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てきとうな阿吽

2020/10/02(金)
朝、紅茶、パン、フルーツ、ヨーグルト。

本日、父出勤日。
昨晩陸上大会の中継を見ていた父に、母が「今日は100m決勝あるからね。頑張って」
と言う。
父は「おう。最初の五歩が肝心やからな」と返す。
もちろん父は事務仕事に出るのであって100m決勝には出ない。阿吽の呼吸の、てきとうなキャッチボールである。

昼、プチトマトのアラビアータ。
食べながら母に、そういえばディズニーランドに行ったことはあるのか、聞いてみた。
「ないない!……あ、カリフォルニアで行ったわ。まだ日本に無かったね」と、思ってもみない答えが返ってきて驚いた。
留学した際に遊びに行ったのだそう。アトラクションには乗らなくて、園内を歩いてまわったのだとか。ぬいぐるみと握手をした、と言う。ミッキーだったのかなんだったのかはわからない。
母はけっして神戸のお嬢様だったわけではなく、勤労学生だった。一生懸命学んで働いて貯めたお金でたどりついたアメリカは、きっと夢の国だっただろうな。

実家を去る前に、父の本棚の部屋へ行く。
本棚には、わたしの写真が飾られていた。一歳二ヶ月のふわふわのはんぺん人形みたいなわたしが、ぼんやりとレンズを眺めている。
その横には、父と母の、結婚前のツーショット。カウンターに二人並んで、見つめあうわけでもなくお互いがコーヒーを飲んでいる。きっと友人が撮影してくれたのだろう。
わたしが知る限りではけっしてべったり甘々な夫婦だったわけではない。飾られた写真に写っているのもクールな二人だ。ねぇ、二人ってどんなカップルとして過ごしたの、と絶対に娘には答えてくれないだろう問いを投げかけたくなる。

写真機を発明してくれた人、あなたのおかげでどんどん成長してしまって、もうすっかり大人のわたしの、一番かわいかった時を切りとることができた。
お礼を伝えたい。
大切な瞬間を閉じこめることができたことに。
父の大切にしていることを、わたしが知ることができたことに。

夜、静岡に帰宅。巻寿司。

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