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この夏,MacbookProを新しくしました。以前の機種はTouch Bar搭載前のもので,キーの上部にはファンクションキーがついていました。
実はこのMacBook Pro,春にすでに買っていて,機種の移行を先延ばしにしていたのです。そして春学期の授業が終わって,やっと夏の間にメインマシンを移行することができたというわけです。なにせ,これまではUSB3.0も使っていませんでしたし,アダプタ類も変えないといけませんでしたし,授業中のスクリーン投影なども考えるとリスクが大きくて......。
新しいのも出ましたが,移行したのはひとつ古いバージョンです……。
とにかくやっとある程度移行が終わり,使い始めたというわけです。キーボードのタッチが変わって,誤入力も増えましたが,ATOKがけっこう修正してくれます。
ところが新しい機種になってから,webブラウザの動作がおかしくなってしまいました。勝手に前のページに戻ってしまうのです。そしてこの同じ現象が,何度も何度も起きました。
「ブラウザの誤動作?」「バグ?」と思いつつ,「何だろうな」と考えていたのです。
そんな時にふと,左手を見て気づきました。
自分は無意識のうちに,左手を結構キーボードの上の方に置くことが多いのです。数字の1,2,3あたりに左手の薬指が来ます。
小学生のときからキーボードを使っていて(最初はMSXマシンでした),ホームポジションをちゃんと学んでいないのですよね。ですから,左右の手がいつもキーボードの上をぶらぶらしています。
そして,左手の指のあたりにはTouch Barの「戻る」ボタンが......。
何ということでしょう……誤動作を生み出していた原因は,自分のクセでした。
時間的展望
「過去に戻る」といえば時間的展望(time perspective)という概念があります(強引な展開……)。
時間的展望とは,「ある一定の時点における個人の心理的過去および心理的未来についての見解の総体」とされる概念です。要は,現在や過去や未来をどのように見ているか(たとえば将来をポジティブに見たりネガティブに見たり,過去をポジティブに見たりネガティブに見たり)ということを問題にするということです。
青年心理学の領域では,白井利明先生や都筑学先生が時間的展望の研究で知られており,独自の時間的展望尺度もつくられています。私も論文や書籍をよく参考にしました。
最近では,Zimbardo & Boyd (1999)の論文で作成された時間的展望尺度(ZTPI; Zimbardo Time Perspective Inventory)が世界中で使われています(Putting Time in Perspective: A Valid, Reliable Individual-Differences Metric)。
ちなみにこの尺度はZimbardoの名前が入っています。院生の時ある人に,作った心理測定尺度に「自分の名前を入れたら?」と言われたことがあるのですが,ちょっと恥ずかしくて……入れることはないまま今日に至ります。
日本語版のZTPI
ZTPIは日本語版もつくられています。下の論文がそれです。
このZTPIには,5つの下位尺度が設定されています。
未来(Future)…将来の目標や見返りのため努力する態度
過去肯定(Past Positive)…過去に対する温かく感傷的な態度
過去否定(Past Negative)…過去を否定的,回避的にみる態度
現在快楽(Present-Hedonistic)…快楽的で危険を好む,向う見ずな態度
現在運命(Present-Fatalistic)…人生は運命で決まっているなど無力感を伴った態度
全体で56項目あるのですが,日本語版では因子負荷量の低い項目が外されて43項目になっています。ただし,論文には外された項目も掲載されていますので,国際比較研究をするときなどにはそれも含めておくのが良いと思います。
(自分の経験上,56項目もある尺度を日本語に翻訳して,ばっちりそのままの因子構造を再現するのは,非常に難易度が高いのです……)
時間的展望の発達
時間的展望という概念が青年心理学で重要なのは,エリクソンの発達理論にも登場するからです。エリクソンの理論では乳児期に「基本的信頼」対「不信」(自分のことを大切に扱ってくれる人が周りにいるか,敵対する人が周りにいるか)という対立概念の発達を経験する段階と考えられているのですが,それが青年期には形を変えて「時間的展望」(対時間的拡散)の発達につながるという話になっています。
エリクソンの理論ではなくても,思春期・青年期になるとそれまでの自分自身を振り返ったり,「自分は将来どうなるのだろうか」と考えたりする機会は増えていきます。この時期は,時間的展望を発達させる良い時期だと考えられます。
時間的展望の年齢差
ZTPIで測定された時間的展望の年齢差を検討した研究が数多くあります。そして,それらを集めたメタ分析の論文があります。
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