認知能力と学歴との関連は徐々に低下してきた?
教育段階(学歴)というのは,社会の中で階層をシャッフルさせるひとつの重要な要素です。たとえ貧しい家に生まれたとしても,遺伝的に知的能力が高い子に育つことは十分に考えられます。昔から「地域の神童」のような子どもたちがいたものです。
そのような子どもたちが高等教育へと進学していくことで,社会階層が逆転していきます。日本で大学ができはじめた頃などは,まさにそんなイメージです。
認知能力
今から100年以上前から開発され始めた知能検査は,もともと小学校に進学する前に,学校についていくことが難しい子どもたちをスクリーニングするための検査として開発されました。ということは,そもそも知能検査は学校の成績をうまく予測するはずです。そして,成績を予測するということは,学歴の高さ(どの学校段階まで進学するか)も予測するはずです。
社会の変化
しかし,知能検査が開発されてから,20世紀を通じて,さらに21世紀に入って,社会は大きく変化してきました。
学校制度も大きく変化していますし,入試制度の変化しています。昔は知能検査の結果がその後の人生をうまく予測したかも知れませんが,その効力も小さくなってきているかもしれません。
そこで,ノルウェーで40年間(1950-1991年)にわたって収集されたデータを分析する研究を紹介したいと思います。このサンプルは,第二次世界大戦後,ノルウェーという福祉国家が拡大し,教育が急速かつ大幅に民主化された時期を通じて収集されたものです。社会の変化は,認知能力検査の結果と学歴との関連を変化させてきたのでしょうか。
では,こちらの論文を見てみましょう(Correlation between cognitive ability and educational attainment weakens over birth cohorts)。
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