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権威主義とコロナウィルスへの脅威との関連

自分が属している集団に脅威が迫ると,強い権力に服従したり,規範を逸脱する人を攻撃しがちになったりする傾向を特徴とする人々がいます。こういった特徴をもつ人々のことを「権威主義的」なパーソナリティの持ち主と呼ぶこともあります。

新型コロナウイルス感染症の拡大は,権威主義的でナショナリズム(国家主義,民族主義)的な世の中の見方を誘発したとする研究があるそうです。世界中で左派よりも右派の政治家が当選しがちになり,反民主的な政治体制を支持する人々も増加傾向にあります。

新型コロナウイルス感染症の拡大と,権威主義的な傾向との間には,何らかの関連があるのでしょうか。

脅威

権威主義的なパーソナリティを考えるときには,「脅威」がひとつのキーワードになるようです。たとえば,権威主義的なパーソナリティは,幼少期に脅威が与えられることに対する不安から生じると考えられていました。子どもの頃,不安に対処する方法として,親の権威に従ったり,周囲の人々の行動に合わせることで対処し,それが大人になっても強いリーダーに服従したり社会的な規範に従順になったりすることへと変化していくという考え方です。

実際,権威主義者は脅威に対して敏感で,そのために世界全体を脅威あるものとして認識しやすい傾向があります。「周りは敵だらけだ」と考えがちだということですね。特に,社会的な結束に対する脅威に敏感で,社会的な逸脱や異質なものを排除しようとする動きにつながるとされています……こういう人が国のトップに立つと,なかなか厄介そうです。

パーソナリティか信念か

最近では,権威主義的なパーソナリティではなく,もっと状況に応じて変容しやすいと仮定される信念や態度のようなものとして捉えられる研究が盛んになっています。たとえば,右翼的権威主義(Right-Wing Aithoritarianism; RWA)と呼ばれる概念です。この概念は,パーソナリティというよりも,信念や態度,イデオロギーのようなものとして捉えられています。

ただ……信念や態度であるといっても,時間を空けて2回調査をして,再検査信頼性が高い場合には,時間を超えて安定した心理傾向を示しているわけで,それをパーソナリティというのかイデオロギーというのか,明確に区別がつくのだろうかと疑問に思ったりすることもあります。状況によって変容しやすいなら,再検査信頼性は低くくていいわけですし,むしろ低いほうがいいのではないでしょうか。

パンデミックと権威主義

それはさておき,COVID-19の蔓延の中で脅威を抱きやすい傾向と,権威主義的な傾向との間には関連があるのでしょうか。

この論文で関連が検討されていますので,結果を確認してみましょう(Authoritarianism and perceived threat from the novel coronavirus)。

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