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冷淡な完全主義の特徴

割引あり

完全主義(perfectionism)という概念についても,心理学のなかでは多面的な内容で構成されることが研究されてきています。総じて完全主義は,自分の行動に対して非常に批判的な評価を行いがちで,非常に高い達成の水準を設定することを特徴とします。



完璧か完全か

日本語だとどうしてもこの問題が出てきてしまうのですが,日本語の論文では「完璧主義」よりも「完全主義」ということばがよく用いられます。学校で習ったとおり,「完璧」は史記からきた故事成語です。「完全」のほうが故事成語から来る余分な意味がなくて研究をする上ではいいのかな,とも思います。

完全主義の3種類

完全主義には,自己志向的完全主義,他者志向的完全主義,社会規定的完全主義という3種類があることも知られています。

◎自己志向的完全主義:完全を目指すこと,完全であることが重要だという信念
◎他者志向的完全主義:他者が完全を目指し,完全であることが重要だという信念
◎社会規定的完全主義:他者から完全であることが期待されており,その期待に応えられないと強く批判されると考える

自己志向的完全主義も社会規定的完全主義も,自分自身の完全さを目指す方向性なのですが,自分で目標を設定し自分で罰するか,他の人から批判されると思い込むかという違いがあります。

他者志向的完全主義

他者志向的完全主義は,完全主義のひとつの形態として重要な要素なのですが,それほど研究が進んでいるわけでもなさそうな印象です。

他者志向的完全主義は,ペアのもう片方に対して完全を求める現象を上手く説明できそうです。さらにこれまでの研究では,他者志向的完全主義が自己愛的なパーソナリティや反社会的なパーソナリティ傾向に関連することも報告されているそうです。

しかし,まだ十分に他者志向的完全主義の特徴が明らかになったわけではないようです。そこで,他者志向的完全主義と複数の心理特性との関連を,自己志向的完全主義や社会規定的完全主義の影響も考慮しながら検討する研究が行われています。というわけで,こちらの論文を見てみましょう(How Other-Oriented Perfectionism Differs from Self-Oriented and Socially Prescribed Perfectionism: Further Findings)。

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