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【蒔絵講習の記録】第3回:粉固め(ふんがため)〜磨き。

前回の「粉入れ」を行ってムロに置き、2週間ほど放置。
十分に乾いたところで、次は「粉固め」と「磨き」です。(蒔いた金属粉を漆で固めてから、磨いて金属の輝きを出す。)
こちら、やってることは金継ぎの仕上げと概ね同じです。
が、面積が違うのと、下地が硬い陶磁器ではなくてピカピカの漆板。手順はちょっと違ってくるのです。

<粉固め>
パネルの全面に漆を塗り込みます。2度、重ねます。
①初めは漆が染み込みやすいように、漆をテレピンで薄めたものを使用。
②2回目は、漆そのままを塗り込みます。

一口に「粉固め」と言っても、やり方があります。
初めてなので…と丁寧に、先生が動画と図を送ってくれました。それを見ながらやっていきます。

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この図のように、薄めた漆をコットンに染み込ませて、くるくる丸を描いて行きます。縦横に、隙間なく、くるくるくるくる。
その次に、直線でタテタテ、ヨコヨコと通していきます。

漆を十分擦り込んだら、次はティッシュでそれを落としていきます。
ティッシュを半分に半分に、と5回ほど折り重ねて、漆を擦り込むときと同様の動きで、くるくるを繰り返してから、縦横の直線を通していきます。ティッシュの面を変えながら、漆がつかなくなるまで、くるくる&直線で拭くを2〜3回繰り返します。
そして最後は、必ず、長い辺を通すのがきまり。そうしておくと、少しでも拭いた跡が残っていたときに、きれいに見えるんだそうです。

終わったら、ムロに入れて1週間ほど乾燥。
漆で固めた線は、染み込んだ漆で銀が茶色みを帯びて、重厚感のある感じ。(写真は撮り忘れました。)

漆固めが終わったら、次は磨きの工程です。

<磨き>
①三和の胴擦粉を油で溶いて、コットンにつけて擦りすり。
②三和の磨き粉を油で溶いて、コットンにつけて擦りすり。
③最後は指に磨き粉をつけ、様子を見ながら擦りすり。

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使うのは、こんな材料です。
専用の磨き粉があって、まずは銅擦粉を植物油で溶いて使います。

ちなみに、こちらの磨き粉は伝統的に使われていた「角粉」(鹿の角を粉にしたもの!)が入手困難になったために、代用品として開発されたとのこと。
鹿の角…安定して見つけるのも大変だけど、粉にするってどうしてたのかなぁ。日本画でバインダーに使う「膠(にかわ)」(動物の骨、皮、腸、腱などを煮出し、コラーゲンを濃縮し、固め、乾燥させて造られる。膠を精製したのがゼラチン。)にも「鹿膠」があるように、鹿さんが古くから身近な生き物だったのだなぁ。。

などと、里山に鹿が共生する景色に思いを馳せながらも、指はくるくるすりすり。

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陶器と違って背面は磨かれた漆面です。背面を傷つけないように、優しく優しく擦ります。優しく擦るので、磨けてるのか分からないー。。

時々、指に磨粉をつけてすり、銅擦粉をとりながら様子をみます。

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しばらく磨くと、こんな感じ。
写真に、ピカっと磨かれた感じを写すのがとっても難しいですが、
なんとなくわかるでしょうか。

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一部、磨きすぎて線が途切れてしまっています。
これ、前工程の「粉入れ」の際の「木砥そうじ」のし過ぎによるものです。反省…

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全体をくまなく銅擦粉ですり、磨粉で磨きあげたら、ひとまず、3つの伝統模様の基本練習はこれで終了となります。

なるほど…磨くまでをイメージして、最初の漆の線描きをするべきだったのだな、ということが一通りやってみてはじめてわかります。
この次からは、蒔絵技法講習応用編に移ります〜。

※表紙に置いた画像は、ご存知、琳派を代表する絵師、尾形光琳晩年の代表作「紅白梅図屏風」です。波の独特な模様は「光琳波」として知られています。前回の記録に書いた”鉄線描”より、私の好みは断然こっちの、細くなったり太くなったり、抑揚あふれる線なのですが、でもこの線を自在に操るには鉄線も描けないとなんですよねー。彼ら、どれだけ訓練してきたんでしょうねーと、感嘆するばかりです。

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