妻の稼ぎと夫の健康の難しい問題
収入の多さと幸福感との関連は,昔からよくある研究のテーマです。
基本的には収入が多くなるほど幸福感は高まる傾向にあるのですが,その関連はそれほど大きいものではなく,だいたい相関係数で0.10から0.20程度なのだそうです。
また,収入が増えれば増えるほど直線的に幸福感が上昇していくのかというとそういうわけでもなく,基本的な欲求が満たされる程度の年収があると,それ以上は年収が増えても幸福感はあまり上昇しなくなるような,曲線的な関係があるそうです。でもこれは,なんとなく想像できることですよね。
時代によっても
とはいえ,この「幸福感が頭打ちになる年収」についても,いつの時代も同じというわけにはいかないようです。世の中が豊かになり,多くのものがあふれ,生活の水準が向上していくと,幸福感が頭打ちになるポイントが変わっていくということは十分に考えられます。
また,単にお金を稼ぐことだけでなく何に使うのか,どれくらいお金のことを気にかけて生活しているのか,といったことも幸福感に関連するようです。
妻の収入
家庭の中を考えると,当然ながらお金を稼ぐのは夫だけの役割ではありません。内閣府男女共同参画局の資料によると,平成に入ってからは共働き世帯のほうが妻が専業主婦という世帯をはるかに上回るようになっています。
世帯の収入と幸福感を考えるときにも,夫の収入と妻の収入に目を向ける必要があるかもしれません。
妻の収入と夫の幸福感
そこで,妻の収入に注目した研究結果を見てみましょう。この論文(Spousal Relative Income and Male Psychological Distress)です。
過去の研究を見てみると,妻の収入が多くなるからといって,夫の幸福感が高まるわけではないようです。むしろ,妻の収入が増えると夫の幸福感が低下するという関係を報告する先行研究もあるのだとか。
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