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オペラ座の怪人ミュージカル考察〜怪人ファントムの本当の目的は何だったのか?〜

先日劇団四季の「オペラ座の怪人」を見て、思った以上にハマってしまって、一週間ずっと頭の中で考え続けています。

観劇記録も書いたのですが、ストーリーが単純な恋物語かと思いきや、愛とは?人間とは?…という深いテーマが散りばめられているし、よく聞いてみたら違う解釈もできそうだと気づくことも多くて、頭をぐるぐるにさせられております。

まだ調べきれていないことも多くて先行研究にパンチされるかもな…と思いつつ、今回は「怪人ファントムの本当の目的は何だったのか?」について考えてみたいと思います。

クリスティーヌは怪人の手下?

一度見たことがある人なら、「え、クリスティーヌと恋人になることじゃないの?」と思うと思います。だからラウルと恋仲になることを許さず、怒り狂ってシャンデリアを落とした、というあらすじなのだと。

私もそうかなと思って観劇していました。でも、それだと怪人がクリスティーヌを手に入れるためにしては、「いや、それは逆効果でしょ!」と突っ込みたくなるようなミスが多すぎます。
そこが怪人の不器用で可愛いところで、愛を知らないからそうなるんだ、という見方もできるとは思うのですが、

私は「クリスティーヌがラウルの妻になり、ファントムはその義父として富と名声を得て、オペラ座も思うがままに操ること」ではないかと考えています。

ラウルはお金持ちの子爵で、ボックス席で観劇したり、支配人のオフィスに出入りしたりと、オペラ座の関係者のようでした。
ファントムがクリスティーヌを舞台のプリマドンナに仕立て上げたのは、ラウルが観ていたオペラの回で、マネージャーの退職日を狙ったというより、ラウルが来ることを察知して(もしくは招待者リストなど盗み見ていて)あえてその舞台でクリスティーヌを歌わせた可能性があります。

「ザ・ミュージック・オブ・ザ・ナイト(The Music of the Night)」は怪人がクリスティーヌへの愛を歌ったという見方もできますが、
前曲の「オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)」の最後に「歌え、私(ファントム)のために」と呼ばれて、クリスティーヌがアリアを歌うやりとりが3回出てきます。

これは『リトル・マーメイド』のアリエルがアースラと契約を結ぶときに歌っていたように、クリスティーヌと「オペラ座の怪人」が契約を結んだ瞬間ではないでしょうか。
だとすると、ファントムの命令の内容が「ザ・ミュージック・オブ・ザ・ナイト(The Music of the Night)」であるならば、「夜二人で歌う」という歌詞は、ファントムとクリスティーヌではなく、ラウルとクリスティーヌが歌って、ラウルに呪いをかけろという(契約最初の)命令だったのでしょう。

この流れでいくと、シャンデリアは、嫉妬した怪人が落としたようにも見えますが、「これほどの辱めを、決して赦しはしないぞ」と言って、クリスティーヌへの警告で落としたとも考えられます。
「墓場にて」で「今度はお前たち二人に宣戦布告だ」と言っているので、シャンデリアではまだクリスティーヌとラウルを敵視していないようです。
でもクリスティーヌは手下だから自分のもの(「宝物」)だとは思っていて、時間をかけて育てたものだから自分(ファントム)にお金なりでお返しをしてくれるはず、このギブアンドテイクが愛だと勘違いしているのがファントムの「怪人」ポイントなのだと思います。
日本に住んでいるとこの辺に違和感を抱きにくいかもしれませんが、
親子であっても他人であると考えるのが欧米圏の文化だそうです。(人から聞いた話なので全部ではないと思いますが。)
この他者への依存感は人間らしくない(一つの人格を否定するのは人権に反する)、すなわち「人間らしくない愛の形」に映るのではないかと憶測します。

「墓場にて」で怪人に向かってラウルが「お前にクリスティーヌの愛など勝ち取ることができるものか!」と言っていますが、ここでの「愛」の使われ方は、「本当の人間の愛というものを知らない怪人であるファントムにはわかるまい」という意味にも聞こえます。

ちなみに、ラウルは怪人がクリスティーヌだけを好きだと勘違いしていて、実は自分も(怪人の手下として)狙われていることに気づいていないというのは、考えすぎでしょうか…

ラウルの不審な点

ラウルの行動で疑問に思った点が3つあります。

①「Angel of Music」をクリスティーヌと同じく知っている
②支配人のオフィスでクリスティーヌを囮にしようとする(怪人のオペラを上演しようとする)
③船がないのに怪人のところに来られているのが不思議

ラウルの行動の疑問

①の不思議なところは、美しい音楽を奏でるもの=「Angel of Music」という常識(通称?)が欧州(またはキリスト教圏)に存在し、ラウルは本当の「Angel of Music」はクリスティーヌだと思っていて、この時は歌っている(口説いている?)けど、
クリスティーヌは稽古をつけてくれるファントムが「Angel of Music」だと思っているから、二人は「Angel of Music」と同じフレーズを歌っているけど、実は違うものを指している…ということかなと憶測しています。
(楽譜を見たらユニゾンになってないなど裏付けできるものが見つかるかもしれませんね…)

②と③の点については、「ラウルも呪いを受けているからだ」と仮定したら、これらの矛盾点が解消されるのではないでしょうか。

「ザ・ミュージック・オブ・ザ・ナイト(The Music of the Night)」のバックミュージックで、ラウルはクリスティーヌを守って自由にすると強い意志を持っていましたが、キスした直後なので、クリスティーヌを通じて、ファントムの強力な呪いのようなものを引き継いでしまっているのではないかと感じました。

呪いを受けて、クリスティーヌと似たような状態にあるから、怪人の呪いに操られてクリスティーヌを怪人の舞台で使おうとしたり、地下の湖に乗り込んで怪人の住処に一人でたどり着けたりしたと考えれば疑問が解消されるように思います。

序盤でファントムのマスクを外して正体を暴いたところで、全然倒せなかったぐらい(妖力?)が強い怪人なので、ちょっとしたことでも影響を受けるのではないかと思うのですが、
何が条件になって呪いを被るのかは伝記なども参照しないとわからなそうなので、今後の課題になりそうです。

「キスをして真実の愛がわかると呪いが解ける」というのは昔話でのよくある解決方法なのですが、ラウルはもともと真実の愛を知ってるから呪いを解く側だったから多少揺らいでも、他の劇場の人たちと違って一貫して怪人と戦おうという姿勢で、怪人の目的は達成できなかったというオチなのかなと思います。

また他の考察も書いていきたいと思います。

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