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虹と蛇の神様 オシュマレー Oxumaré

ようやく長い長い梅雨が明けました。8月1日は「水の日」です。今日は虹の神さまで、蛇になった「オシュマレー」のことを書こうと思います。

この数年、日本は水害による被害が甚大ですが、地球温暖化に伴い、大雨や台風は今後まだ増えていくと予測されています。台風が起こり、河川の氾濫により地球が削られ、私たちの暮らしが壊されていくのを見るのは本当につらいものです。私は山と渓谷が好きなのですが、昨年の豪雨で多くの山が崩れ、すっかり姿を変えてしまいました。自然の姿に修復することは人間の力ではできません。私たちは望むように雨を降らせることも、止めることもできませんから、せめて自然界がバランスをとれるよう、少しでも協力していかなくては、と思います。自然への敬意を大切に、共生の心を持って生きていきたいものです。

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イラスト©︎クルプシ

オシュマレーは虹の神さまです。踊る時はさながら蛇のようで、蛇の神さまとも言われ、女性性と男性性の両方を持ち合わせています。オシュマレ―を守護神に持つ人は活動的で、美しく、予知できない動きをします。蛇のように裏切りを意味するとも言われています。お供物には子ヤギ、メスヤギ、じゃがいもを好みます。「アフンボボイ」と挨拶し、シンボルカラーは黄色、緑、黒で、数字の11番、火曜日の担当です。

 ヘジナウド プランヂさんのイラスト絵本、その名も「オシュマレー」の第一話を拙訳しましたので、どうぞご覧ください。お話の中に出てきますが、オシュマレーは、知恵と沼の神さまで、人間をかたちどる粘土を湖の沼底から与えた最長老の女神「ナナー」の子どもで、オムルーの弟でもあります。

マリエーニ ジ カストロの歌う「Ponto de Naná」(ポント ジ ナナー)も、「オシュマレが首飾りをくれた」という歌詞で始まります。

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「虹が雨を止めた日」

奴隷制の時代、多くのアフリカの人たちはヨルバに属していました。その人たちは人狩りにあって、ブラジルに連れてこられ奴隷として働かされました。
ヨルバとナゴーは、慣習と、伝統と、神と、オリシャーを一緒にブラジルに連れてきました。
ナゴーの古い伝統はブラジルだけでなくアフリカでも、今なお生き続け、イファーの歴史の一部となっています。
イファーの預言者、今まで起こったすべてと、これから起こることを知っている者。

 太古のアフリカの、誰よりも年老いた、一番歳をとった女性がいました。
どのくらい年老いているかというと、オシャラーが人間を創るときに、彼女が住んでいた湖の底の泥を与え、ヒトをかたち取るのを手伝ったくらい昔。
年老いているというだけでなく、彼女は美しく、高貴な女性でした。
女神、ナナーという名前です。
ふたりの息子がいて、ひとりはとても美しく、ひとりは醜かった。
醜い息子がオムルーで、美しい方をオシュマレーといいました。
オシュマレー王子は、色とりどりに染められた服を着ていて、美しさをより際立たせ、まわりに羨望のまなざしをおくられていました。
どこにいても、その高貴で豪華な洋服に、みんなみとれるものでした。
この服装の趣味は、多彩なマントの男として知られる、父親ゆずりでした。
オシュマレーについてはさまざまに語られるけれど、蛇になって現れるともいわれています。


空を飾る虹に祈りを

地が全て雨によって破壊されつくした時がありました。
雨は降り続け、大地は水で埋まり、河は川底から溢れ出しました。
植物も動物も溺れ、湿気とカビで病気が蔓延しました。
雨は恵みをもたらします。けれどずっと雨であってはならないと、オシュマレーもよく知っていました。
そこで、ナナーの若き息子は、今まで雨に親しみがあったわけでもないので、
みずからの銅の短剣を高くあげて、空に大きくアーチを切りました。
雨は傷ついて、雨を降らすのをやめました
雨が止んで水浸しがなくなり、大地は再び輝き始め、再び命がはじまりました。
そんなわけで、雨が降りすぎるときには、オシュマレーが空に銅の短剣で線をひいて、雨を止めるのです。
それが起こるときは、みんなは空に多彩な色の服を着た美しい王子をみます。
それをひとびとは、虹としてみます。
アフリカの言葉で、オシュマレーは、虹。
雨が降っていないときには、オシュマレーは、大地に暮らしています。
オシュマレーは、知恵を司る母ナナーの子として、天空を司るといわれています。
高いところにいて、みんなその美しさにみとれてしまいます。

その美しさゆえ、オシュマレーは蛇になってしまいましたが、これは、雷を司る、オヨー国の王様シャンゴーが、虹の色を気に入り、オシュマレーを永遠に捉えておきたいと考えたせいでした。
シャンゴーはオシュマレーを宮殿に呼び、若き王子オシュマレーが、王座のある部屋に入ると、兵士たちが全ての扉と窓を閉めてしまいました。
逃げ出すことができなくなったオシュマレーは、囲い込まれ、捕まり、空に昇ることを阻まれてしまいました。
オシュマレーは絶望しました。
このまま自分がつかまっていたら、一体誰が雨を止めるのか?
荒れ狂う水から、誰がひとびとを守る?
洪水、激流によって破壊され、泥と化し地滑りを起こす地、溢れる水のせいで収穫ができないこの状態を誰が止めるのか?
誰がひとびとを餓えと死から解き放つのか?
オシュマレー、虹は、オロルンに懇願しました。
至上神オロルンは、オシュマレーが囚われの身であることを聞き、哀れに思って、オシュマレーを蛇に変えてやりました。
蛇オシュマレーは、宮殿の部屋の床をはって、扉の隙間から逃げ出すことができ、
そして永遠に自由な身となりました。
そしてオシュマレーは、天空と地で暮らすようになりました。
天と地。
あいまいで、ミステリアス。
わたしたちは、床を這うきもちわるいはちゅう類を見ると、怖くなります。
そして、地平線に虹がかかれば、その美しさに魅せられます。
彼は王子で蛇
空を裂く蛇
虹の主


……

一説には前話のオシュンがオシュマレーに恋をして、嫉妬したシャンゴーがオシュマレーに戦いを挑んだというお話もあります。オシュマレーはシャンゴーの果たし状を受けて蛇と化身し、三日三晩戦うも、シャンゴーの斧に敗れ殺されてしまいます。憐れに思ったナナーはオロドゥマレに懇願して、息子のオシュマレーを虹に変えて貰ったといいます。天に暮らすオシュマレーは虹、地界に暮らすオシュマレーは蛇です。そういえば日本では蛇は金運のシンボルですが、オシュマレーも富を得るというストーリーがあります。日本の神話と比較するのも面白いですね。

【お知らせ】

お話に登場する神様がTシャツになりました。こちらからどうぞ。

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神さま曼荼羅がチャコール地に馴染みます。

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