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ノラネコのケンカみたいな傷がある4

顔に挫傷を負った私は、2軒目の病院受付で救急外来にいくことをすすめられ、横金線で日赤に向かった。

この時すでに1730頃。

顔がジンジンするのはだいぶよくなってはいたが、
腫れは全くおさまっていなかった。

しかし暑さや疲労、
歩きながら寝た自分へのショックなどからくる気分の落ち込みは、
家族による付き添いでだいぶ軽減されていた。

救急はいつ来ても薄暗い。
空気も照明も。だけどパーッと明るいよりずっと居心地が良かった。そういうものなのだなぁ。

若い女性の医師がみてくれた。
やっぱりここでも、事件性がないかを確認するためと思われるヒアリングを受けた。
なるほど、こういう聞き取りで救われる人はいるだろうなと思った。

レントゲンとって診察してもらって、
骨に異常なし、
腫れは冷やして引くのを待つ、
傷は自力で治す。てことで、
痛み止めの飲み薬だけもらって病院を出た。

このときくらいから思ってた。
腫れはたぶん引くけど、傷はどうなるんだろう。
ゴツゴツしている石に真正面からぶつかり、
左から右に「ザッ!」って擦ったような傷。
オス猫の縄張り争いで、鼻っ柱を攻撃されてできたような傷。

顔で商売しているわけでもないので、
傷があるから給料に影響することもないし、恋人に捨てられるってこともないから生活に影響はない。

逆に、私に付された意味のあるマーク。例えば、
今年の8月4日にあったことを忘れないための顔に記された符号、句読点、ダルセーニョとか、四分休符、あるいは呪印。

もしも傷が残ったらそんな感じで、
今後出会う人たちに説明するんだろうなと、
夫の運転する車の助手席で窓を開けて風を浴びながらぼんやりと思った。

とはいえ、今はアカメロ。傷はふさぎたい。絆創膏じゃねぇだろう。
そうだ、キズパワーパッドを貼ろう。

「キズパワーパッドを買う。ツルハに連れってて」
私は夫に言った。


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