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勤勉性のダークサイド

どんな心理特性にも,完全に「よい」特性というものや,完全に「わるい」特性というものはありません。心理学者にはけっこう天邪鬼(?)なところがあって,「これはよい特性です」と主張されると「本当にそうなの?」と疑問を持ってあれこれと調べ始めるものなのです。


勤勉性

ビッグ・ファイブ・パーソナリティのモデルは,いまでは当然のものとなっていますが,そのなかでも勤勉性(誠実性;Conscientiousness)は,さまざまな社会的な結果につながるという点から「よい特性」とされます。

勤勉性は,計画を立てること,その計画を遂行すること,努力すること,自分を律すること,物事を達成することなど,広い意味を含む概念です。そして勤勉性は,学業成績,仕事上でのパフォーマンス,収入,リーダーシップ,心身の健康,そして生死など,さまざまなものに結びつくことが,これまでに報告されてきています。

近年注目される「非認知能力」のなかでも,勤勉性は中心的な位置にあります。こういった研究成果を見ると,「勤勉性を延ばすことが社会の成功に結びつく」と多くの人が考えるのも,無理はありません。

ダークサイド

では,勤勉性によくない面というのはないのでしょうか。

たとえば,勤勉性は,さまざまな業績,課題遂行能力,組織的な市民行動,反生産的な活動と曲線的な関係をもつことが報告されています。反生産的な活動というのは,努力を差し控えること,欠勤すること,他の人を攻撃すること,盗んだりズルいことをすることなどを総称する活動で,組織にとっては有害なものとされます。部分的に,勤勉性はこのような活動につながる可能性を秘めているのです。

またある研究によると,勤勉性の高さは仕事がもたらす個人的な達成感を角に求める傾向にあることから,失業後の生活満足度を低めてしまう可能性が指摘されています。

加えて,勤勉性と完全主義との関連も報告されています。勤勉性の高い人はあまりに細部にこだわりすぎる傾向をもつことがあり,さらにはややナルシスティックな傾向へとつながる可能性もあるという報告があります。

完全主義との関連

では実際に,勤勉性と完全主義との関連は,どのようなものなのでしょうか。700名以上を対象に調査を行った研究がありますので,こちらを見てみましょう(Exploring the Dark side of conscientiousness. The relationship between conscientiousness and its potential derailers: perfectionism and narcissism)。

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