「セックスって愛の最終形態なんですね」と彼は言った。
こないだ、ある方からこんなことを言われたんです。
「セックスって愛の最終形態なんですね」
なんでこんな話になったかというと、産後、妻から性的な触れ合いを拒否された場合にどうすればいいのかについて、ぼくが彼にお話をしたんですね。
産後の妻に起こる身体的・精神的な変化を理解し、失われた恋愛感情を追い求めるのではなく、愛着関係を築いていくことで夫婦の愛を新しく作り上げていく。
そんなことをお話ししたのですが、そのときに言われた「セックスとは愛の最終形態」という言葉がずっとぼくの頭の中に残っているんです。
なぜ、セックスが愛の最終形態なのか?
なぜ、ぼくはこの言葉が気になっているのか?
これらについて今日は考えてみたいと思います。
セックスとはなんなのか?
産後に夫婦関係が悪くなるまで、ぼくは「セックスとはなんなのか?」なんて考えたこともありませんでした。
恋人や夫婦ならあたりまえの行為だと思っていたんです。
でも、子どもが生まれたあとの夫婦にとっては、それは「あたりまえの行為」ではなかったんです。
なにも知らずに暮らしていてはたどり着けないような場所にそれはあったんです。
産後の女性に爆発的に起こるホルモンバランスの変化、我が子を手にかけるほど追い込まれる身体的そして精神的な危機、社会から断絶される社会的な危機。
自分自身の体と彼女を取り巻く社会の大きすぎるほどの変化のなかで、妻はまるで別人のようになっていく。
一方、ぼくら男性はなにも変わらないまま日々を生きていき、気が付いたときには底が見えないような谷が夫婦の間にできていることを知る。
そんなふたりが、出会った頃のようにセックスができるわけがないんです。
産後の夫婦にとって「セックス」とは、到達することが難しい山の頂きのような存在なんです。
でも、多くの男性はその山は簡単に登れると思っている。
そして、驚くほどの軽装で登山を開始し、吹雪に追われ、何本もの指を失って下山をすることになる。
産後の夫婦にとって「セックス」とはそれくらい特別な存在なんだと思うんです。決して自分の思い込みだけで簡単に考えてはいけないと思うんです。
愛とはなんなのか?
「セックスが愛の最終形態」ならば、その「愛」とはいったいなんでしょうか?
お互いを大切に思い合う気持ち?
お互いを慈しみ合う感情?
辞書を引くとこんな言葉が出てきますが、ぼくは愛というのは「気持ち」だけではなく「行動」も必要だと思うんです。
産後の妻に起こる変化を理解し、妻のためになにができるかを考え、行動する。
そういった「理解」「思考」「行動」の積み重ねが、愛と呼ばれるものなんじゃないかと思うんです。
男性も家事育児を積極的にするべきだという話をよく聞ききますが、ぼくにとって家事や育児をする目的は「妻のケア」であることが大きいです。
とくに家事については「家族だから」「平等な夫婦だから」という意識ではなく、「妻を支えたいから」という気持ちが明確に大きいんです。
家族だから家事をする。夫婦だから家事育児は平等にするという意識だと、相手に対して否定的な考えを抱きやすくなると思うんです。
(自分はこんだけやってるんだから、お前もこれくらいやれよ)
という意識が働きやすいと思うんです。
でも、「相手のため」という感覚だとそういった搾取されている感覚や、相手をずるいとジャッジする感覚がほとんどないんですね。
お互いを大切に思い合う感情と、お互いに支え合う行動の積み重ねが「愛」を築くんじゃないのかなって思うんです。
夫婦の愛とはなんなのか?
恋人や結婚したばかりの夫婦にとって「愛」というものは、もっと簡単なものだと思うんです。
恋愛ホルモンの効果が切れていないので、相手のことを自然と思えるようになりますよね。
相手を大切に感じることも、セックスをすることも簡単です。
でも、年を重ね、子どもが生まれる大きな変化の中で、夫婦の愛はとても難しいものになっていきます。
愛とはなんなのか?セックスとはなんなのか?
そんなことを否応もなく考えさせられるようになります。
ぼくも明確な答えを持っているわけでもなく、夫婦の愛について考え続ける日々ですが、それでも思うことがあります。
夫婦の愛をまた手にするためには、夫婦ふたりが心から満足する生活を送れるようになるには、「そのためにどうすればいいのか?」を考え続けるしかないんだと。
考え続けて、行動を続けて、自分のためではなく妻のために行動できるようになり、そしていつしか、ふたりの行動が「自分たちの幸せ」のために行えるようになったときに、ふたりは心も体も一緒になれると思うんです。
そのときに、夫婦はまた愛を、今までは違う次元の愛を、感じられるようになるんだと思うんです。
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夫婦関係に関するポッドキャストをやっています。ご夫婦で聴いていただけると、ものすごく嬉しいです。
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