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飛ばないボール、支持するタイガーとマキロイ。そして自身の正念場をマキロイはどう乗り越える?


1.飛ばないボール、2028年から

”ゴルフのルールを統括するR&AとUSGA(全米ゴルフ協会)は6日、総合飛距離基準(ODS)の下でゴルフボールの適合性テストの条件を更新し、2028年1月から適用すると発表した。世界のツアーで飛躍的に向上しつつある飛距離に対し、両団体が今年3月に提案した“飛ばないボール”の採用へ具体的に踏み出した。”(GDO)

 2028年1月からプロやトップアマチュアにおける競技で、USGAとR&A(ロイヤルアンドエンシェントクラブ)の総合距離基準に適合したボールを使用しなくてはいけないという通達が出ました。
 これにより15ヤード位、ロングヒッターが放つドライバーの飛距離が出なくなるという予測が出ています。
 この基準は2030年には一般のアマチュアにも適用されます。
 また、ドライバーなどドライビングクラブなどの基準も変更が見込まれています。

 さてこの話が少し前にもPGAツアーで話されていましたが、選手によっては対応がまちまちでした。

2.タイガー、マキロイは「賛成」

”この「飛ばないボール」への規制は選手の間でも賛否両論。タイガー・ウッズ(米国)は賛成派で、「ボールは規制しなければならない。僕のゴルフ生涯でずっと飛び続けてきた。常に言っているように、2つのルールが可能で金属バットと木製バットの使用と同じだ」と発言。ローリー・マキロイ(北アイルランド)も賛成を強く表明している。(文・武川玲子=米国在住)”

”平均的なゴルファーには何ら影響はないし、ゴルフを未来も継続可能なものに戻す。さらに、飛ばないボールはプロのゲームで過去20年の間、失われてきた選手の技量を復活させることができる。反対派はゴルフゲームが二分化することを悪影響になるととらえているが、二分化は理にかなった結論。しかし、反対派は決定機関にプレッシャーを与えている”(マキロイ)。

 タイガーそしてマキロイはともに、飛ばないボールについて「賛成」しています。飛ばなくなる分、アプローチショットなどショートゲームの重要性を”復活”させたいという思いがあるのでしょう。
 さてタイガーとマキロイですが、この2人はツアー屈指の”飛ばし屋”であることはご存じでしょう。
 かつては平均飛距離300ヤードを超えたのはジョン・デーリーだけ。それがいつの間にか平均飛距離300ヤードは”ツアーの平均飛距離”になり、今シーズン平均飛距離ナンバー1はマキロイで、326.3ヤードでした。またティーショットで320ヤードを超える割合は63.28パーセント。ともにツアー最高記録です。

3.マキロイは「次世代選手」に怯えている?

 ここに来てマキロイが飛ばないボールを使用しようとするのは、次世代選手が放つドライバーショットが自分よりもよく飛ぶことによって、飛距離のアドバンテージを得られないのではとも考えられます。
 マキロイも来年30代後半を迎えます(現在34歳)。
 今からフィジカル面を鍛えても、成長を望めるかどうかは疑問です。オーバーワークになれば怪我もあり得ます(事実背中痛や腰痛がありました)。
 そうなると、今までの飛距離のアドバンテージを得られるのは疑問ですし、これから新しく出てくる選手達はマキロイよりもフィジカル面で勝ってくるでしょう。

雨後の筍のように出てくる、次世代選手達

 次世代スター候補のアベルグ(24歳)は、今シーズンの平均飛距離がラウンド数は少ないものの、317ヤードでツアー全体で6位。このオフでフィジカル面を鍛えていくものと思われますので、来シーズンに逆転することが考えられます。
 そして数年後、また有望なアマチュアがプロに入りそうです。
 ヴァンダービルト大3年の、ゴードン・サージェント(20歳)です。

 今年のマスターズ、特別招待で出場したサージェントは練習ラウンドでマキロイやケプカと回りましたが、ドライバーショットは2人よりも15ヤードほど飛んでいました。
 本人談、「ドライバーショット、普通に振ってキャリーが320ヤード。振り抜けば335ヤード平均で飛ぶ」。
 野球をやっていたこともあり、ピッチングがショットのタイミングに参考になっているようです。

 大学3年でありながらも世界アマチュアランク1位の実績から、”飛び級”で来年のPGAツアーメンバーに、とも話があります。

次世代選手のアドバンテージを”食い止めたい”

 このように次世代の選手が続々とやってきて、自分より飛距離の出る選手がどんどん出てくるようになれば、マキロイのアドバンテージがだんだん薄れてきます。今まで自分がやってきたことを、相手がしてくるのではたまったものではありません。
 そこで飛ばないボールの話題が飛び込んできて、そうなれば次世代選手の”アドバンテージ”を抑えることができ、なおかつショートゲームを強化すればまだ戦って行ける、そう踏んだのでしょう。
 しかもタイガーも飛ばないボールに賛成。
 前の意見に加えて、「規制をしなければ、8000ヤード超えのコースが必要になる」とも意見をしました。

 タイガーが同町してくれたことは、マキロイにとって好都合です。

 ただ次世代選手達が飛ばないボール(そしてクラブも)を使用しても、飛距離のアドバンテージが変わらなければ、マキロイは今まで踏んできた経験を駆使し、”別の道”で戦うことを余儀なくされることでしょう。
 メジャー優勝が2014年の全米プロ以降途絶えたマキロイ。マスターズ制覇でキャリアグランドスラムなのですが、次世代選手たちが入って来る今後は、いよいよ正念場を迎えそうです。


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