親子の身長と体重はどれくらい関連するもの?

「親の身長が高いと,子どもの身長が高いのも当たり前」だと思うのが普通かもしれません。

俳優の阿部寛さんは189cmという高い身長なのですが,ご両親ともそれほど高い身長ではないのだとか。

という話を聞くと,「阿部寛さんの身長は遺伝ではないのですね」という話が出てきたりするのですが…いやいや。身長の個人差に対する遺伝の影響力は,約80%と推定されているのです。

遺伝するかしないか

遺伝の話をすると,どうしても「遺伝するか・しないか」という二者択一でとらえてしまう傾向があるようです。これは,大学で授業をしていて話を聞いたの学生たちの様子を見ていてもわかります。「結局,遺伝なのですか,どうなのですか」という話にとてもなりやすいのです。

そして,身長の遺伝率が8割くらいあるからといって,親の身長で子どもの身長が決まるという話でもありません。この話も,とても混乱しやすいので注意が必要です。

親子の身長と体重

日本の大学生を対象に,親子の身長や体重の関連を調べている論文を見つけました。ちょっと見てみましょうか(ヒトの身長・体重における親子相関)。

調査の対象は,1973年から1974年生まれの城西大学経済学部と,女子短期大学部の学生たちです。自分自身の身長と体重,父親と母親の身長と体重が調査されています。もちろん,自分自身の体重や母親の体重などを正しく報告しているとは限りません。しかしその当たりは割り引いて考えるとして,全体で632組のデーたが得られています。

結果は?

まず,身長について見てみましょう。

◎父親と息子:r = 0.338
◎父親と娘:r = 0.317
◎母親と息子:r = 0.447
◎母親と娘:r = 0.358

次に体重です。

◎父親と息子:r = 0.170
◎父親と娘:r = 0.111
◎母親と息子:r = 0.259
◎母親と娘:r = 0.211

体重に比べると,身長の方が親と子どもの相関係数が大きい傾向がありそうです。もちろん,アンケートによる報告にもとづいた数値ですので,どこまで正しいかという問題はありそうです。

そして,このデータはだいたい私と同じくらいの世代(私は1972年生まれ)を調査対象にしています。そして親子の平均身長の比較が,時代を反映しているように思います。たとえば,父親の平均身長は166.21cm,息子の平均身長は171.74cmと,平均身長が父と子で5cmほど高くなっています。これは世代差ですね。

身長の世代差

日本の身長の平均値は,1960年代に一気に伸びています。私と同じくらいの世代というのは,ちょうどその前に育った世代(1940年代生まれ)と,後に育った世代(1970年代生まれ)ですので,親と子の平均身長差が大きく開く世代差が顕著になる時期というわけです。

なお21世紀に入ってからはほとんど世代による平均身長の伸びは見られません。たとえば2001年の高校3年生男子の平均身長は170.9cmで,2014年は170.7cmです。こうなると,親子の身長差はあまり明確ではなくなっていて,私の世代のように「たいてい子どもは親の身長よりも高くなるもの」という一般的な考え方も,最近は成り立たなくなっています。


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