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仲間外れに関連する性格

割引あり

古代ギリシャのアテネでは,非合法の独裁者である僭主の出現を防止するために,市民がそのおそれのある人物を投票によって国外追放にするという制度を運用していました。日本での,掟や慣習を破った人に対して制裁行為をする村八分のような制度です。

この陶片追放から,オストラシズム(ostracism)という英単語ができており,心理学でも「仲間外れ」の現象として研究されています。


オストラシズムは,他者から無視されたり排除されたりすることを指す言葉です。これを経験した人は,自分の帰属意識,自分をコントロールする感覚,自分を意味のある存在として感じること,自尊感情などの基本的な部分に脅威を感じ,辛くネガティブな感情を抱くことになります。

性格と仲間外れ

特定の性格(パーソナリティ)がオストラシズムに関連すると言うことが研究で示されています。ここには2つのことが関与していると考えられています。

◎第1に,特定のパーソナリティの持ち主が実際に他者から仲間外れになる傾向がある。
◎第2に,特定のパーソナリティの持ち主が,出来事を「仲間外れ」だと解釈しやすい。

ビッグ・ファイブ・パーソナリティとの関連では,これまでに,勤勉性,協調性,外向性の高さがオストラシズムとマイナスの関連,神経症傾向がプラスの関連を示すことが報告されており,開放性の関連は一貫しないそうです。

勤勉性の高い人は真面目で几帳面,信頼できるような人物になりやすいことから,あまり仲間外れにはならない傾向があるようです。協調性は,やさしく他者との良好な関係を営みそうですので,これもわかります。そして外向性は活発で交友関係も広いことから,これまた仲間外れにはならない傾向になるのもわかります。

神経症傾向が高い人は,不安が強く敏感で自己評価も低い傾向があります。神経症傾向が高いと,仲間関係の中でもオストラシズムが発生しやすく,また出来事をオストラシズムとして解釈しやすい傾向があるそうです。

縦断調査

できれば,新しい環境に入るところから,仲間外れが生じるのかどうかを見ていくような調査を行いたいところです。そこで,大学新入生を対象に調査を行い,入学後も追跡調査をしながら,オストラシズムについて検討した研究を見ていきましょう。こちらの論文です(Developmental trajectory of ostracism during the transition to college: The role of the five-factor model traits)。

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