感謝する人は良い行動をするようになるのか
卒業シーズンは「感謝の季節」とも言えそうです。日本中の式典で,感謝の言葉を耳にすることができるのではないでしょうか。
祝辞の中でも感謝の言葉が出てくることが当たり前になっていますし,生徒たちのスピーチ,式の中で歌う歌詞の中にもよく登場しそうです。
J-POPの歌詞でも「ありがとう」や「感謝」は定番かもしれません。「〜してくれた」という表現も入れれば,もっとありそうです。
#ThanksIchiro
偉大な選手が引退するときも,いろいろなところで感謝の言葉が出てきます。イチロー選手の引退の際にも,感謝の言葉が出てきます。
国内外で賞賛と感謝の言葉が並びます。「#ThanksIchiro」というハッシュタグも登場していました。
私もイチロー選手がアメリカに渡って最初の年の活躍をテレビで見て,驚きと誇りの気持ちを抱いたのをよく覚えています。私も小学校から中学まで野球をやっていましたので,いかに彼がそれまで「当たり前」で「無理」で「ありえない」とされてきたことを塗り替えてきたかは,よく理解しているつもりです。そして,その壁が一度壊れると,一気に「できるかもしれない」に変わるのですよね。
本当に,引退とすばらしいキャリア,おめでとうございます。そしてありがとうございます。
感謝の効果
感謝をすることには,何か良い効果があるのでしょうか。青年期を対象に4年間の縦断調査で検討した研究が,この論文(Gratitude’s role in adolescent antisocial and prosocial behavior: A 4-year longitudinal investigation)です。
この論文で注目するのは,自発的に他者や社会のためになるような行動をすることである向社会的行動(prosocial behavior)と,社会にとって害を与える行動である反社会的行動(antisocial behavior),そして人生満足度です。
調査は4時点で行われています。第1回目の調査から3ヵ月後に第2回目の調査,また3ヵ月後(第1調査の6ヵ月後)に第3回目の調査,最終回となる第4回目の調査は,初回の調査から48ヵ月後に行われました。
第1回目の調査に参加したのは566名で,6年生・7年生・8年生の同じミドルスクールに通っていた生徒たちです。そしてその後,全員が同じ高校へと進学したそうです。4回すべての調査に参加した生徒は,306名でした。
成長曲線モデル
この研究では縦断的な調査が行われています。分析では,成長曲線モデルと呼ばれるモデルが使われています。このモデルでは,時間の経過に伴う変化の全体的なトレンドと個人差を分析することができます。
たとえば,4時点の調査で感謝の得点がサンプル全体としては上昇しているとしても,その中には上昇が急激な人,あまり上昇しない人,中には下降する人もいるはずです。また,第1回目の調査時点でも,個人差は観察されます。
このような個人差を分析対象にすることで,「より時間に伴って感謝が上昇していく人ほどこのような特徴が見られる」という結論を導くことができるようになるというわけです。
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