して使える”サステナブルな器”?「Zen」(繕) という取り組みについて。

前回は、「Zen」(繕) (壊れた現代作家の器を、金継ぎして販売するプロジェクト)を始めるまでのいきさつを書いた(→こちら)のですが、今日はこのプロジェクトの内容を、できるだけ詳しく説明します。

「Zen」(繕) の特徴

一般的に、金継ぎのサービスは個人間で行われている事が多くて、大切な器を壊してしまった時に、どうにかならないものかと思って直せる術を探し、金継ぎ師を探し出して依頼する、というのが多いと思います。
(そもそも「金継ぎ」って何?詳しく知りたいわ!という方へ、今度詳しい工程を書きたいと思いますので、少々お待ちください。)

1、陶芸作家のキズモノを直す

「Zen」(繕) は、金継ぎ師が個々人の器を預かって直す、というような一般的なサービスとはちょっと違います。私たちは、陶芸作家や窯元から直接、市場に販売される前の器を買い付けます。それも、作品を作る過程で、ヒビが入ったり欠けてしまったりして市場には出ない、「キズモノ」と呼ばれるものを譲り受けます。
その、ふつうは捨てられてしまうキズモノを、一つひとつ職人が金継ぎで直してから販売するのが私たちのプロジェクトの大きな特徴です。

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陶磁器は、土と火によってできる、とても原始的で自然に近い創作ですが、遺跡から発掘される古代の土器からもわかるように、一度焼成してしまった土は何千年でも残る物質に変化して、二度と元の土に帰ることはありません。
 
陶芸作家たちは、日常的に作品を作り出しながら、一方でどうしても「キズモノ」も生み出してしまします。そして行き場のないキズモノは、作家の元にため込まれ、たまったものは、焼きものの産地では砂利に再利用したりするケースもあるようですが、ほとんどの場合は陶芸家たちが個人でお金を払って産業廃棄物として捨てています。

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↑焼成中に縁に入ってしまったひび割れ

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↑ある作家の、キズモノの積み上げられた棚

作り手は、制作している時はもちろんそれがキズモノになるなんて思わずに、他の作品たちと同じように、真剣に、全力で、魂を込めて、作っています。それにちょっとキズができてしまったら、売れないので捨てられてしまう…しかもお金を払って。そんな悲しいことってあるかしら…こんなにちょっとのキズ、ちょっとのヒビなのに…ほんとにもったいない!ならば直して、次の人生を!というのが「Zen」(繕) のはじまりです。

2、修繕/買取のアフターサービス

さらに私たちは、もしも器を購入したお客様が、その器を破損してしまった場合に、①それをまた修繕する、あるいは②買取する、というアフターサービスを用意しました。

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せっかく金継ぎした器を購入していただいたら、日常で安心して使っていただきたい。でも器はどうしても壊れる可能性があります。
ですから、もしも欠かしたり、割ったりしてしまったら、悲しみに浸らずに、ぜひご連絡ください。ご希望に応じて、また金継ぎして直し、お客様のもとへ戻す。あるいは「Zen」(繕) で買い取らせていただく、という選択をしていただけます。
私たちは、お買い取りしたその器を、また直して販売したいと思っています。お客様は、返ってきたお金を使ってまた新しい器を手に入れることもできます。ひとつの器が、何代かにわたって複数の使い手のところを巡るというのもおもしろいのではないでしょうか。

「Zen」(繕) のミッション 

大切にしたものを直しながら長く使い続けるというのは、日本で古くから受け継がれてきた、素晴らしいものとの向き合い方です。焼きものの世界にも、器の貫入(かんにゅう:陶磁器の表面にできる細かいひび模様)に染み込んだ色を味わったり、使い続けることで日常的についた汚れや変化も「景色」として愛でる特有の文化があります。さらには、欠けたり割れたりして不完全なものになってしまってもなお直し、直した跡すらも「景色」として楽しんでしまうのです。

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汚れたから、壊れたから、と新しいものに変えるのは本当に容易いことですが、しっかりと直し、美しいものとして昇華させるのですから、これはなかなか高度な変換であって、壊れたら捨てて、新しいものを買う、というのが当たり前になった時代の中で、世界に誇れる尊い文化であり、今こそ見直され必要とされている伝統なのではないでしょうか。
そんなわけで、金継ぎという技術を使って、器を永く使い続けられる仕組みをつくって、「Zen」(繕) を、日本の美意識を伝えるブランドとして続けていきたいと思っています。

★次回、クラウドファウンディング(11月17日〜の予定←延期して、20日からスタートしたいと思います!)のお知らせします。よろしかったら、ぜひフォロー&サポート、よろしくお願いします!

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