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わたしをとおりすぎた彼方へクロックムッシュを

2020/01/14
コーヒーショップへお昼を食べに行く。
明け方の地震のせいで眠い。コーヒーをたっぷり飲みたい。

頼んでいたクロックムッシュができあがる。店員さんはわたしの顔30cmの近さで「クロックムッシュお待ちのおきゃくさまー」と叫ぶ。そこにはわたししか並んでいないのに。はいと答えると彼女はわたしを通り越したむこうの彼方を見つめながら「お熱いのでお気をつけくださーい」とまた叫ぶ。なるほどそういうスタイルなんですね。彼女のやり方はわたしを寂しくさせたけど、ファーストフードだからしかたない。

ポール・オースターの『鍵のかかった部屋』を読んでいる。これも読みかけのまま図書館に予約をしていた別の本たちが届いてそのまましおりを挟んで寝かせておいたものだ。

『人生がいかにして崩壊してしまうか、わかったものではない』という箇所が好きだ。

あるいはまた、ソ連の批評家·文学理論家のM·M.バフチン。第二次大戦中、ドイツがソ連に侵入した際、バフチンは写しもない自分の原稿を、まるまる本一冊ぶん、煙草にして吸ってしまった。それは何年も費やして書き上げた、ドイツ小説の研究書の原稿だった。一ページずつ原稿を取り出しては、彼はそれを煙草の巻き紙に使った。こうして彼は毎日、自著を少しずつ少しずつ煙にして吸い、やがてそれはあとかたもなく消えてしまったのだ。これらはみな本当の話である。

本当にあったことというのはときに奇妙で、ある人から本当にあった話を書きおこしてほしいと言われているんだけど(趣味のはなし)、書けば奇妙すぎてとってつけたような話になりそうで、どうしたものかと思っている。

そういえば今朝の夢は気味が悪いものだった。実在の人物Aさんがアマチュアロードサイクル大会に出てテレビに映る。美人すぎるがゆえにテロップの名前から彼女のSNSがあっという間に掘り起こされ、過去の不適切な発言を見つけられるというものだった。実物のAさんはかなり大雑把にいうと北フランス系の美形なので、仕事上でいらないことを言われたりしていないかわたしは常々勝手に心配していた。
彼女が大会に出ませんように。

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