20220430

#正欲
読むのが苦しいのにページをめくる手が止まらず、一気に読み終えた。ラストにかけて捲し立てるような会話に心臓が脈打ち、抉られていった。これだけ多様性や正しさという文脈に意を唱えているのにも関わらず、読みながら自分の中で登場人物を勝手にカテゴライズしていて、その都度思い込みを覆され、自分もおめでたい人間の1人なのだと思い知らされた。誰かにとって綺麗な言葉でまとめようとしてる時も、同時に別の人間をを傷付けている。普段の自分の行動を咎められているようで恥ずかしくなった。実体験としてインスタのストーリーなんかも、裏返して見るとそういったものをひしひしと感じる。誰かにとって心地よいことは誰かを罰している。わかっているのに見て見ぬ振りをしていたでしょう?とナイフを突きつけられているような緊迫感がずっとあった。

ただ、地球に留学しているような感覚というのは、神聖かまってちゃんのOS宇宙人を初めて聴いた時のような共感があった。世の中的にはマジョリティと呼ばれるほうにいたとしても大なり小なり社会の決めたルールや同調圧力に生きづらさを感じる人は少なくない。私があらゆる理不尽を口にした時、パートナーはいつか2人で逃げようね、と冗談めかして言う。その言葉はいつも重過ぎないように投げかけられるが、現実的な意思も孕んでいる。それは夏月と佳道の言う、いなくならないで、という言葉に共通している。2人のホテルの場面以降、事件が起きた時もそれ以前より少しだけ落ち着きが生まれた。世界にどれだけ終末感を覚えても生き抜いていくために手を取る。恋人でも友人でも家族でもなく必要な距離感でそばにいてくれるひとがいれば、人生を終わらせるという最悪な形は逃れられる。それだけが救いだった。

あとは本当に些細なところだけどイオンのバックヤードの雰囲気を知っている身としては風景が鮮明に浮かんで隣店の店員の会話に特に辟易してしまったし、紅白のけん玉の人の描写はなんとなく笑ってしまった。読み終わってから胸に残るものを吐き出したいけど、どうにもならなくて新潮社のサイトに飛んだ。西加奈子の書評も合わせて読むと言語化しづらい感情の輪郭がはっきりとしてきた。GWの初めから世界の見方が一変した感覚に陥っている。感想は推敲せずにそのまま置いとこ。

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