撤退戦を決断できる人の価値
景気のよいときはいろんな人が寄ってくる。
事業を拡大するとき、新規事業を始めるとき、動く資金が大きくなってきたとき。
そんな時は関係者はみんなノリノリだ。
なぜなら、そのプロジェクトに参加する関係者は、皆それによって増加したキャッシュフローの恩恵を預かることができるからだ。
コンサルティング料として、収入の〇%をフィーとしてもらいます、というのは、収入や資金が増えていく段階だからこそできることだ。
逆を考えてみよう。
やっていた事業から撤退する、事業を縮小する、資産を売却する、関係者への報酬を減らす、こういったことになると途端に先頭を切ってやろうとする人は少なくなる。
なぜなら、短期的に金にならないからだ。
お金が増えていくところに関係すれば、そこにビジネスチャンスがあるが、お金が減っていくところに関係しても、フィーをもらうための原資がない。
だから、うちみたいな中小企業には、事業を始めたり、拡大したりする提案は来るが、逆にそれを廃止したり、縮小したりする提案をしてくる人は誰もいない。
仮にそれこそが今、会社にとって必要なことであったとしてもだ。
僕が思うに、撤退戦の決断をできるのは経営者しかいないと思う。
いい顔はされない。
何かをやめる、減らす、そういったことは、それによって利益に預かっていた人からすれば、気持ちのよいものではないからだ。
それでも、必要であればそれをやるのが経営者だと思う。
だから、僕はそれをやっている。
無駄な生命保険もたくさん解約した、建物を法人化して個人のキャッシュフローを減らし会社に資金がたまる構造にした、家族の役員報酬も減らしており今後は僕が入る前の1/2以下の水準になる。
景気のよい話ではない。
でも、何回も言うが、必要であれば撤退戦の決断もできるのが経営者だ。
ジャンプするためには、一度しゃがまなければならない。
しゃがんだ先に、飛び上がるイメージが頭にあるからこれを進めている。
世の中的にも、スポットライトを浴びやすいのは、何かを始める人、拡大させる人、増やす人だ。
でも、そういった人の裏には、必ず、それの後始末をしている人がいる。
何かを辞める、縮小する、減らす、そういった決断をして死にもの狂いでバランスを取っている人がいる。
だからこそ、僕はそういった人に拍手を送りたい。
皆が目を逸らすものに、自分一人でも目を向け続けられるってことがカッコいいと思う。
はやりに流され、お祭りに集まる大衆の一人になってもしょうがない。
責任を取るっていうのはそういうことでしょう。
一国一城の主であるっていうのはそういうことでしょう、と思う。