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大人6人と18歳と1歳で味噌づくり

友人Cさんが味噌づくりに誘ってくれた。マンションの一室に、大人6人と18歳と1歳がぼちぼちあつまる。おおきな琺瑯の鍋に大豆が煮えている。厚手の大きなビニル袋に茹でた大豆を入れて、足でそれをふむ。大豆を潰していく。熱い。楽しい。楽しくなって夢中でどんどん踏む。熱中すると我を忘れて熱まで出してしまうのをCさんは知ってくれているから、何度も「もう休みなさ―い」とわたしを止めてくれた。

ゆでたての豆が熱い。手でビニル袋を触るとあっちあちで驚く。靴下を履いた足はほかほかの豆を踏んで足湯につかったような気持ちよさで、てのひらもじんわり汗をかいてくる。1歳さんが「踏んでみる?」と呼ばれるもかなり慎重な性格のようでなかなか踏まない。数歩ふんでみて、体のバランスをくずしてその場にすわった。そのときに手をあついビニル袋の上についてしまってびっくりしてすこし泣きそうになって逃げてしまった。あちちだったねー、といいながらにこにこして見てしまう。アメトーークで子ども番組芸人の回を観たところだったので、”調子を外してみる”というコツを試したくなり、やってみる。声のトーン変化への反応はいまいちで、ふつうにいないいないばあのような顔を隠してまた出すという動きに笑ってくれた。

豆の袋は4,5枚。一生懸命、踏む。1歳さんが靴下をぬいでビニル袋の上に乗ってしまった。本当にあちちだ。

そのあと、塩と麹をまぜる。砂遊びみたいで楽しい。これも夢中になってしまい、明日ぜったい筋肉痛になるやつだ、と怖くなる。

まぜた塩と麹に、ペーストみたいになった大豆を入れて、混ぜる。煮汁を少し入れる。また混ぜる。あったかくてやわらかくて、気持ちいい。
あ、この匂い。
10歳頃、学童保育所で味噌を作ったときの匂いだ。作業自体は覚えていたが、香りでそれがぐんと色濃くなる。麹がちょっとクセのある匂いだった。あのときは豆をつぶしてパスタマシーンみたいな機械にいれて、ミンチのようにしていた。古い民家を借りた学童保育所の居間を思い出す。

さてみんなでぐるぐると混ぜたらリカーで拭いた琺瑯鍋にぺたんっぺたんっと投げ入れる。一回ぺたんっと投げ入れてみて、わたしは大豆丸め係になろうと決めた。雪合戦の雪玉準備係のように丸めまくる。ふだん家事をあまりしないことが功を奏して、手や指は荒れていない。だから塩っけで沁みたりしない。丸めまくる。


Cさんたちが鍋の保存の処理をして、おしまい。
大量の豆と麹の匂い、温かさと湿度にすこしぼんやりする。Cさんと出会ってたぶん5年くらい。ゲーム仲間だった。わたしはもうそのゲームをやっていないけれど、こうやって味噌づくりに呼んでもらえる。不思議で、うれしい。帰りは今年と去年の味噌を二袋もいただいてしまって、リュックに入れるとああ背負ってるなという重みで、味噌と一緒にキラキラの武蔵小杉を歩いて可笑しかった。
友達と一緒になにかを作るの、こんなに良いのか。

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