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『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド

農園の奴隷コーラの逃亡譚。
アフリカから連れてこられた史実と、逃亡を助ける「地下鉄道」というフィクションが強い魅力をもって惹きつける。

映画で観たい!と思っていたら『ムーンライト』を撮った監督が映像化するそう。
たのしみ。

この小説にあるのは、大きな悲しみと恐怖と少しの希望。
アメリカは誰の看守なのか。
支配するものは黒人労働者たちから報復されることを恐れ、その恐怖が暴力を生む。
恐怖と暴力の連鎖。
歴史は変えられない。
変えていくべきはどこからなのか。
自分しか信じられない世界で生き抜く恐怖。

声高に歴史観、人種差別の悪について語るのではなく、むしろその辺りは諦めのようなトーン、「人間なんてららら」みたいな感情を読みとったんだけど、そういうため息のカラーに対する、生き抜けないかもしれないけど生きている主人公コーラの底力が、わたしがこの本に持った魅力だ。

この本が早川書房から出てるのも、なんだか早川書房ぽくて納得。
筆者近影のカジュアルさがかっこいい。

(訳 谷崎由依)
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