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バレンタインデーのリアクションを研究する

学校に通っていた頃,バレンタインデーというのはチョコレートをもらう・もらわないにかかわらず,なにかドキドキして感情が揺さぶられる一日を過ごしていました。多くの人もそうだったのではないでしょうか。いや,もらった記憶はほとんどないのですが。

単にチョコレートをプレゼントするだけではなくて,そこに「告白する」という行為がセットになって普及することで,日本ではちょっと独特なイベントになってしまっている印象があります。

バレンタインデーの由来

バレンタインデーの由来は13世紀までさかのぼることができるようですが,日本では1950年代,チョコレート会社が新宿伊勢丹に「バレンタインセール」と手書きの看板を掲げたのが最初なのだとか。ということで日本では「チョコレートを贈る」という習慣が定着しています。

海外では特にチョコレートを贈るというわけでもなく,また女性から男性へという決まりもないようです。アメリカでは,男性から女性にプレゼントや花束を贈るのがよくある光景のようです。それから,日本だと女性から男性への「告白」がセットになる場合もありますが,海外では特に告白が伴うわけでもないようです。

アメリカではバレンタインデーは「愛の日」という意味で,既に付き合っているカップルや夫婦のあいだで行われるものだということです。

自分が小学校高学年くらいの時には,すでに学校でチョコレートをもらったら3月のホワイトデーにはキャンディーを返すという日になっていました。しかし,ホワイトデーも全国飴菓子工業共同組合が1978年に始めたキャンペーンだそうで,私が1972年生まれですから小学校くらいになって急に聞くようになった,という感覚は間違っていなさそうです。

当たり前だと思うことも,何かがきっかけでたまたまそうなった,仕掛けられた,流行っただけ,といったことは少なくなさそうです。バレンタインデーだけではなく,サンタクロース,初詣で,恵方巻き,ハロウィン......たくさんありそうです。

バレンタインデーの感情

その風習の成り立ちはどうあれ,バレンタインデーというのは全国の学校に通う子どもたちにとっては感情が揺れ動かされる日でもあります。

先ほども書いたように,日本以外の国では必ずしも「告白の日」というわけではないようなのですが,日本は「女性から気になる人にチョコレートを贈って告白をしよう!」という日になってしまっているからです。

贈られる方も贈る方も,さまざまな思いが交錯して感情が揺れ動かされそうです。

もっとも,そこから派生して「義理チョコ」「友チョコ」といったように,特に告白とは関係なくてもチョコレートを配る日になりつつありますが。しかしさらにチョコレートが売れる方向へと......うまい戦略かもしれません。

ちなみにこの時期,私の大学は入試期間でキャンパスがロックアウト状態になります。学生のみなさんにとっては,大学の中でこのイベントを経験できなくて,残念なのかラッキーなのか。

バレンタインデーを研究する

アメリカでも,バレンタインデーはカップルや夫婦がプレゼントを贈りあう日ですので,それなりに楽しく,ワクワクする日ではあります。スーパーなんかに特設コーナーができてハート型のお菓子がたくさん並ぶのは日本と同じような光景ですし。

その日を利用した研究があります(Affective forecasting and the Big Five)。この研究は,バレンタインデーを利用して,事前にどういう感情を抱くかを予想して,実際にどんな感情を抱いたかについても調査しています。さらに,それらの感情にパーソナリティがどう関連するかを検討したものです。バレンタインデーの前と後に調査をしているという,あまり他には見たことがない研究になっています。

この研究の焦点は,イベントの予測と実際の経験に性格がどう関 かかわるかという点にあります。

そこで,2006年の1月中旬,251名の学生が質問紙に回答しました。質問紙の内容は,基本的な情報とパーソナリティの尺度,そしてバレンタインデーの2日後(2月16日)の感情を予想して回答する尺度というものでした。そして実際に約1月後の2月16日,そのうち226名がバレンタインデーの状況と実際の感情について回答しました。

感情については,「幸せな」「満たされた」「誇りに思う」「悲しい」「さみしい」「恥ずかしい」といった形容詞への回答で測定されています。全体的に,ポジティブな感情かネガティブな感情かという次元で得点化されます。

現実のイベント前後で調査を行って,予想と実際を両方とも測定するというところがこの研究の面白いところです。

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