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自分を意識すること

いま自分の意識が自分自身に向いているか,自分以外に向いているかを考えてみてください。

自分の関心が自分自身にあるか,周囲にあるかという枠組みでも構いません。

自意識過剰

自意識過剰という言葉もありますよね。この記事(生きづらさの原因は自意識過剰?自然体で生きるには)にも書かれているのですが,自意識過剰とは「自分自身に関することを過剰に意識してしまう状態や,そういう状態になっている人」のことを指すと言われます。

とはいえ,一般的な言葉として言われる「自意識過剰」は,自分自身に意識が向かっている状態である自意識のなかの一部の要素のことです。

意識が向かいやすいとき

自分に意識が向かいやすい状況,というものもあります。たとえばこちらにカメラが向いている時です。「自分の姿が撮られている」と思うと,自分への意識が高まります。他にも,人前に出なければならない時とか,他の人に自分が考えていることを話さなければならない時とか,そういった時にはどうしても自分自身に意識が向きがちです。

こういった状況は日常生活の中に散りばめられているのですが,必ずしもそういった状況ではなくても,自分に意識が向かいがちな人とそうではない人がいます。とても自分に意識が向かう人と,全くそうならない人を両極にとると,多くの人はその間にスペクトラム状に並ぶのです。

自意識の個人差

過去にもそう考えた研究者がいました。そこで,自意識の高まりを測定しようと質問項目を用意して,調査を行いました。そして得られたデータを分析してみると,大きく分けて自意識には2つの種類(プラス社会的不安)があることが明らかにされました。

ひとつは,自分の内面に意識が向かう私的自意識です。自分が何を考えているのか,自分がもっている感情,自分自身の行動の意味などに意識を向け,理解しようとする自意識の側面です。

もうひとつは,自分の外面に意識が向かう公的自意識です。これは,自分がまわりの人からどのように見えているかに意識を向けます。自分の服装,髪型,振る舞い方,話し方などです。

私的自意識も公的自意識もどちらも,自分自身に意識が向かっているという点では同じといえます。しかし,自分のどこに意識が向かっているかで,ふたつに分かれるというわけです。

そして,一般的に「自意識過剰」というときの「自意識」は,たいてい公的自意識を指すのではないかと思います。他の人から見えない自分の内面よりは,他の人からどう見えるかに意識が向かうのではないでしょうか。


私的自意識の2側面

私的自意識とは自分の内面に意識を向けることです。これには,比較的良い面と良くない面とがあります。

たとえば,自分とは何者なのか,どういう考え方をするのか,物事の本質とは何なのかといった,自分自身を深く掘り下げて理解しようとする意識の向け方は,自分を理解することにつながります。このような意識は,私的自意識のどちらかというと良い面だと言えます。これを省察といいます。

もうひとつは,自分がしたこと,特にうまくいかなかったことや欠点,ついやってしまったことを思い起こして思い悩むような自分自身への意識の向け方です。これを反すうといいます。

反すうという言葉は,牛や羊が食べたものを胃から戻して咀嚼し直し,また飲み込むことで消化を助けることですよね。これと同じように,自分がしたことにとらわれて,何度も何度も繰り返し思い返してしまうような自分への意識の向け方です。このような意識を持ってしまうと,なかなか苦しそうです。

公的自意識の2側面

次は,公的自意識に目を向けてみます。いわゆる「自意識過剰」がこちらに相当するのでした。

公的自意識が強い人がどのような欲求をもちやすいのかを検討すると,2つの欲求の種類がみられることが明らかにされています。それは,「人から褒められたい」という欲求と,「人から嫌われたくない」という欲求です。

このような欲求をもつことを背景として,自分が他の人からどのように見られるのかということに意識が向かうことにつながると考えられます。

この2つの側面を,賞賛獲得欲求と拒否回避欲求と呼ぶこともあります。賞賛獲得欲求が「褒められたい」で,拒否回避欲求が「嫌われたくない」です。

これらの言葉を見てもわかると思うのですが,賞賛獲得欲求の方が能動的で,物事に対して積極的に働きかけていく行動につながりやすいように思います。それに対して拒否回避欲求は,他の人に合わせたりする受動的な行動につながりやすいのではないかと想像されます。

自意識と性格特性

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