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抱きしめてくれ、相棒。

初恋の恋人が自殺したのは、22歳のことだった。

ぼくは翌日に地元に帰り、たったひとりの親友に遅くまで話を聞いてもらった。

彼女との出会い、彼女がわずらっていた病、もしかしたら、ぼくにできたかもしれないこと。

正直なところ、ぼくにできることはなにもなかったのだと思う。

だけど、「あのとき、もしも」という思いは、葬儀が終わってもぼくの心から消えることはなく、ぼくは1週間ほど眠れない日々を過ごした。

友人はぼくの話を否定せずに聞いてくれ、ぼくの肩に手を置き、静かになぐさめてくれた。

心が引き裂かれそうになる夜、ぼくらはたいていひとりだ。

この夜は永遠に明けないんじゃないかという孤独のなかで、ぼくらは静かに、自分のなかの寂しさが消えるのを待つ。

ぼくら男性は、もっと弱さをさらけ出した方が生きやすくなるんじゃないかと、ぼくはよく思う。

寂しい、悲しい、辛い、やりきれない。

そんな思いに打ちひしがれたことが、きっとどんな男性にもあるはずだ。

だけど、その悲しみは誰にも話されることなく、ただただ、自分の心に おりとしてたまっていく。

自分のなかに蓄積された悲しみの層は固くなり、自分の感情を表現するさまたげになる。

そして、それが妻との関係を悪化させる原因にもなる。

The Daily Showという番組で、ホストのTrevor Noahがこんなことを言い、英語圏で話題になっていたそうだ。

「本当は自分はセックスを必要としていなかったんだ。抱きしめてもらう必要があっただけなんだ」、男性がそう言える社会になればいいなと思うんだ。
Men, Intimacy & The "Right to Sex" - Between The Scenes | The Daily Show

ぼくら男性にとってとても大切なことを彼は言っているので、詳しく説明したいと思う。

ことの発端はこのTweetだったそうです。

30才未満のアメリカ人男性の3分の1が、去年1年間、セックスを一度もしていないというデータから、彼女はこう結論づけています。

(ぼくの英語はいまいちなので、英語が分かる方は間違っていたら教えてください。)

We should be moving toward a right to sex. People should be able to have sex when they feel they want to, and we need to develop services that meet people’s needs without attaching the baggage of shame or criminalization.

私たちは「セックスする権利」を進めるべきです。人々は、したいと思ったときにセックスができるようにすべきなのです。そして、恥や犯罪という古臭い考えにとらわれずに、人々のそういったニーズに合わせたサービスを開発する必要があるのです。
Alexandra M. Huntのtweet

アメリカでは、セックスができない男性が非モテをこじらせ、銃撃事件まで起こすことがあるため、そうならないようにという意図のようです。

「セックスができない男性にセックスの機会を与えよう。そうすれば、非モテをこじらせた犯罪は減るだろう」

という主張ですね。

The Daily ShowのホストであるTrevor Noahは、この件に本質的な角度から鋭い指摘を入れます。

男性にセックスの機会を与えることが大切なのではなく、そもそもぼくら男性が、セックスでしか親密性を感じられないことが問題だという指摘です。

I really feel like we don’t speak about this enough—is people don’t realize how often men are experiencing a lack of intimacy,And the only place that they can experience that intimacy is through sex.

これは十分に語られていないと感じるのですが、男性がどれだけ頻繁に親密さを失う体験をしているのか、多くの人は気がついていないんです。

そして、男性が親密性を感じられるのは、セックスの最中だけなんです。
UPWORTHY

これは本当にそうで、妻とのセックスレスに悩んでいた男性も同じことを言うんです。

妻とのセックスを求めていたけど、本当は妻から愛されているという実感が欲しかったんだ。愛し愛されている実感が欲しかったんだ。という話を何度も聞きました。

ぼくも同じことを感じてます。重要なのは、セックスそのものではなくて、そこから得られる親密性なんです。

だけど、ぼくら男性は自分が本当に求めているものが「親密性」ではなく、「セックス」そのものであると勘違いしていることが多いんです。

Trevorはさらに続けます。

We’ve created a society where men are so afraid to be vulnerable with each other; to be sensitive with each other; to care for each other; to love each other. You know even saying that, as a guy … you can’t just say, ‘I love you,’ you have to say, ‘I love you, dawg.

