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世の中を公正だと信じる心の非対称性

次のようなことが,どれくらいの確率で生じると思いますか?「まったく起こらないと思う」(0点)から「絶対に起こると思う」(100点)までで答えてみてください。

A. 太郎君は隣の家の庭掃除を手伝いました。一週間後,彼は町内のくじ引きで無料の映画チケットを手に入れました。

B. 二郎君はSNSで人種差別的な発言をしました。一週間後,彼は転んで足をくじいてしまいました。

C. 三郎君は宝くじで1万円を当てました。一週間前,彼は友人の悩みの相談に乗っていました。

D. 四郎君はスマホを落としてなくしてしまいました。一週間前,彼はSNSである人物の中傷を書き込んでいました。

過去・現在

回答してもらった文章は,良いことと悪いこと,過去と現在の組み合わせになっています。

A. 良いことの原因→結果
B. 悪いことの原因→結果
C. 良いことの結果→原因
D. 悪いことの結果→原因

このような並びの文章になっています。

いや,ひとつ注意してほしいのは,どれも「原因にはなっていない」という点です。隣の家を掃除したから何かが当たるとか,SNSに書き込んだから足をくじいてしまうとか,本来は何の関係もないことのはずです。

公正世界信念

それぞれの人は,それぞれにふさわしい地位や結果を手に入れるはずだ,といった信念のことを,公正世界信念と言います。

このような世界の解釈は,「良いことが起きるのは何か良いことをしたからだ」「悪い結果が起きるのは何か悪いことをしたからだ」という因果関係の推論をしやすくなることにつながります。

最初に示した4つの文章は,どれも「こうだからこうなった」という形式です。たとえ,よくよく考えてみればそこにはまったく因果関係はなさそうにもかかわらず,「こうしたからこうなったんだ」という推論を私たちはついしてしまうものです。

ありそうなことの非対称性

ただし,良いこと・悪いこと,未来・過去のどれも同じように「ありそうだ」と考えるわけでもなさそうなのです。

そういった問題に取り組んだ研究があります。この論文です(Symmetries and asymmetries in the belief in a just world)。最初に示したような項目を示しながら,その違いを細かく分析しています。

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