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人はなぜ、浮気をするのか?呉服販売員とお客様との距離感から考えてみた。

「Sさんは、お客さんと関係を持ってしまい、旦那さんから会社に通報されました。ですので、解雇となりました。」

営業部長はそういうと、みんなをぐるっと見渡した。

3ヶ月の一度の営業会議。着付けコーナーで約20人ほどの呉服販売員たちが、部長を囲むようにあぐらをかいて座っている。

そのとき、みんなを見渡していた部長とぼくの目が合った。

「アツさんも気をつけるんやで」

部長がそういうと、店長はぼくの脇腹を小突き小声でささやいた。

「ほんまやで、気をつけなあかんで」

当時、ぼくは呉服販売員として2年目を迎えたばかりだった。

お客さんとの距離感を縮めることも慣れてきて、少しづつだけど必ず販売会に来てくれるお客さんも増えてきた。

ぼくらのお客さんは既婚者の女性が8割、独身の女性が2割だった。

お客さんとの距離感が近づいてくるということは、心の距離が近づいてくるということで、そうなると自然と体の距離も近づいてくる。

というより、簡単に近づけることができてしまう。向こうからも、こっちからも。

この傾向は明らかに独身女性よりも、既婚女性の方が高かった。

既婚者の女性は、なぜ販売員に疑似恋愛を求めてしまうのか?

なぜ、体と心の距離を縮めてしまうのか?

そして、なぜ人は浮気をするのか?

実際にぼくに起こった出来事を振り返りながら、考えてみたいと思う。

Nさんとの出会い

Nさんとはぼくが販売員一年目のときに出会いました。年齢は40歳、20歳になる娘さんと夫との3人暮らし。

好奇心旺盛な性格と、少し呉服に興味が合ったこともあり、たびたび販売会に来てくれるようになったんです。

季節は確か夏だったと思うんですが、娘と一緒に浴衣を作りたいと来店され、ぼくが仮着付け(洋服の上から反物を重ねて着せる)をしました。

服の上から反物をぐるぐると巻いていき、まるで本当に着物を着ているかのように見せるのですが、どうしても体の距離は近くなるんですね。

彼女が緊張しているのが伝わってきたと同時に、ぼくも自分の緊張に気がつきました。

「違う色のものも試してみますか」と反物を巻き取りながら、ぼくは彼女に惹かれはじめている自分に気がついたんです。

呉服販売員はお客さんと接触するたびにお礼の手紙を書くのですが、これが彼女には嬉しかったようで、逆にこちらがお礼の手紙をもらうこともありました。

それから、ぼくが風邪で寝込んでいるとき、彼女はなぜかそのことに気がついて、手作りのお弁当やポカリスウェットなどを買ってきてくれたことがありました。

そのお弁当にも「からだに気をつけてね」など書かれた手紙が入っていて、体が弱っていたぼくにとってはとても嬉しかったことをよく覚えています。

こういうことは増えてくると、どうしても相手のことが気になってしまいます。

実際は、ぼくらにはなにも起こらなかったわけですが、でも、いつどうなってもおかしくない空気を感じていました。

一線は簡単に超えられる

たぶんぼくか彼女のどちらかが一線を越えようとすれば、簡単に超えられたんだと思います。

それくらい、ぼくらの心理的距離感は近づきすぎていました。

そして、当時22歳と若かったぼくは、あまりに近いその距離感から生じる彼女への親密な感情を止めることはできなかったかもしれないなと思うんです。

こういったことで悩んでしまうのは、当時ぼくがまだまだ新人だったからだと思います。

ベテランの販売員はお客さんからの好意を分かった上で、呉服販売に利用していました。

それがいいのか悪いのか、お客さんが呉服を買って満足していればそれでいいのか。ぼくらが提供しているものはホストのような擬似恋愛なのか?

金銭を手に入れるために、人の感情を、それも好意という感情を利用することに、青かったぼくはなかなか馴染むことができませんでした。

ぼくが2年目に会社はつぶれてしまいましたが、たぶん3年目を迎える頃にはそんな悩みは消えていたのかもしれません。分かりませんが。

50代以降のお客さまには、そんな軽い疑似恋愛のような感情も「楽しむ」ことができる余裕がありました。

もしかしたら、30代や40代の女性だからこそ、誰かからの好意を求めてしまいがちなタイミングだからこそ、お互いに生じる親密感が濃くなってしまうのかもしれません。

きっかけはささいなこと

そして、ぼくが働いていた会社が倒産し、引っ越すことが決まった頃に、彼女からお別れ会をしようと誘われました。

ぼくの家の近くにある居酒屋で飲んだのですが、彼女の行動を夫はどう思っているんだろうと思って、ぼくは尋ねました。

「旦那さんにはなんて言ってこられたんですか?」

「別にいいのよ。あの人も会社の若い子とよく遊んでるし。バレンタインデーにすごいいっぱいチョコをもらってくるのよ。わたしだって少しは遊んだっていいじゃない」

彼女はまるで自分自身に言い聞かすように、そう言いました。

彼女が50代になれば、たぶんこの悩みはそこまで強くなかったのかなとは思うんです。

当時、彼女は40歳になったばかり、20歳の娘さんはすぐに結婚してしまい、夫は仕事で忙しいので、1人でいる時間が長かったのだと思います。

そこにつけ込むかのようにぼくが現れた。

そして、幸か不幸か、仕事を抜きにしても、ぼくらはかなり気が合ったのです。

いつも一時間以上は話が続いて、メールのやりとりもほ毎日のようにしていました。この距離感をどこで止めればいいのか、ぼくはよく悩んでいました。

多くの女性が一線を超えてしまうのは、たぶんこんな風にささいなことがきっかけなんだと思うんです。

男性も自分の欲望を抑えることは難しいので、(これはちょっと押せばいけるかな)と思えば、実際の行動に出てしまうのでしょう。

そんな瀬戸際をぼくと彼女は歩いていたんだと思います。

そして、ぼくの同期はその道を踏み外してしまった。

「浮気」というのは、ものすごく非日常の出来事のように思えるかもしれませんが、実は日常生活の延長線上にあるんじゃないのかなって思うんです。

それを考えると、パートナーとの「日常生活における心の距離」が、2人にとって満足できるものであるならば、そういった出来事は起こりにくいのかもしれないなって思うんです。

podcastでもこの話をしているので、こちらも合わせてどうぞ。

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