ぼくらは、男性がお互いに自分の弱さをさらけ出し合うこと、お互いに感情に敏感であること、お互いを気づかい、愛し合うことを恐れるような社会を作り上げてしまったんだ。

男として、ただ "愛してる "と言うだけでなく、"愛してるよ、相棒 "と言わなければならないんです。

I think we take for granted how much in society men who say sex is the thing they're not getting are actually struggling with a lack of companionship, of intimacy, of being in a space with a person where they're sharing everything from serotonin to endorphins to what humans need to feel,

セックスができないと言う男性が、実は交友や親密さの欠如、セロトニンからエンドルフィン、人間が感じるために必要なもの全てを共有する空間にいることの欠如にどれだけ苦しんでいるか、ぼくらはその欠如と苦しみにすっかり慣れてしまっているんです。

And I hope we can change that conversation just a little bit more. I hope we get to the place where guys go 'Oh, I actually didn't need the sex. I needed to be held, and I live in a society where it's hard to be held unless I'm having sex because as guys you can't just go to a guy and be like, 'Just hold me.

そして、この会話をもう少しだけ変えることができればと思う。

そして、社会がこういう場所になればいいなと思うんだ。

「本当は自分はセックスを必要としていなかったんだ。抱きしめてもらう必要があっただけなんだ。」

と男性が言える社会に。


ぼくらは抱きしめられたかっただけなのに、ぼくらが暮らしているこの社会では、セックスをしない限り抱きしめられることは難しいんです。

ぼくらは男友達のところに行って、「ただ抱きしめてくれ」とは言えないからね。
UPWORTHY

ぼくは、天気が悪いと気持ちが落ち込みやすく、ひどい時は死にたくなる時もあるんですが、そんな時は妻にこう言うんです。

「今日は天気が悪くて気持ちが落ち込んでるんだ。死にたくなるくらいに」

そんなことを言われたら困るはずですが、妻は慣れていて、ただぎゅっと抱きしめてくれるんです。

すると、ぼくの心はスーッと落ち着いていくんです。

もしくは、平日夜の8時45分。

夕方の家事が終わり、子どもたちの歯磨きを終わらせ、寝かしつけを終わらせ、リビングに散らかるおもちゃを片付け、(やっと眠れる……。)と安堵する疲れ果てた夜。

ぼくと妻は、子どもたちのいなくなったリビングでボサボサの頭で抱きしめ合い、「今日もありがとうね。大好きだよ」と伝え合うんです。

すると、その日にあった嫌なことも、家事育児の疲れも、スーッと消えていくんです。

2年前、慣れないリモートワークに戸惑い、気持ちが落ち込んでいたとき、同年代の男性の同僚に悩みを相談したことがあるんです。

「効率化されないままリモートワークに突入して、仕事がめちゃくちゃだ。今日も紙の書類に印鑑を押すべきかどうかで、1時間も会議があったんだ。もう、うんざりだよ。気落ちが落ち込んでばかりだよ……」

彼は親身になって話を聞いてくて、ストレス解消法のアドバイスもくれました。

自分の柔らかな感情に触れ、もっとも弱い心をさらけ出し、そして、愛を伝え合うことが、どれだけ人を生きやすくさせるのか。

セックスを伴わない親密性が、こんなにも価値あるものだということ。

ぼくらは、もっとその事実に目を向けた方がいいんじゃないのかなと思うんです。

でも、それが難しいこともわかるんです。

自分の弱さを見せることに、ぼくはいまだに本能的な恐怖を感じますから。

多くの男性が弱さを出せない理由は、生物としての設計(弱みを見せると殺される)にも原因があるんだと思う。

だけど、そうそう簡単に殺されない現代社会なら、ちょっとぐらい弱みを見せてもいいと思うんです。

「こんなことがあって、辛かったんだよね」

男性が素直にそう言えるようになり、聞き手は抱きしめるとは言わずとも、そっと肩に手を置き、話を聞いてあげる。

そんなことが気軽にできる社会になったらいいなと、ぼくも心から思います。

たったそれだけのことで、多くの問題が解決する気がするんです。

よかったら、あなたも心の中に眠らせてしまっている弱さや繊細さをさらけ出しませんか?

noteで記事として書いてもらえれば、ぼくが必ず読ませていただきます。

記事公開時に「 #ギブミーハグ 」というハッシュタグをつけてください。ぼくもこの記事につけます。

本当は辛かったこと、ずっと我慢していること、誰にも言えなかったことをぜひ記事としてあなたの言葉で書いてみてください。

書き出すだけでも、辛さはやわらぐはずです。ぼくもそうでした。

プライベートな話が多いだろうから、別のアカウントをもう一個作ってもいいと思います。

あなたを物理的に抱きしめることはできないけれど、あなたの記事を通して、あなたの心に触れ、心のなかであなたを抱きしめ、こう思うことはできます。

「大変だったんだね。ぼくが全部聞く。なんでも言ってくれ」

もし、noteで書きづらい場合(誰かに攻撃されるのが不安など)は、匿名で送れるぼくの質問箱に送っていただいても大丈夫です。

心の奥に眠らせているあなたの本音を、ぜひ聴かせてください。お待ちしています。






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